前回は娘さんのさや香さんが、蕎麦粉とメープルのシフォンケーキを作ってくれました。
メープルのぷちぷち食感を頬張りながら店主矢田さんがつぶやきます。
「ふむ、つぶつぶときたら、お次はふわふわか…」
そういったかと思うととっさに動きだしました。まずは小さな鍋にメープルをどさっと入れて水を加えて沸かします。厨房内にメープルの上品かつ深いコクのある香りが一気に充満。鍋の中は黄金色の液体となりシロップができあがりました。
お次はボールの中に玉子4個をいれて白身と卵黄を別けます。そして卵白を泡だて器で撹拌し、きめの細かい泡を作り、残った卵黄も撹拌し、先の卵白の半分を加えてざっくりと混ぜます。
で、残りの卵白は蕎麦粉とあわせて、最後には全部をざっくりと混ぜ合わせてしまいました。実にうまそうな綿のようなクリームの誕生です。
しかし、これをいったいどうするのか、と思っていますと、なんとフライパンの登場です。火をつけてバターを落として解けたその瞬間、綿クリームをすばやく流し込んでカタカタカタカタ・・・・・・。
フライパンを揺すりながら箸で一気にかき混ぜまて、あっという間にオムレツの完成です。そして仕上げに先ほどのシロップを上からとろ〜りとかけて出来上がり。ホットケーキならぬ、ホット蕎麦オムレツだっー!
食べてみると、メープルの上品な甘味がぶわっと広がり、その直後にしゅわ〜と音を立てながらオムレツが解けていく〜!
手打ち蕎麦屋の厨房とは思えない光景とアロマです。実は矢田さんは若い頃ホテルの洋食にいらしたことがあります。その後、縁あって蕎麦をはじめとする和食の世界に転じました。この幅の広さというか奥の深さというか意外性がたまりません。
女性スタッフがスプーンを手にしてぺろり。
「あ〜ん、シュワシュワで、とろけるぅ〜!」
それを聞いた矢田さんが、腕を組みながらこういいました。
「よし、名前を決めたで。滝や、ナイアガラフラッシュや!」
その後も、蕎麦プリンにメープルカラメルをかけた『あら…メープル?』、蕎麦とヨーグルトのアイスクリーム『メープルストリート1115』、蕎麦豆腐のメープルシロップがけ『ロッキーを望む〜カナダへ行こうか蕎麦屋の豆腐』など、奇想天外な作品と腕を組みながらの命名が連発。もう誰にも止めることができません。
「お父さん、せっかく美味しいのん作ったのにみんな黙ってしもたやん!」(さや香さん)
こうして矢田さん親子の手により、蕎麦とメープルが深い絆で結ばれていきました。
おわり
今回カワムラとしては、美味しいやら、でもスパイスが参入するきっかけを失うやら、の終始圧倒されっぱなしの複雑な心境でした。本当、またまたたくさんのことを勉強させていただきました。今後このブログにも活かしていきたいと思います。どうぞお楽しみに!
『拓朗亭』
京都府亀岡市安町小屋場77-3 0771-24-4334
11:30〜14:30 17:30〜20:00 火曜定休・不定休
☆With メープルシュガーレシピ12
『ナイアガラフラッシュ!』
卵黄 2個
卵白 2個
バター 10g
粗挽きそば粉 15g
シロップ
メープルシュガー 100g
水 60cc
1.メープルのシロップを作る。鍋に水とメープルシュガーを加えて煮るだけ。
2.メレンゲを作る。卵白を角が立つまでかき混ぜる。
3.そば粉を篩いにかけておく。
4.卵黄をよく混ぜる。メレンゲを半分だけ加えて軽く混ぜる。
4.残りのメレンゲにそば粉を入れる。
5.(3)と(4)をざっくりと混ぜる。メレンゲの泡が潰れない程度に。
6.フライパンを温めてバターを入れて、すばやくふわふわのオムレツを作る。
7.皿に盛り付け、シロップをかけたら出来上がり。