夏みかんマーマレードづくりの鬼・トシさんに弟子入り。
彼がパートナー・ナオミさんと実家の夏みかんでマーマレードを作って7年ほどになる。
勤務先のスイス・ジュネーブから一時帰国した2カ月前には心配していた。
「今年はあまり実らなくて」。
でも無事に30個ほどあったという。半分は春まで残し、冬採りバージョンを作ることにした。
冬の夏みかんの皮は薄め、苦味も少なめなのだとか。
「酸っぱくて苦味さわやか」という味ができるのは「冬物」という。
故郷・島根から届いた夏みかん、大小17個。
まずは洗って汚れを落とす。ナオミさんが言った。「あ、亀の子たわしがない」。
細かい黒ずみを落とすために必須アイテムだった。
「これじゃ、ダメかな」。トシさんが外国製の使い捨て歯ブラシを取り出した。
ブラシが大きくて歯より靴を磨きたくなる。意外にイケるかも。ゴシゴシ…。
「ああ、やっぱり買って来よう」。ナオミさんが走った。
亀の子たわし登場。
やさしくなでるだけで汚れが落ちる。「さすが日本のテクノロジー!」。3人で感心する。
実は上下を少しカットし、縦に切れ目を入れて指を差し込み、くるりとむく。
房から果肉を取り出す。「スジとタネはしっかり取って。白いフワフワは溶けるので大丈夫」。
皮と砂糖は果肉の重さの半量。
果肉が100gなら皮50g、砂糖50gが入る計算になる。
皮はレンジでチンしてやわらかくした。果肉が煮立ったら刻んだ皮と砂糖を加える。
焦げないようにヘラで混ぜ続ける。砂糖を入れる。スーッとヘラが足取り軽く回り出す。色も透き通る。
「不思議だよね〜」。ただし跳ねた煮汁が飛び散る。
噂のシロップ弾だった。
ピュンピュン鍋から飛び出している。「あちっ」「気をつけて」。
工場長トシさんと瓶詰め担当のナオミさんがシロップ弾をかわしながら言い合う。
「もう少し煮たほうがいい」「でも冷めたらとろみが出るし」「それにしても、もう少しだよ」。
とろみの見極め、難しそうだな。協議の結果、火を止める。「毎回、味を見ながら適当に…」。トシさんが照れた。
見習いの私は皮むき担当。
トシさん宅の棚を荒らした1歳の怪獣ケイが手にしたのがTVドラマ「ロングバケーション」のDVDだった。
ひー、1996年放送、なつかしい。キムタク変わらんなー。
見入ってしまって皮を捨てるゴミ袋に果肉を放り込む。「あ、間違えた」。独り言を言いながら救出する。
工場長はあきれていた。「さっきから何度も言っていますよね…」。いかん、レイオフの危機。まじめにやろう。
とろりと煮詰まったら瓶詰め。
ペットボトルを切ったじょうごを使い、熱いうちに瓶に詰める。キラキラした色がきれいだな。
15個で200〜300g入り20瓶ほど出来上がった。
皮むきは手間がかかるけれど、煮詰める時間は20分ほど。意外に早くできる。
ブランド名は「Bon papa」。
夏みかんを育てたトシさんの父にちなんでのネーミングだった。
フランスの有名ブランド「ボンヌママン」への対抗心も込めている。いいな。手書きラベルがいとおしい。
帰って復習。
いただいた生の実を1人で煮る。ゆるゆるにはならず、少々かためになってしまった。お味見しながらワイワイ作ったほうがいいな。
また「春物」製造ラインに馳せ参じよう。戦力外通告されそうだが…。
☆夏みかんマーマレード(出来上がり230g)
夏みかん 中1個(400g)、上白糖 110g
☆上白糖は果肉の重さの半分が目安。
1. 夏みかんは皮をむく。実を房から取り出す。筋とタネを除く。白い房は多少、残ってもOK。実は230gぐらい。
2. むいた皮の半量(50g)は千切りにする。2㎜×3cmぐらい。
3. 小鍋にお湯を沸騰させ、刻んだ皮をゆでる。7〜10分ほど。ゆで終わったらざるにあげて水けを切る。電子レンジ(500W)で8〜10分、加熱しても。
4. 果肉を大鍋(ほうろうなど)に入れる。中火にかけ、しゃもじで混ぜながら汁けを出す。
5. ぐつぐつと煮えたら上白糖と皮を加える。たえず混ぜながらとろみがつくまで煮る。焦がさないよう気をつける。まだゆるいかな?と思う程度でOK。冷めるとかたまる
6. 出来上がったら熱いうちに熱湯消毒した瓶にいっぱい詰める。ふたを閉めてひっくり返して冷ます。
<メモ>冷蔵庫で保管すると色がきれいに保てます。