先日、福島で働く兄貴からリンゴが送られてきました。
というか、そのことに気づきました!
久しぶりにお袋の家へ行ったときのこと。
台所の隅のほうから甘酸っぱいいい匂いがしてくるんですよ。
くんくん、くんくん。
「あらやだねこの人は、またなんか匂うわけ?」
今でこそ嗅覚や味覚が鋭いと頭がいいヤツみたいな風になっていますが、その当時、いや少なくとも僕は、とにかく犬といいますか殆ど罪人扱いでした。
「食べさせてやるのに、美味い不味いとえらそういうんじゃないよ!」
僕が大人になって食関係の仕事に就こうがそんなのまったくお構いなし。
トラウマに身を構えたその瞬間、お袋はしわしわの手をぽしゃっと叩きました。「あっそうだ!あの子からリンゴが送られてきたんだ〜。やだわ、あたしったら、ほんとすぐに忘れちゃうんだから」最近は老いる自分を責めるようになりました。セーフ!
ダンボールの中身を見ると深いワインレッドカラーの紅玉が50個も! おおおぅ、お袋っ、リンゴのホットサンド作ってくれ〜。「はぁ?はて・・・・・。あっ〜、あれねぇ。昔よく作ったねぇ」
さっそく調理に取り掛かります。70歳を越えていても、お袋は量の感覚や手順ははっきりと覚えています。
酸味、香り、色からして紅玉がベスト。
甘味が強いほうがパンによく合う。
シナモンは不可欠だがパウダーでは粉っぽくなるのでホールがいい。
すべての深みを持たせるために赤ワインを加える。
とまぁ、たかが、されどのリンゴジャム。
リンゴを皮ごとしゃくしゃくと切っていくと、その切れ目から目には見えない小さなリンゴがおらおらと暴れ出てきます。この香りこそが至高の贅沢かも。
くつくつと煮ていくと部屋はリンゴオーラで充満します。そこに引っ付く感じでシナモン、グリーンカルダモン。メープルシュガーだと甘い香りも広がります。
30分もすれば出来上がり。「ちょっと煮詰めたほうがパンで包んだときに漏れないからいいんだよ」
あとは常温で冷ますのみ。こうして愛らしいリンゴジャムの完成です。
(後編へつづく)