ミキちゃんの淹れてくれたコーヒー、おいしかったな。
パリを出発する朝、思い出しながら1人で飲む。
スーパー・モノプリのPB製品で250g、2ユーロちょいのお安さで、そうは思えぬしっかりした飲み心地だった。きっと中2のミキちゃんが淹れてくれたからだな。
ピエール・エルメのミルフォイユで気合注入。
ストラスブール行きTGVは午後1時55分発を予約していた。
ホテルに荷物を預けて朝、ピエール・エルメまで歩く。お気に入りのミルフォイユ6.9ユーロ、クロワッサン・イスパハン1.8ユーロをホテルのロビーでかじった。
ミルフォイユは上から「解体食べ」する。ジャリッと砂糖が心地いい。よし、これでTGVに乗り込もう。
日本文化会館に寄って、冷凍庫のおやつたちを取り出した。
キャリーケースと保冷バッグに岩手がんづき15個、宮城がんづき3個、岩手の「ひょうずだんご」100個を詰める。
入るかどうか心配だったが、何とか押し込んだ。よかった。スタッフのカリンさんが手伝ってくれた。あとは神のみぞ知る、だな。
トイレに行き、丁稚ケイのおむつも替える。TGVにはおそらく、赤子をのせる台もベビーチェアもないだろう。
タクシーでパリ東駅へ。15ユーロ。
着いたのは1時間前だった。キャリーケースにバッグ2個、リュックにバギー、そして丁稚ケイを抱っこしている。さすがに重い。3メートルほど歩くのが限度だった。フーッ。立ち止まって休憩しながらホーム前まで移動する。
出発15分前ぐらいにならないと、何番線から出発するかは分からない。おまけにホームは長い。
先っちょの車両だと相当、急がないと間に合わないかも。緊張して表示板をにらむ。
ちゃんとコンポストゥール(日付スタンプ)に切符もガッチャンコと通したし、準備万端だ。
よし、何番ホームでもかかってこいーっ。
エルメのカヌレ、2ユーロを丁稚ケイと奪い合いながら自分をふるいたたせる。あ、これ、ラム酒が入っていたっけ…。
あ、12番だ。よしいけーっ。
ずるずると歩き出す。隣からスーッ、魔法の手が現れた。
「助けましょうか?」。年配女性がバギーを持ってくれた。
「私にも子どもが3人いてね、よく電車で旅行したものよ」。
「あなたの車両まで行くわ。何号車?」と言ってくれた。歩かせて申し訳ない。
「いえいえ、大丈夫よ。まだ15分もあるから行くわ。まかせなさい」。涙が出るほどうれしかったけれど、歩くペースが速くて心臓が飛び出そうになった。ゼイゼイ。
3段のステップにひるむ。次の魔法の手はビジネスマンだった。
めざす13号車にたどり着いた。足元には3段ほどの階段になっている。
どうしよう…と思うまもなく、第2の魔法の手が現れた。スーツ姿の男性がキャリーケースを手にして持ち上げてくれた。
「ここからは私が手助けします、マダム」。
バギーを背負ってくれた女性とバトンタッチするみたいに、すべて荷物を席まで運んでくれたのだった。あ、あ、ありがたい。「私にも小さい子がいるんですよ」。ウィンクしながらほほ笑んだ。
「どこまで行くの?あ、ストラスブール?じゃあ降りるときも手伝います」。
そういいながらバギーを座席の上の荷台にしまってくれた。た、た、助かったー。やっぱりフランス人はやさしい。
子連れ割引プランで乗ったら楽々。
ストラスブールまでは1等車にした。4歳以下の子連れに適用される割引運賃(FORFAIT BAMBIN)をフランス国鉄のサイトで見つけていた。
隣の席が大人料金にプラス9ユーロで確保できる。もちろん抱っこすれば3歳まで無料で乗れるのだけれど、席が確保できるのならありがたい。それでも47ユーロと割安だった。大人1人だと同じ電車で1等38ユーロだった。
こんな制度、JRにもあったらいいのにな。
丁稚ケイは乗って30分後、ひざの上で眠ってくれた。
私もホッとしてエルメのクグロフ2.4ユーロと、オレンジクリーム入りショーソン(パイ)2.7ユーロをかじる…って食べ過ぎだな。眠くなってきた。ウトウト…。
午後4時18分、ストラスブール着。
くだんのビジネスマンは最初に言った通り、私の席まで来て荷物を降ろすのを手伝ってくれた。本当にありがたい。何べんもお礼を言った。
迎えの在ストラスブール日本総領事館の車に乗る。ホテルに行く前に保冷バッグの中身が気になる。
溶けちゃっているだろうか…。
岩手がんづきは解凍されているようだったけれど、ひょうずだんごと宮城がんづきはまだ凍っていた。ラッキー、私はまだツイている。大喜びで総領事公邸の冷蔵庫とフリーザーに詰め直した。これで何とかなるだろう。
フランクフルト近郊からレイコさん合流。はじめまして。
バスで2時間かけて会いに来てくれた。うれしいな。1人ではやっぱり、無理がある。
パリの旅の友リサさんたちがいなくなってから、丁稚ケイは2度もソファーから落っこちて大泣きさせてしまった。慣れた自宅でも目が離せないけれど、ホテルでは本当に切ない。だれかいてくれるだけで助かる。
大聖堂前でタルト・フランベを。
ピエール・エルメを食べ過ぎてお腹が重い。軽めにしよう。
アルザス名物の薄焼きピッツァ、タルト・フランベをいただいた。途中のショーウインドーに目がくぎづけになった。「極度乾燥(しなさい)」。レイコさんのツボだったらしく写真を撮りまくっている。どれか買って帰るか…。