コラムを1冊にまとめたい。
どんな世界遺産や有名レストランより隣の台所をのぞきたい。
旅して出会い、手作りする喜びをおすそ分けしたい。
2冊目「おやつ新報へ、ようこそ。」と3冊目「パリのおやつ旅のおやつ」は、レシピ7~8割、コラム2~3割だった。
今回はコラム「子連れdeおやつ珍道中」を中心に読んでもらいたい。
「レシピも付いている読み物」を。
実用書を多く手掛ける翔泳社の編集者・ミナコさんに提案した。おっかなびっくりだった。
いわゆる「レシピ本」にしないのは勇気がいる。「実用じゃないと売れない」よね、やっぱり…。
エッセーだけでもない、レシピだけでもない。何だか抱き合わせ商法か。中途半端になるか。
「<おやつを訪ねて、作って、書く>というタダサンの姿を伝えられたら、GOサインが出る気がします」。
ミナコさんの後押しで出版できることになった。天を仰いだ。感謝しよう。小躍りする。グッ、と力を込める。
1字ずつ、魂を込めて作り上げよう。
出版へ向けて動き出したのは9月、パリとイタリア旅行から戻ってからだった。
2作目「おやつ新報へ、ようこそ。」を手がけてくれたブックデザイナーのユーコさん、スタイリストのキョーコさんに担当してもらえることになった。
レシピは40ほど。
「子連れdeおやつ珍道中」やイベントで好評だったものから選ぶ。
「おかずっぽい」パスタやナメタケは泣く泣く外した。
おいしいのはもちろんだが、シンプルで「作り心地」がいいように…。試作100本ノックの日々が始まった。
撮影は11月初旬だった。3日間でレシピ40品に手順写真などを撮ることになった。
スタジオは…我が住まい。
2DKの部屋はおもちゃが散らばりカオスと化している。とにかくスペースを確保しなくては。
前日は必死で片づけた。やみくもに押入れやクローゼットに放り込む。扉を開けたら本やおもちゃ、服がドサーッと降って来る。
東京に雪崩注意報発令〜。
一人ではしゃぐ。「撮影ハイ」がもう始まっていた。
おやつを仕込む。使うのはほんの少しでも、何があってもいいように準備しておこう。
「鮎焼き」は40匹ほど焼いた。「がんづき」も、黒ごまが多め、少なめ…と4台焼く。
午前3時半ごろまで仕込んだ。不思議な力が乗り移る。目がさえる。火事場の何とやら…か。
午前8時、スタイリストのキョーコさんがやってきた。
快晴だった。よかった。キョーコさんがてきぱきと皿や布、小物を広げる。
へーえ、どの子がどれに乗るんだろう。ワクワクする。和室が控室になった。
デザイナーのユーコさんからの注文はこうだった。
「素朴でありながら洗練されていて、どこか懐かしいけれど新しい…」。
ひー、難しい。でもイメージ通りだな。
午前9時、撮影が始まった。
壁に「台割」と呼ばれる手書きのページ建てを張り付ける。
単調にならないよう、ページを繰ってもらえるよう全体のバランスを見る。
「こっちのゴマが少ないほうが<がんづき>らしいですよね」。
選んで撮影する。器にのる。か、かわいい。
魔法をかけられたみたい。餃子がまた、とびきりかわいい。う、親ばかすぎるか。
見慣れた「うちの子」の晴れ舞台だった。
頑張れー。見送りながら声援を送る。初日は順調に1、2章の撮影が終わった。それぞれがプロに徹して妥協せず、ひとつひとつ勝負する。すごい。
うまくいけば2日間で撮影が終われそう。集中してやって、浮いた1日をレシピ書きにあてたい。よーし、頑張ろう。
☆メープル・カード
材料(出来上がり130g)
卵黄1個、メープルシュガー20g、薄力粉 大さじ1/2(5g)、ヴァニラビーンズ(あれば) 1/3本、牛乳 100g、バター 15g
1..ボウルに卵黄、メープルシュガー、薄力粉を入れてよく混ぜる。
2.ヴァニラは粒をしごき入れる。牛乳も加えて泡立て器で混ぜる。
3.80〜90℃の湯せんにかける。絶えず泡立て器で混ぜる。とろりとしたらOK。
4.バターを加えてよく混ぜる。
5.バットに薄く広げる。底に保冷剤をあてて冷やす。