パリ、チョコレートの旅<3>

6:00、アンヴァリッドをジョギング。

朝もやのアンヴァリッド界わいを1時間、走る。35歳、住んでいたころもジョギングコースだった。歩く方が多かったが、観光客の多いエッフェル塔界わいより好きだった。こんなにいい場所だったっけ。改めて思う。

あのころの思いをかみしめつつ、駆け抜けよう、人生も。

7:00、パン店「ピシャール」へ。

やっぱり住んでいたころ行きつけだった。久々に行こう。

カンブロンヌ通りを上がる。あ、ちょっと新しくなっている。

ひさしに「2011年パリクロワッサン№1」「2011パリ・ミルフォイユNo.2」とあった。へえー。

ストレッチしながらシャッターが上がるのを待つ。同時に客が列を作った。

当時から人気店だったけれど、すごく盛り上がっているんだ。へー、びっくり。

切り売りのタルトが見当たらないのがちょっと残念だな。

変わってしまったのね、あなた。うれしいような、さみしいような。別れた恋人の出世を見るような気分になる・・・・って、経験はないけれど。

ミルフォイユ2.6ユーロ、クロワッサン、パン・オ・ショコラで合計4.6ユーロ。

ミルフォイユは紙1枚で器用に三角包みをしてくれた。箱に入れない昔ながらのパリ流、ちょっとホッとする。

10:00、ランジス市場へ。

パリの台所と呼ばれる巨大市場をパリ在住のフードジャーナリスト・ユミコさんに案内してもらった。3年ぶりになる。

9ユーロの入場料を払ってゲートを入る。

めあては包装材だった。あ、アイスクリームマシンのいいのがあったら買いたいな。

クロワッサンを入れる紙袋にライヨールのかたちをしたプラスチックカトラリー…市場価格で安いが、小売りしないから大量買いするはめになる。

帰るころには「なんでこんなの買ったんだろう」と存在を憎々しく思いそうな気もするが、ええい、迷ったら買いだー。

13:00、ジャンミッシェル宅へ。世界の食材マジシャン!

ランジスの街にある一戸建てにお邪魔する。今回の「隣の台所突撃シリーズ」の相手だった。ユミコさんの友人で、世界中からの食品輸入を手がける45歳だった。

スペイン・カタロニア地方の子どもたちのおやつというチョコレート・サンドを教わった。

スライスしたパンにチョコをのせ、オーブンでとろーりとかす。仕上げにオリーブ油をたらして塩をパラパラ、振りかけるだけ。友人から習ったという。

「子どもたちはポケットにしのばせて出かけるんだよ」。体温でチョコがあたたまって、いい具合にとろけるというわけか。いいな、いいな。人間レンジ。

2年前から住んでいるという家のキッチンはおもちゃ箱みたい。

イクラみたいなカプセルに包まれたオリーブ油、スプレーに入ったフルーツのムース…彼の開発した品々を試食させてもらう。まるで手品みたい。

「モロッコのゴマ油だよ」「ハハーン、日本製のが最高と思っているでしょう?もっと目を世界に向けてもいいんじゃないかな」

いいなあ、こういうキッチン。楽しいだろうなあ。ごま油をたらし、塩をまぶしたチョコサンドが気に入った。ごま油がこおばしい。チョコにこんなにあうなんて。

「これが私の仕事であり、私の情熱だから(セ・モン・メチエ、セ・マ・パッスィオン)」。

ジャンミッシェルはサラッと言った。くくー、しびれる。

ああ、いいセリフだな。共感する。

16:30、オペラ座近くのパンケーキ店「パスカード」へ。

ノルマンディーにある2つ星料理店の2号店で、昨年11月にオープンした。オーベルニュ地方のパンケーキを出す店で、さっそく大人気らしい。

ユミコさんのはからいで、キッチンにお邪魔できた。

夜の仕込みのころ、マルクがチョコのデザートを丁寧に教えてくれた。メニューは15日ごとに1品ずつ、替わるのだそうだ。

詳しくはインド帰国後、お伝えします!

20:00、「ル・コンセール・ド・キュイジーヌ」へ。

大阪からリサさん、ミキちゃん母娘が到着した。きょうから3日間、4人旅になる。

シェフは日本人で、和のテーストが隠されているフレンチだった。タダ、しびれるわー。鼻血をおさえるマネをする。

前菜はフォアグラ、茶わん蒸し仕立てに。

フォアグラが大根、みそにのっている。ああ、しびれた。

メーンはマグロのミ・キュイ(半生焼き)。

ちょっとしっかりめのユズソースが効いている。肉食人としてはありえぬ選択だけれど、インドから来ていると魚にも飢えている。

デザートは、梅酒チェリー。

梅酒のジュレをまとったチェリーに小豆、桜のアイスもかみしめる。

新たに出版社をおこすメグミさんの話を聞く。

まぶしい思いで見つめる。

そう、勝負している女性は美しい。私もそうありたい。いけいけ同年代―。盛り上がる。

しめて50ユーロ。