インド到着3日目、病院へ

インドの新居、初の夜。あれ、蚊、いる。

ブーン…。耳元に小さな音が聞こえた。あららー。お出ましか、やっぱり。

3年前を思い出す。相方ユウさんが蚊から感染するデング熱にかかり、隔離入院の憂き目にあった。

蚊取り線香、どこかにあったはず。

2年半前の「インド引っ越し未遂」で送った荷物に詰めたはず。いくつか開けてみるが見当たらない。何せ100箱ある。仕方ない。

オーガニックの虫除けスプレーをかけて眠った。

体にもやさしいが蚊にもやさしい…。

スプレーの効き目は薄かった。1歳10カ月のケイ、両足に4カ所、背中に1カ所、刺されていた。私は1カ所、ユウさんはゼロ。

若い順から狙われた。

おまけにケイの左まぶたが赤く腫れている。「お岩さん」かー。

耳をよくさわるのも気になる。中耳炎だろうか。手をおでこに当てる。うん、熱はなさそうだ。

ご機嫌で走り回っているから、大丈夫とは思うけれど。

40℃のインドと東京との気温差は20℃近かった。おまけに10時間のフライト…。

何があるか分からない。病院へ行っておこう。

土曜16:30、総合病院へ。

ベッド300床、自前の救急車もあるという。いかにも企業経営らしい。

受付で呼ばれる。体重計にケイをのせよう。ギャー。体を弓なりにして拒んだ。仕方ない、自己申告で。100㎝、11キロと言う。

ラージ先生の診察室へ。

ノックして入る。「ハロー、カイ」。エアーマックを閉じながら、先生はケイに向かって言った。

症状を伝え、診察に入る。

「耳の中にウサギさんがいるよ、見てみよう〜」。

あやしながらケイの耳をのぞく。丁寧な診察だな。「蚊による感染症でしょう。2日様子を見て、腫れが広がったら月曜日にまたいらっしゃい」。

「デングじゃないですか?」訊いてみた。「いまはデングの季節じゃないから」。大丈夫かな。

20分ほどの診察のあと、A4サイズ1枚の紙を渡された。

詳しい診察レポートだった。「蚊に刺され、嘔吐1回…」。症状と診察結果がプリントアウトされていた。

鼻づまり用のシロップ(夜に2.5mlずつ3晩)、熱が出たら「アモキシリン」という抗生物質を1日2回3mlずつ(2週間分=30ml入り2瓶)、胃腸に効く抗生物質(1日2回、7日分)、チューブ入り塗り薬、おまけに消毒剤、だった。

加入している医療アシスタントサービスの女性が院内薬局に処方せんを出す。10分ほどで薬一式が詰まった袋を渡された。

予約していても待たされる日本よりいいぐらいだわ。てきぱきことが進み、診察はじっくり。感心した。

入り口のカフェへ。

ちょっと早いけれど食べて帰ろう。

インド式ピラフ・ビニヤニのコーナーがあった。チェーン店「ビバ・ハイデラバード」だった。さすが。病院と言えども容赦なくスパイス料理…って当たり前か。

「街一番の味」と自信満々なキャッチコピーにひかれた。マトン入り、230ルピー(460円)。

思いっきり「チン」だった…。

せめて袋から出せばいのに。まぁいっか。パラパラのコメを口にする。

スパイスがさわやかで悪くない。ケイが欲しがったのでおそるおそるやる。パクパク食べていた。柿ピーは泣くのにビリヤニは平気なんて、前世はインド人だな。

チーズ・モモもあった。

やさしい味わいのチベット餃子・モモは欠かせない。インド激辛山脈におけるビバーク的存在だから。

なぜかオレンジジュース店に「モモあります」と張り紙がしてあった。チーズ入りにしよう。5個入り55ルピー(110円)。チン、ではなく蒸したのを渡してくれた。

我が舌が「よくぞいてくださいました」と喜んでいるわ。ホッ。

私はひとかじりしただけで5個ともケイが食べてしまった。

2日たって…。

お岩ケイではなくなったが下痢がひどい。ジュースを1日中欲しがり、節操なくやっているせいか。難しいなぁ。