パリ、チョコレートの旅<6>




6:00、ジョギング4回目。

革命記念日の朝、あちこち封鎖されていた。行き止まりに阻まれながらエッフェル塔界わいを1時間、走る。きょうはどこでパン、買おうかな。どこが旅の友3人に喜んでもらえるだろうか…。

「ごめんね、パシリしてもらって」。リサさんに言われた。とんでもない、アヴェック・プレジール(喜んで)です。パンのパシリなんて望むところだわ。

8:30、「ピシャール」のクロワッサン。

日曜日も開いているのがうれしい。パリパリ、しっかりかみごたえのある食感、日本ではありえない。パリ№1を受賞した味、せいぜい楽しもう。

パンを求める列に並ぶ。観光客らしい英語を話す夫婦がルールを知らず、レジの前になって横入りして来た。「ちゃんと列があるのよ」「いや、彼女の前から待っていたからOKだ」。ちょっと議論になった。面白い。

住み始めたころペンキを買ったホームセンターのわきを通り、オーガニックのパン店「モワザン」へ。

小さなシュー皮がおいしいシュケットが買いたかった。100g、2.8ユーロ。

実力のあるパン店をハシゴできるなんて、何て幸せなんだろう。インドではありえない。

7区クレール通りからアンヴァリッドへ。

だんだん革命記念日のパレードに参加するらしい軍服姿が目立ち始めた。ヘリコプターが騒がしい。プチパレあたりで人混みにまぎれ、メグミさんが見えなくなった。

携帯で連絡がとれてホッとする。

ふー、そうだ、そうだった。お祭りみたいになるんだった。

13:00、「パスカード」へ。

店の厨房で3日前、チョコレート・レッスンさせてもらった。お礼を込めて再訪した。

フランス中部の家庭料理「パスカード」は、厚焼きクレープというか、ピザというか、お好み焼きというか…。
カリッと焼き上がったヘリがこおばしい。器みたいに中身をのせてサーブされる。

私はメーンはいろいろな種類のトマトサラダ(14ユーロ)、デザートはイチゴのポワレに赤ワインゼリーにした。11ユーロ。鮮やかな赤にみとれそう。

「女子力上がりそうなの、食べてますねぇ」。メグミさんにからかわれた。

サンジェルマン地区に転戦。チョコ採集。

チョコ店「アン・ディモンシュ・ア・パリ」で素敵な日本人スタッフがいた。丁寧な説明がうれしい。「やさしくされると、めっちゃ弱いねん」。

大阪マダムのリサさんが大人買いしていた。分かるなぁ。

私もコショウやコリアンダーが効いた瓶入り粒チョコセット(16ユーロ)、ボンボンの詰め合わせ(15個14.9ユーロ)、パタ・タルティネ(チョコソース、7.5ユーロ)、割りチョコ(ショコラ・ア・カッセ、キロあたり81ユーロ)を買う。レシピの参考にしよう。

ブルターニュ地方からパリに進出した菓子店「ラルニコル」でもレーズン入り粒チョコを買った。1キロあたり50ユーロ。

近くの「ピエール・エルメ」は大混雑だった。15区の店まで歩こう。

この店だけは毎回、欠かさず、来ているな。

初めて買ったパット・ドゥ・フリュイが大正解だった。エルメの代表作がモチーフになっていて、バラとライチ、キイチゴの香りだった。

女性ならだれでもメロメロになりそう。250g入り14.2ユーロ。

19:00、「ル・ビストロ・ドゥ・ブルトイユ」へ。

日曜日に開いている店、しかも前日でも予約がとれたから正直、あまり期待していなかったけれど、大正解だった。

伝統的なスタイルで変化球はなく直球勝負、素材はいいものばかり。量はしっかり。

「こういうのん、私たちが期待するパリですよね」。4人で言い合う。

インドではありつけないお肉を思う存分、食べておきたい。ニクニクシイのん、スィルブプレ。リブステーキ27.3ユーロ。

天井の開いたテラス席で乾杯する。午後8時、夕暮れの日差しが強い。「まぶしいからちょっと、屋根を閉めてほしい」と言うと、サービスのスタッフが指をたてていった。

「ちょっと待って」。サングラスを持ってきてくれた。これかけて食事するの…。

仕方ないので白いナプキンを姉さんかぶりする。大笑いされた。まぁパリだし、なんでもアリだわ。

デザートのルバーブのシャーベット、パイナップルのカルパッチョ仕立てもさっぱりいただけた。また来よう。旅の友ミキちゃんの頼んだクレーム・ブリュレが炎を上げる。いいなあ。

22:00、エッフェル塔がキラキラ。

あ、エッフェルに誓おう。流れ星に出会ったみたいにリサさん、ミキちゃんと手をあわせた。「またパリに来るぞー」「おー」。

23:00、花火が上がる。

音だけ聞きながら、留学時代を思い出す。一緒に見に行く友人もおらず、部屋で音だけ聞いていた。7年たっても相変わらず、背を向けている。私らしいな。