シアトルの午後4時、「フレッシュ・フラワーズ(FRESH FLOURS)」へ。
店じまい前だった。窓際には赤ちゃん連れのママ2人がいた。私とアミさんの「ダブル子連れオーカミ」も席に座った。どれにしよう。
赤い実の宝石箱に誘われて。
クロワッサンなどデニッシュ類は朝に限る。パリパリの食感はどんな名店だって長持ちしない。
「夕方のクロワッサンは食べるな」を家訓にしたいほどなのに、この日は手を出した。赤い実が詰まっているダイヤ型デニッシュが宝石箱みたいに輝いていたから。
読みは当たった。
わっ、サクサク、ザクザクだ。かけらが紙のようにハラハラ落ちる。拾い上げて口に入れた。コーヒーにもハッとした。会話を止めるおいしさだった。
営むのはショートブレッドを習った建築家ヴィンスの妻エリカさんの友人エツコさん、ケイジさんだった。在米20年、東海岸から移り住んだ。
シアトルにしたのは「海が近くて街の大きさがちょうどいい」。最初の店は2005年にオープンした。
2号店を訪ねた。3年前に開いたという。ファーマーズ・マーケットが開かれる週末が一番、にぎわうそうだ。
味のあるモスグリーンの看板に小麦が揺れる。
午前8時、デニッシュたちが勢ぞろいしていた。
ホウレンソウとフェタ・チーズ、ハムとチーズ、アズキ、「ひとくちぼれ」したベリーのせ…。おかず系も甘い系もある。どこか日本みたいだな。
フランスのパン屋だと普通のクロワッサン、チョコ、アーモンド以外はほとんど見かけない。
レジ近くになると…。
レモンパウンドケーキやブルーベリーマフィン、抹茶クッキーが並んでいる。
アメリカサイズはこれでもか、と迫られる大きさだが、ちゃんと理性を感じる「ちょいデカ」ぐらい。うれしい。
デニッシュ×焼き菓子×コーヒーの店。
エツコさんは言った。「うち、コーヒーショップとの位置づけなんですよ」。
へーえ。コーヒーだけ持ち帰るお客さんも多いのだとか。バリスタがいるし立派なマシンを備えている。
「火事になったらマシン持って逃げる」。エツコさんは笑った。
確かにベーカリーにしてはバゲットや食パンがない。お菓子屋にしてはシュークリームや生ケーキがない。
板を使って抹茶クッキーを成型していたケイジさんは言った。
「作りたいものを作り、気軽に買えるような店に」。
まずは志ありき。いいな。コーヒーの香りがするシアトルの風が、2人の思いを後押ししているんだろうな。
ぜひ東京進出を。
カフェやパン屋さんが集まる代々木上原あたりなんていかが。シアトル発、デニッシュと焼き菓子とコーヒーの店なんて、カフェ好きのハートをわしづかみにするだろう。私、通います。
おカネはないがアイデアだけは「脳内楽天」状態の私が勝手に言う。
エツコさんが笑った。「そうそう、まさに代々木上原、こないだ見に行ったんですよ〜」。
特製バナナミニローフを教わった。
「ワンボウルで作れてしまって、お店で出すのがおこがましいぐらい」。エツコさんは言った。コツは「粉の混ぜ過ぎには注意。ふくらまなくなります」。
お母さんが「子どもに」と買って行くのだとか。ほんわりしっとり、チョコレートチップが飛んでいる。
さっそく丁稚ケイもパクついた。あ、口の周りにチョコ色のヒゲが。生後9カ月にチョコレート、まだ早いような…。まあいっか。
いいアイデアをもらった。離乳食にとつぶしたバナナがいつもある。食べ切れず余ってしまうから。
チョコチップは入れたいところだけれど、もう少し大きくなってからね。
☆バナナマフィン(直径7㎝マフィン型6個)
バナナ180g(1本半〜2本)、卵1個、砂糖60g、サラダ油50g、薄力粉90g、ベーキングパウダー小さじ2分の1、くるみ70g(あれば)
1. バナナをボウルに入れる。泡立て器かフォークの背でつぶす。完全にピューレ状にしなくてもOK。
2. 卵、砂糖、サラダ油の順で加えよく混ぜる。
3. 薄力粉、ベーキングパウダーは一緒にふるって入れる。大きく混ぜる。
4. 敷き紙を敷くかバターを塗った型に生地を等分に入れる。くるみを飾る。210℃にオーブンを温め、170℃に下げて20〜25分ほど焼く。
<メモ>
・余ったバナナは半分に切ってのせて焼いても。
・くるみは刻んで混ぜても。表面にのせれば上半分は大人、下半分は赤ちゃんと分けっこOKに。
・チョコレートチップ70gを混ぜても。
★メープルシュガーで作ったら〜
砂糖の替わりに同量のメープルシュガーで置き換えます。しっかりしたコクが出て、くるみと相性よし。上に粗塩を振っても面白い。よくあいます。