房総どまんなか、田んぼどまんなか「Mai Cafe」。
料理は妻のタエコさん、デザートや飲み物はヨータさんが担当する。
4児を育てる日々のおさんどんの積み重ねという。
昼膳は950円。お子さま膳は500円。
献立は、大人も子どももほとんど同じだった。
かぼちゃの寒天寄せ、白和え、卵豆腐、オクラとタマネギのみそ汁。
ていねいに皮がむかれたプチトマトにお漬物二種、ツルナのおひたし。
どれもこれも手作り、滋味深い。
キャラ弁やおもちゃ付きランチなんて遠い。凛とした感じ、いいな。
大人向けにはナスの豆板醤煮があった。ピリリッ、でもやっぱりやさしい。
おにぎりに、ほれぼれ。
ひと粒ずつがピカピカしている。目の前の田んぼでとれたコメを土鍋で炊くのだから、おいしくないわけがない。
相方ユウさんは、卵かけごはん。
溶き卵の器にごはんをひとくち分ダイブさせて引き揚げ、口に運んでいた。すき焼きかー。
ヨータさんの父は映像ディレクター、故・国岡宣行さん。
ユウさんにとっては「あこがれのノリおじちゃん」だった。
鳥取で育ち、東京の大学を卒業してロンドンの王立映画学校で学び、独立。インドやアジアの貧困、環境問題をテーマに数々のドキュメンタリーを撮った。
ロックバンド・ゴダイゴのカトマンズ公演の仕掛け人でもある。
日本テレビ「24時間テレビ」にかかわり、エチオピア救援と取材に取り組んだ。
アフリカの砂漠から、もっと遠い場所へ旅立ってしまった。
アフリカ・ナミブ砂漠で1991年、TBSの番組「新世界紀行」のロケ中、車が横転。
カメラマンとともに戻らぬ人となった。享年49歳。
「不死身のノリおじちゃんが死んだか」。訃報を聞いたユウさんは思ったという。
追悼文集がMai cafeの本棚にあった。
ページをめくる。幼いヨータさんたちが父と写真におさまっている。
「顔に似合わず英語がうまくて、女が好きで」ラジャスタンの満天の星空のもと「いま、力いっぱい好きな道を徹底していく」と語り、「ダンプカーのように地響きを立てながら目標に向かってばく進していった」…。
「ノリおじちゃん」、会いたかった。
デザートは、豆乳バニラアイスとシュークリーム。
ころんと揺れるグラスに生成り色のアイスがてんこ盛り。
シャリシャリ、ゆーらゆら。やさしい冷たさだった。アイスクリン、と呼びたい。
シュークリームも豆乳アイスも350円。
ヨータさんの手製シロップをお土産に。
ミント、ヴァニラ、コーヒー、ラムを連れて帰った。炭酸水で割って飲もう。すぐなくなりそうだけれど。
ミニ切り株に書かれた手書きも愛らしい。600円〜650円。
次は「心にやさしい料理教室」を開いてもらおう。
「いや、廃業寸前ですよ〜」。タエコさんは笑った。ハラハラ度は私も負けていない。
「100円チャリ」に乗る。抱っこひもに丁稚ケイ収容。月崎駅に。
帰路に着く。下り坂が気持ちいい。キキキーッ、どいてどいてー。ブレーキが効かないー。我が人生そのものみたい。
見送ってくれたタエコさんからメールがあった。
「41歳で<抱っこひも自転車>現役とは!22歳のころは私もしていましたが…」。
あっはっは。いくつになっても突っ走ろう。
愛すべき「ノリおじちゃん」のように。
☆ヴァニラ豆乳アイスクリン(3人分)
豆乳(成分無調整)150g、生クリーム50g、砂糖30g、はちみつ(または水あめ)20g、くず粉小さじ1(4g)、ヴァニラビーンズ4分の1本(あれば。サヤから出す)
くず粉は指で押して粒を細かくしておく。
1.鍋に材料すべてを入れる。お箸4本で混ぜながら中火にかける。
2.ふつふつしてから1〜2分、混ぜ続ける。とろりとしたら火からおろす。こし器でこす。バットやタッパーに流す。
3.粗熱がとれたら冷凍室へ。1時間〜1時間半ほどおく。かたまり始めたらスプーンで大きく混ぜる。
5.もう1時間おいてスプーンで混ぜる。また1時間ほど冷凍庫へ。
6.つくりたてを召し上がれ。かたくなったら少し常温におき、スプーンで混ぜてからどうぞ。
<メモ>
・Mai Cafeでは豆乳だけで作ります。アイスクリームメーカーを使わずアイスらしさを出すため、50gを生クリームに置き換えましたが、もちろん豆乳200gでつくっても。
・あれば黒みつをかけてどうぞ。
☆メープルシュガーで作ったら
・砂糖を同量のメープルシュガーにします。
・コクが出ます。さらにメープルシュガーをトッピングすれば食感のアクセントに。