北京&台湾で餃子修業の写真、見つかる。
消えていた…と思ったらあった。ipadにあった。
北京の楊(ヤン)曼玲先生の笑み、台湾・高雄の何(ヘ)建彬先生の華麗な手つき…。
あぁ会いたかったよ師匠たち。ホッ。まだ私はツイている。
午後1時、まずは買い出し。
スーパーサントク茗荷谷店へ。ライター・アミさんが薩摩黒豚のひき肉を特別注文してくれた。名人たちの教え通り「脂分を多めに」。
で、何キロ頼んだのかな。「2キロです」。ええ、そんなにいらないんじゃ…。
「いや、大丈夫。軽い軽い、だって4家族分でしょう」。
毎週金曜はギョーザ・ナイト、欠かさず焼くというアミさんは自信満々だった。
皮は手作りする。でも既製品も押さえとこ。
サントクはえらい。皮の品ぞろえがいい。バイヤーは餃子好きに違いない。
「風味絶佳」の売り文句は東京・荒川「高松」製、中華街のもの、モランボンの水餃子用…しめて100枚ほど買った。
セロリ、ニラ、白ネギ、ナスにショウガ、むきエビも。
肉2キロが買い物かごの奈落に沈む。あっというまに見えなくなった。しめて8000円ちょい。
まずは餃子団3人、イメージ・トレーニング。
師匠たちの手つきを見てもらおう。ipadに人差し指を滑らせる。
「まずはイメトレですね」。アミさんが目を輝かせた。
高雄の名人の手元がアップになる。細かく11ものタックが編み込まれている。
「すごい」「三つ編みみたい」「芸術的ですね」「どうなってるの〜」。
声が挙がる。私でも作れた。「上手です」と誉められた。なのにちっとも思い出せない。どうしよう。
皮づくり。中力粉は660g、水は400㏄ほど。こねまくる。
高雄の師匠の教え通り、折りパイのように3つ折りを繰り返した。
アミさんは野菜を刻み、育休中の友・アリサさんが肉をこねた。
包み方。どうせなら新技を繰り出したい。
皮に肉あんをのせて構える。うーん、どうだったっけ。手がフリーズする。
指先はクネクネ迷走し、ダメ餃子を量産した。
もう一度。ipadを見る。ええーっと、左手の親指と中指で皮を支え、右手の親指と中指で端っこを輪にするように押す。
で、その次はどうやるんだったっけ。
午後4時。アリサさん、ひとあし早く帰路に。
ブサイク餃子を持ち帰ってもらうハメになった。申し訳ない。
午後5時、アミさんも2児を迎えに。
あるじ不在なのに居座る。包むのに熱中した。なにせ肉2キロ分も練習できる。思い出せ自分。落ち着け私。
台湾・呉鳳科技大学調理室でのレッスン、どんなんだったっけ。まぶたの裏に浮かべよう。「チカラ、チカラ!」。師匠は日本語で何度も言っていたな。
あ、分かった。やっと餃子の神様が降りて来た。
ひとさし指で押し込んで小さな輪っかを作る。親指と中指で生地をつまんでまた押す。これの繰り返しだった。
もちろん名人の技には遠く及ばない。ぶっとい横綱のしめ縄風になってきた。まぁいっか、どすこい。
名付けてスイッチバック・テクニック。
帰って来たアミさんが気づいた。
「チカコさんにスイッチバックテクニックが光臨した瞬間、かたわらにいて鳥肌ものでした」。
ぷぷぷーっ、さすがライターにして4歳児のテッチャン・カナッティの母、みごとな表現だわ。実はどすこい、なんだけれど。
午後6時、言語学者アユミさんあらわる。
アユミさんの父は餃子歴30年なのだとか。千葉に住むお父さん手製のタネを持って来てくれた。アユミさんが手慣れた様子で包んでいく。「包むの、ずっと私たちがしていましたから」。餃子がはぐくむ家族愛も手つきも、う、美しい。
「お父さん餃子」はきっちりタックが4つ。一糸乱れぬ折りっぷりだった。基本に忠実なアユミさんの仕事ぶりが目に浮かぶわ。
基本もできないのにいきなり応用、ウケ狙いに走ってスイッチバックする私って…。またしても人生を餃子に映すのだった。
焼いて蒸してゆでて…試食ざんまい。
北京式はニラ、セロリ、ナスの3種類を作った。単品主義なのが本場流、飽きない味だな。
台南の有名店仕込み、エビ入り餃子が秀逸だった。
「口にいれたとたん、エビのスープがじゅわ〜と。思わず笑ってしまうほどのおいしさ」。アミさんは言った。本当に。
「お父さん餃子」は秀逸な日本の味だった。いろいろな具が混然一体となって、ふわっとして。
アミさんいわく「中国四千年の歴史に負けず劣らずすばらしい味」だった。
午後9時半、帰宅。
お昼から夜までお邪魔した。ケイは散らかしまくり、私は餃子200個を包みまくった。いつも食い逃げ同然なのに、アミさんはいつでも歓迎してくれる。居心地いいな。
ナイアガラの滝より轟音を立てて周囲に注がれる「もてなし魂」、私も見習おう。
決めては「練りと水とエビ」。
文京餃子団としては肉はもっと練ろう。巣鴨「ときわ食堂」のぬか床の向こうを張って300回…いや最低、100回ぐらい。
水はもっとたっぷり入れよう。うんとジューシーにする魔法は高雄の名人から教わった。
まるで小龍包のように汁がピュッー。蒸すのがお勧め。
師匠にも食べさせたい本場の味だわ。自賛する。おいしさ格別、たまらない。
アミさんは「三つ編み餃子」、夜な夜な自主トレするらしい。下手なイラストで図解したが、分かってもらえたかな。
「東洋のワザだけでなく西洋も、また神業の密輸お願いします!」。アミさんが行った。
もちろん、ご恩は100倍返ししたいから。
というわけで今週末からイタリアとパリをダッシュで旅します!
☆本場仕込みジューシー餃子(約35個分)
豚ひき肉200g、ニラ1束(100g)、塩小さじ3分の1、しょうゆ小さじ2、水大さじ6(90g)、むきエビ(小)20匹、餃子の皮(市販品)35枚
1. 豚ひき肉をボウルに入れる。ニラはキッチンばさみで細かく切り入れる。また包丁でみじん切りにしてボウルに入れる。
2. 塩、しょうゆを加えてよく練る。粘りが出るまで愛を込めて100回ぐらい(一心不乱で2〜3分)。水を加えて手で混ぜる。
3. 冷凍庫に20分ほど入れる。タネがしまって包みやすくなる。
4. 餃子の皮のふちを水でぬらす。タネ小さじ2(10~15g)とエビ2分の1匹ずつのせる。半分に折り、包む。
5.よく蒸気の立った蒸し器に入れる。5〜7分蒸す。お好みで酢醤油、ラー油をつけてどうぞ。
<メモ>
・ニラの替わりに同量の刻んだセロリ、白ネギでも。
・もちろん焼いたりゆでたりしてもおいしいです。
・包んだらすぐに調理するか冷凍保存を。くっついてベタベタします。
・エビが大きければ半分に切って。