インドへの道、まずワクチン外来へ

「で、いつインド行くの?」

いつも訊かれる。いや本当に私も知りたい。

試しにGoogleで自分の名前を検索してみる。関連キーワードとして「多田千香子 インド」と出る。プーッ。

ウェブという大海原の片すみに書いていないかな。自分で探してどうする。

インドで暮らすため京都のアトリエを閉めたのは2010年秋だった。

その直後に命を授かり、「出産まで日本で」と舞い戻った。

出産した1カ月後、相方ユウさんの仕事の都合で東京に移った。

ユウさんは毎月、インド出張へ。

2月も旅立った。

お土産に「崎陽軒」の「真空パックシウマイ」と、私の新刊を段ボール箱に詰めていた。

私たちの渡印は、インド法人設立の政府認可が下りてから。

もっともお役所が相手、スムーズにはいかない。

秋には行くかな…冬には…。伸びたパンツのゴム状態な東京暮らしも1年半が過ぎた。

いよいよ春には?!

どうやら動きがあったようだった。今度こそ、ホントに本当に行くかも。

予防接種を受けることになった。

合計3回、1カ月〜半年ほど間隔を開けて注射を打つから、いまから受け始めないと間に合わない。

都立駒込病院ワクチン外来へ。

「緩和ケア科」と同じフロアにあった。

母が最期に勧められたな。ちょっと切ない。

まずは問診票を渡された。「渡航予定日」は5月と書く。予定は未定だが。

「滞在期間」との項目に「私が訊きたい」と書きそうになった。まぁ3、4年かな…。

A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風、ポリオ、腸チフスが対象だった。

案内用のPHSを2台渡されて待つ。

待合フロアに狂犬病の本が置いてあった。パラパラめくる。

「インドでは年中、狂犬病が発生しています…」。ひー。

路上に寝そべっている犬は多い。2年前に行ったきりだが変わったのかな。

「腸チフスは必要ない」とも聞いた。

先生に質問する。「地方に行って、農作業をしない限り大丈夫でしょう」。

ドキッ。「手ぬぐいを姉さんかぶりしてダージリンで茶摘み」という夢がある。ま、今回はいっか。

まずは私から4種類、3本を注射。

A型、B型は混合されたものを1本で打つ。ちょっと痛みが残るから利き腕の反対に。

「腰に手を当ててください」。ハイッ。両手でわき腹をつかむ。

「いや、左手だけでいいですよ」。苦笑いされた。そりゃそっか。

続いて狂犬病、右腕には破傷風。

いまだに針を見つめられない。顔をそむける。無事に終わった。

丁稚ケイはポリオ、破傷風は接種済み。

A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、日本脳炎、合計4本を1度に打つことになった。

せめて2本ずつにしたほうがいいのだけれど、いつも受診できるわけではない。

「ま、泣いてもらいましょう」。

先生は言った。ケイは針をじっと見つめる。打ってもらってギャー、を4回、繰り返した。

それでも身をよじらせて嫌がるわけでもない。バギーに乗せるのに比べたら楽勝だわ。

2人で3時間かかった。また1カ月後、受診に来よう。

アフター注射4本、ひと遊び。

すぐ隣にある公園は遊具がいっぱいだった。あ、先生に「静かに過ごしてください」って言われたのに。

洋菓子店「ストレル」でおやつ。

モカロールは1958年(昭和33年)開業からあるという。

しっかり渦巻きなのがなつかしい。360円。公園のベンチで腰かけて食べる。

どこか留学時代のパリを思い出す。

コーヒー代がもったいなくて、勉強と称して買ったケーキも「青空カフェ」で食べた。いまだによくやるか。

エクレアは中身が生クリームだった。280円。

さて帰ろう。そろそろ持っていくもの、処分するものを考え、そろえていこう。

冬でも「1日1アイス」。

「Café MUJI」のソフトクリーム、セブンイレブンのワッフルコーン…。

合羽橋にあるカフェ「Bridge」の焦がしバター塩キャラメルは秀逸だった。

「大盛りにして食べたい」。スタッフに言ったら笑って喜んでくれた。このアイスを食べたさに合羽橋に通いたい。アイスクリームメーカーもインドに持ち込もう。

2年半前に送ったままインドの倉庫に眠る荷物の中にあったっけ。

あったとしても使えるのか。迷ったら買いだ買いー。