メープルシロップ&シュガーの歴史

森と暮らすインディアンたちと

メープルシュガーを最初に作ったのは、誰でしょう? 答えは、北米の先住民たち、つまりインディアンでした。イロコイ族の間では、メープルシュガー(カエデ糖)作りの起源として、こんな昔話が語り継がれてきました。

「昔々、3月のある朝、北アメリカインディアンの酋長が、カエデの幹に刺してあった斧を取って狩りに出かけた。その前夜はとても寒かったが、陽が昇り暖かくなると、斧の傷あとから樹液がポタポタと落ちてきた。根元にあった丸太の中に溜まった樹液を見つけた酋長の妻は、小川へ水をくみに行くかわりに、その透明な樹液で肉をゆでた。すると、いい香りがしてすばらしくおいしい料理ができあがった」

焼けた石で樹液を煮詰めるメープルシュガー作りは、森と暮らすインディアンたちの大切な仕事だったのです。

開拓民たちを助けたメープル

シュガーハウスと森やがて1600年代になると、ヨーロッパの国々からたくさんの移民が北米に渡ってきて開拓生活に入りました。初期の頃には、先住民であるインディアンたちはさまざまな暮らしの知恵をシェアしました。メープルシュガーの作り方は、瞬く間に移民たちに広まり、厳しい開拓生活の貴重なエネルギー源になったのです。当時のメープルシュガーは、茶色い色をしたカチカチの固まり。ナイフで削ってさまざまな用途に使われました。

インディアンたちから教わったように、挽き割りとうもろこしや小麦、米、ナッツ、ドライフルーツ等と混ぜて、狩りや移動時の携帯食に。(現代のナッツバーのルーツです)また、熊の脂等と混ぜて肉につけるソースにしたり、夏には水で薄めておいしい飲み物をつくったりしたようです。

今、再び、メープルシュガー

開拓時代の北米を支えたメープルの森。初期の頃には、カエデの幹に傷をつけることで樹を枯らしてしまうこともありました。しかし、人々は知恵を絞り、1800年代には樹に負担をかけないようにほんの小さな穴をあけるだけで樹液がとれる専用の道具が使われるようになりました。森との共生が始まったのです。この頃になると、カリブ海の島々から奴隷たちを使って作られた白砂糖が輸入されましたが、関税が高く、庶民のお砂糖といえばメープルシュガーでした。

メープルシロップその後、白砂糖が安く入るようになった1900年代になり、メープル農家はシュガーからシロップ作りへと転換。健康意識の高まりとともに、ヘルシーなスローフード・メープルシロップの人気は上昇していきました。

メープルシロップからさらさらのメープルシュガーを作る技術が確立されたのはそれからさらに数十年後。ナチュラルで森や環境にもやさしいメープルシュガーは、こんなに古くて新しい特別なお砂糖なのです。