スイス国境の小さな町ドモドッソラ。イタリア人なら知っている。
つづりを説明するのにローマのR、ミラノのMのように、Dにドモドッソラが登場するのだそう。
仏北東部コルマールからスイスを縦断、電車を2度、乗り換えた。
荷物30キロに赤子9キロを抱え、3時間半の旅だった。
パリからデンマークまで20時間かけて行ったこともある自称・ノリテツ、さすがに封印しよう…。
ドルチェ名人、マリカに弟子入りする。
ちょっとふくよかで大きな身振りで笑顔で。これぞイタリアのマンマ、そのまんま。うれしくなった。
息子の友人アドリアーナを通訳兼アシスタントにやってきた。アドリアーナは日本語も勉強中だった。てきぱき準備する。
大きな袋2つをのぞく。腕の長さほどのめん棒にレモンが5、6個も。
大きな昔ながらの量りやハンドミキサーまであった。ひゃー、ここまで準備してくれるなんて。
手書きレシピを見る。3品も作ってくれるんだ。
「トルタ・ディ・パーネ」「パン・デ・メ」「パスタ・フローラ」とあった。
まずは「トルタ・ディ・パーネ」、北イタリアのパン再生菓子。
ドモドソッラが属するピエモンテ地方の名物という。
ピエモンテには2年前、1週間ほど滞在したが、出会わなかったな。
マリカの母から受け継いだ地元のレシピという。
硬くなったパン300gを牛乳1リットル、砂糖200gを溶いた液に浸しておく。あらかじめ仕込んでくれていた。
タネをボウルにあけて、溶き卵3個を混ぜる。
仕上げにレモン皮をチーズおろしで削る。
いい香りがする。おいしそう。使い込んだ丸型に入れて、オーブンに入れた。
「干しブドウ、クルミは、お好みでね」。バラの柄の巾着袋から殻つきのクルミを取り出した。
パンプディングに比べ、ソースが少なめのような。焼き上がるとどうなるんだろう。
ミラノの焼き菓子「パン・ド・メ」、コーンミール入りショートブレッド。
手書きレシピを見る。トウモロコシ粉、薄力粉、砂糖、バターがどれも150gだった。分かりやすい。
昔ながらの澄ましバターを用意してくれていた。
バターを溶かして浮いた黄色いところで、かつてはカーブや地下室で保存していたという。
インドのギーみたい。わざわざ再現してくれたんだな。
「マーマレードや生クリームを添えてもおいしいわよ」。マリカが言った。ずいぶんやわらかい生地のようだけれど、どんな食感なんだろう。
パスタ・フローラはジャムタルトだった。
台に薄力粉270g、砂糖115gをドーナツ状に広げる。
バター135g、卵黄4個を混ぜてこねる。最後にレモン皮を削り入れる。ここでもたっぷり入るんだな。おいしそう。
一家に1棒、パスタ用のめん棒で伸ばす。
やわらかい生地をアルミの角型に上手に敷き込んだ。「型もめん棒も40年ぐらい使っているはずよ」。マリカは目をパチパチさせて言った。
3つの焼き菓子、ベランダで試食会。
「トルタ・ディ・パーネ」はしっかり焼き固められていた。
焦げたレーズンはご愛きょうかな。
「パスタ・フローラ」は敷き込むのが慣れないと大変かも。
「パン・デ・メ」が一番、作りやすそう。生地を型にスプーンの背でのばすだけだし、ザクザクしたトウモロコシ粉の食感も面白い。
覚えられるほど簡単な配合が気に入った。ザクザク、歌うように作れそう。
☆コーンミールのショートブレッド「パンデメ」
(直径7㎝マフィン型約15枚)
薄力粉、砂糖、バター、コーンミール(コーングリッツ)それぞれ80g、牛乳大さじ1
削ったレモン皮(あれば) 少々、グラニュー糖 適量
1.やわらかくしたバターに砂糖を入れる。泡立て器でよく混ぜる。
2.コーンミール、薄力粉をふるい入れる。ゴムべらで切り混ぜる。あればレモン皮を削り入れる。
3.しっとりしたら牛乳を散らし入れる。ひとまとめにする。
4.型にバター(分量外)を塗り打ち粉(強力粉)をはたく。生地を1センチ厚さに敷く。グラニュー糖を小さじ2分の1ずつほどふりかける。
5.200℃にオーブンを温め、170℃で10〜12分ほど焼く。ほんのり焦げ色がつけばOK。
☆メープルシュガーで作ったら
甘みのあるコーンミールとメープルシュガー、味わい相乗効果です。ちょっとカラメルのようでお勧めです。
<メモ>食べやすいマフィン型で作ってみました。