オークランドの日系アーチストに習った「バターもち」★

アートスタジオの入り口で。エレン、キヨミさんたち共用の廊下の壁はギャラリーにエレンのスタジオ。1階がアトリエ、2階が居住スペース1枚の絵のようなキッチン作業テーブルにはきもの地が古いミシンも個性的にたいていのスーパーで売っている「もちこ」バタもちを切り分けるエレンついつい1つ、2つと手が…。happibabiesの素敵なよだれかけメープルバタもち。yummy!

サンフランシスコから対岸オークランドへ。

ベイエリアを走る列車BARTに乗る。街の真ん中に浮かぶメリット湖がキラキラ光っていた。湖畔の駅で陶芸家キヨミさんが迎えてくれた。

「湖が気に入ってサンフランシスコから移ったんですよ」。墨で描いたタンブラーや葉っぱの小皿…。しっくり手になじむ器をつくる。スペインでフラメンコ修業したこともあるという。すらりとしているから似合いそう。

芸術家エレンの倉庫アトリエを訪ねる。

キヨミさんの友人で日系3世という。アーティスト仲間と倉庫を改装して1988年、住まい兼アトリエにした。

古いレンガ造りの倉庫に足を踏み入れる。

パァッと白い壁が現れた。すがすがしい。24年もたっているとは思えない。ギャラリーとして絵が飾られている。奥へ進む。共同の洗濯コーナーでさえ何だかアートに見える。

住人は日系、メキシコ系、アフリカ系…。

560平方メートルの空間を5つに区切っている。和太鼓プレーヤーや画家たちが住む。アートも人も混ぜこぜなようで、どこかでまとまっている。

日系3世のエレンは布の作家だった。

祖父母は福岡・久留米出身という。おお、親近センサー、ビビビッ。私も姉一家が暮らしている。「クルメ・ガスリとガテマラの布は共通のテクニックがあるのよ」。面白い。

1階が台所とアトリエ、2階には寝室や浴室がある。きもの地が並ぶ作業テーブルから見上げる。ドールハウスみたい。

年越しパーティーには100人以上も訪れる。

アトリエの住人やその友人が料理を持ち寄る。エレンが作るのは黒豆や鶏の照り焼き、キンピラゴボウ…。

ハワイのおやつ「バターもち」も。

日系3世の友人に教わったという。もち米の粉「もちこ」を使う。アメリカのスーパーならたいてい見かける。立ち寄った食材店では454g入りが1.65ドルほどだった。安い。

バターもち、聞いたことはあるが、見るのは初めてだ。

キヨミさんがささやくように言った。「発音、バタもち、なんですよ」。エレンのレシピにも「butter(bata)mochi」とあった。

混ぜて焼くだけ。

バター、卵、砂糖、牛乳、「もちこ」をスタンド式ミキサーにどんどん入れる。あとは焼くだけだった。「簡単でしょう」。焼け上がったのも用意してくれていた。

オ、オモタッ。

大きなバットを持ち上げる。ずーっしり。名刺大の一切れを口に運ぶ。

あ、2層になっている。

キヨミさんが目を細める。「とろっとした上半分はカスタードみたいで、下はおもちで…おいしいんですよ、エレンの」。

確かに「カスタードもち」と呼びたくなる。ひび割れた焦げ目がおいしそう。集中して攻め立てる。

表面カリカリ、上「ふるふる」、下「もっちもち」。

味わい三重奏がたまらない。こりゃクセになるわ。

興奮して3切れいただいた。腹の底がズドーンと重い。ご飯3、4杯分ぐらいありそうだ。さすがもち。
エレンは言った。「ココナッツを入れることもあるけれど、ふつうのが好き」。

エレンのブランド「ハッピベイビーズ(happibabies)」。

子ども向けの法被やビブ(よだれかけ)を手作りしている。素敵な名前だな。丁稚ケイ用に分けてもらおう。明るい青地に絣みたいな柄が気に入った。

ネイティブ・アメリカン柄で、裏はガテマラの赤い手織りという。素敵。両面使えるのもいい。これ、ください。

「プレゼントするわ」。エレンは言った。ノーノー、そういうわけには。日本のオバチャン度120%の押し問答になる。顔を見合わせて笑った。英語を話していても、やっぱりルーツは同じだな。

エレンは言った。「ここに暮らす私たちは、もう家族以上」。

キヨミさんもうなずく。じんとした。興奮で二の腕がブルブルッとした。ぎゅっと我が身を押さえつける。

血のつながりや文化を超えて、人は分かりあい、ゆるやかにつながれる。いやされる。

また遊びに来たい。エレンは静かにほほ笑みながら、何も聞かずに扉を開けてくれる気がする。

happibabies

キヨミさんのブランド「koide studio」

☆バターもち(12㎝×18㎝のバット1台)

バター30g、砂糖100g、卵1個、牛乳220g、もちこ120g、ベーキングパウダー小さじ1(4g)

1. やわらかくしたバターに砂糖を入れる。泡立て器で混ぜる。

2. 卵、牛乳も混ぜる。

3. もちこにベーキングパウダーを加えて混ぜる。

4. バターを塗ったバットに流す。220℃にオーブンを温め、180℃でこんがり焦げ目がつくまで焼く。25分ほど。冷めてから召し上がれ。

<メモ>

・KODA FARMの「もちこ」は輸入食材店やネット通販で手に入ります。

・カスタードともちの2層は「もちこ」ならでは。なければ「もち粉」か白玉粉で。ただしモチモチ感が強くなりすぎる気がします。

・薄く流した方が焦げ目がついておいしいです。

★メープルシュガーで作ったら

砂糖を同量のメープルシュガーで置き換えます。メープルの香りがカスタード風の生地によくあいます。