理系女子@シリコンバレーの「究極ブラウニー」

冷蔵庫の上に愛用のレシピ本が材料はきちんと揃えてからスタートすり切りで計量するブラウニー、出来上がり!と思いきや・・・キャラメルソースをかけるキャラメル・ブラウニー、これぞアメリカライスクリスピーを入れて混ぜるマシュマロを溶かすライスクリスピー・トリートのできあがりお手製のホカホカ枕

シカゴからサンノゼへ。案内人はヨーコさん。

サンノゼのヨーコさんと再会した。初対面は5年前、京都だった。私は長屋をアトリエにしようと改装中だった。ヨーコさんはアメリカから一時帰国中、訪ねてきてくれた。

はなむけにナプキンを贈ってくれた。真っ白い布にイニシャル「C」が赤く刺しゅうされている。感激した。2人で縁側に座る。ちょうどいまと同じ新緑のころ、青空だった。異国でアパートを買った者同士、トホホ話を語りあった。

当時の彼女はシカゴ近郊に住んでいた。勤め先とともに今年、西海岸へ。私も京都からインドへの途上、流れて東京にいる。「まさかシリコンバレーで会うとは」。ヨーコさんは目をぱちぱちさせた。

2人で理系女子のアパートへ。

シリコンバレーの街の1つ、サニーベールへ向かった。アメリカ・カナダ20日の旅のトリを飾る「おやつ名人」に会いに行こう。
ダーシーは東京の英字紙記者ヨーコさんに紹介してもらった。オハイオ州の高校時代、同級生だったという。

「究極ブラウニー」っていったい…。

とっておきのレシピがあるという。自信たっぷりのメールにときめいた。姓もピッタリだった。なにせ「Baker(ベーカー)」だから。

「お菓子作りは科学よ」。

大学で生物学を学んだ彼女は言った。「私はサイエンティストだから、レシピは変えないのよ」。へえ、きっちり作りそうだな。

カップ計量はアメリカ標準だったが…。

チョコチップに粉、ピーカンナッツ…材料は並べて用意してくれていた。カップに粉を入れる。やっぱりアメリカ、量りは使わないのね。でもダーシーはちょっと違った。カップにナイフを当てて、平らにすり切った。おお、初めて見た。さすが科学だ。

まずはキャラメルづくりから。

生クリームに水とコーンシロップを混ぜて砂糖を煮溶かす。ブラウニーにキャラメルをかけるんだ。こてこて連弾、「甘さ控えめ」から100万光年ぐらい遠い。でも、それがいいんだな。

焼いている間にアメリカ版ポン菓子を。

ダーシーは「ライスクリスピー・トリーツ」も作ってくれた。寸胴鍋にバターを溶かす。マシュマロをいっぱいに入れて溶かしたら、ライスクリスピーをザザザーッ。からめて広げて冷ますだけ。サクサクしてクセになる。まさにポン菓子、なつかしい。

焼き菓子だけでなく、縫い物も。

お手製の「コーンバッグ」を出してくれた。「飼料用のトウモロコシを詰めて縫うだけよ」。電子レンジで温めてくれた。

ほのかにトウモロコシの香りがして、温かさは一晩ほどは続くらしい。へえ、ほどよい重さと温かさ、心地いい。

抱っこひもを支える腰にもよさそう。ヨーコさんの分と2個、贈ってくれた。ありがとう。ガラにもなく花柄を選ばせてもらった。

キャラメルとろーり、一粒1000メートル。

キャラメルをのせて焼いたブラウニーに、さらにキャラメルを回しかけた。さすが「究極」を名乗るだけある。まったり、エスプレッソとあわせたい。北米おやつ旅のフィナーレにふさわしかった。

20日間のアメリカ・カナダ子連れ旅。

子連れでフライト5回、楽じゃない。でも小さい同行者がいて初めて見えるものもある。インドに住めばアメリカは遠くなる。丁稚ケイが2歳になれば、チケット代だって大人と同じだけかかる。

「何より、おカネじゃ解決できないことが増えますから」。東京の友人マユミさんに言われた。確かに。がんに侵された母もいる。会いたい人とのタイミングもある。

「エンジョイ」。レジや別れ際に言われたセリフが心に残る。

オーガニック・スーパー「トレーダー・ジョーズ」のザクロ入りヨーグルトの賞味期限は「enjoy by 28 May」との表示だった。いい表現だな。人生もヨーグルトも楽しんでこそ。

トホホに効く4つのキーワード。

まずは「enjoy」そして「We’re connecting」。シアトルのエツヤさんのさりげない言葉、まっすぐ心にしみている。

シアトルの98歳ライラさんの「Just happy!」、2歳の双子の母ローリーの「いまがprecious timeなのよ」も。トホホな日々に思い出そう。

「次は5年後…じゃなくて、もう少し早く」。

サンノゼのヨーコさんが言った。確かに。また行こう。大切にしよう、私たちはつながったのだから。大好きな人たちと幸せな日々、カリフォルニアの抜けるような青空…。東京に戻っていまは密室育児の身、夢みたいだった。