「北京と台湾で習った餃子を伝授して」。
シアトル旅の友でご近所のアミさんに言われた。もちろん喜んで。
今年2月の台湾に続き、3月にはまだ寒い北京に行った。
「粉もん名人がいるんですよ」。
北京に住んでいたユーコさんの一言がきっかけだった。名人は中国語教師・楊曼玲先生だった。
餃子や花巻、パオズ…。河北省生まれの北京育ち、「ママや2人の姉が作っているのをみて」覚えた家庭の味を教わった。
台湾ではプロ2人に弟子入り。
嘉儀では「小龍包の達人」である国立高雄餐旅大学・何建彬先生の熱血指導を受けた。
台南の小龍包の名店「上海好味道小籠湯包」ではマネジャーの陳信彰さんが厨房に招き入れてくれた。
ただし帰ってから一度も作っていない。
何じゃそりゃー。我ながら何という体たらく、もったいない。アミさんの誘いに甘えて、おさらいさせてもらおう。
まずは材料。豚肉はどんなものを。
北京の楊先生によれば「餃子に使うのは豚の前足」だそう。北京のスーパーで買えるひき肉は2種類あるが、餃子には前足を挽いた安い「肥瘦」を使う。
「こんな白いのは使いませんよ」。ユーコさんが買ってきた肉を見て楊先生は言った。「里脊肉」というヒレ肉で、脂の多い部分をリクエストして、わざわざ挽いてもらったのに。きっと上品でおいしいのができると思うけれど…。
「ひき肉には背脂を混ぜるとおいしい」。
高雄の小龍包名人は自分の背中を指さして言った。なるほどね。
野菜は…。
北京の楊先生はフェンネル、セロリ、ニラ、ナス、ズッキーニ、白菜を用意した。へぇ、餃子にフェンネル。ロシアのぺリメニみたい。
セロリとズッキーニはスライサーで千切りにして塩もみする。
ニラ、フェンネル、ナス、白菜も細かく切って同様に。しばらく置いたらふきんに包む。
これでもかーっと、力を込めて水けを完全に絞る。こうして「肉のうまみを野菜に吸わせる」のだそう。
皮は…。
北京の楊先生は、「古船」ブランドの「餃子粉」をザザザーッ、ボウルにあけた。
もちろん目分量だった。「500グラムぐらいかな」「袋の半分よりは少ないですね」。日本女子3人で言い合った。冷水で作るのが楊先生のこだわりだった。
高雄の名人「餃子の皮は温水で」。
中力粉に半量ほどの冷水、砂糖少々を入れる。餃子の皮は粉と温水だけでこねた生地を使うそう。
両者を同じようにこねて比べた。冷水の生地は伸びがよく、温水だとプチッと切れる感じがする。
シュウマイや小龍包など、薄い皮にしたい場合は冷水の生地を使うのだとか。いずれもまるめて室温に5〜10分、置いてから伸ばした。
まずはめん棒で手のひら大の長方形にしたら、3つ折りにたたんだ。
そっか、パイ生地と同じだな。あんなに何度もしないが折りたたむことで食感がよくなりそう。
配合は…。
北京の名人は豚ひき肉1キロにみじん切りショウガ4かけ、刻んだ白ネギ2分の1本、砂糖大さじ半分、塩、しょうゆドボドボ、ごま油は大さじ2ぐらい。
これに水けを絞った野菜をそれぞれ混ぜる。
「日本の人はチンダンダ(清淡的=あっさり)が好きですからねぇ」。薄めの味付けにしてくれたようだった。
先生がお箸を手に力を込めた。「いいですか、同じ方向にお箸で混ぜてください」。右回りにぐるぐるぐるーっ、箸を高速回転させた。
高雄の名人は、小龍包も餃子も中身は同じ。
玉ねぎ30g、豚肉600gに醤油、ごま油、砂糖少々を手で素早く、よくこねてから水を足す。水は150g〜250gを、様子を見ながら、ゆっくりと。
え、水を入れるんだ。肉の部位と水が肉汁たっぷりの秘密か。
出来上がった肉あんは結構、やわらかい。包みやすくするために少し冷凍室へ入れた。
台南の人気店では…。
肉あんにエビを包んだ、名付けて「欲張り餃子」、プリプリで肉汁たっぷりで。おいしかった。
北京では基本は水餃子。
「余ったら翌日は焼いて食べて」。楊先生は言った。焼き餃子はリサイクル献立なのね。
お鍋でゆでたら片っ端から引き揚げ、アツアツをいただいた。
ズッキーニ、ナス、ニラ、フェンネル…。ニラ以外はあんまり主張がなくて、やっぱりニラが好きかな。
高雄の名人は焼き餃子も実演してくれた。
フライパンを熱くしてから油を回し入れ、火を止めてからギョウザを並べる。
水を少し注ぎ、ふたをして水がなくなるまで強火で焼く。様子を見て水を加え、また焼いた。ぱりぱりの焦げ目がおいしそう。
早くはやくー。ニンニクもニラも入っていないシンプルさですが、肉汁たっぷり。
夢中で3個、4個と食べた。くくー、幸せ。
なんでー、写真が消えた…。
デジカメのメモリから、なぜか台湾と北京のフォルダが消えている。
うそー。何度探しても見つからない。せっかく包み方を詳しく撮っていたのに。
携帯で撮ったのは大丈夫だったが…。まさか餃子スパイ容疑で消された…わけはないのだが。
今回の写真が餃子が1枚もないのはそのためなのだった。ごめんなさい。こんなので大丈夫かしら。
文京餃子団の成否はいかに。ちゃんと来週、再現できるだろうか…頼りないのだった。