僕は気分が乗ると4〜5日間ずっとロティ(インドの家庭料理のパン)を作ります。基本は塩と全粒粉と少しの油のみ。薄くてコシがあって、小麦の香りが実に素朴です。
でも、これを食べ過ぎると、今度は反動的な欲望が湧き出ます。そう、ふっくらとしていて香ばしいナンが欲しくなるんです。
素朴なロティに対してレストランでしか味わえないリッチなパン。タンドールならではのこんがり焼き立てはたまりません!
大きなものだと40センチ以上。熱々でいい香りが漂います。基本はさくさく食感、店によってはもちもちで伸びるタイプも。
ちなみにタンドールとはインドの壺釜のことで炭が熱源です。大きさはいろいろありますが一般的には高さ1mほど、内径6〜70センチくらい。上部には鉄の蓋。下部には空気口があって、上下の開閉で火力を調節します。
そんなものだからタンドールで焼くナンは、インド人にとっても外食でしか味わえない特別なものです。
というわけで、日本人タンドール職人「SOL」の吉田さんのところへダッシュ!仕事の合間を見計らい「ちょっとこれでナン作ってぇなぁ」とメープルを手渡す。(日本人のタンドール職人はあまりにも珍しい。僕が知るのはあと東京に一軒あるのみ)
店によってレシピは少しずつ違います。今回は基本的なレシピで作ってもらいました。
インド人もそうですが吉田さんも小麦粉をいちいち篩にかけません。とにかく勢いとリズムです。
小麦粉どばっ!玉子かしゃっ!で、メープルをさらさらー!
ほかのものも全部ボウルに入れて両手で豪快に混ぜていきます。
まとまってきたら体重を乗せながらぐいぐいと練ります。子供のほっぺたのような弾力になればばっちり。一度寝かせた後、適当な大きさにまとめておきます。
ここからがナンの真骨頂。手の平でリズミカルにぱんぱんと叩くように延ばしていき、タンドールの内側にぺたっとはりつけるのです。これがはがれることなく壺釜にひっついたままなのが実に不思議!
タンドールの遠赤外線パワーにより、ナンはまたたくまに膨らんでいきます。うわぁっ〜食べる前からうまい! そして鉄の棒でひっかけて取り出し、バターを塗って出来上がり。
おいしそうな湯気に見蕩れては、持ち上げてみたり匂いをかいでみたり。少し冷めた頃に指でちぎってまずはそのままぱくり。と、これが実にリッチな味わいです。
ナンには砂糖が不可欠ですが、やはりそこを代えると大きな違いがでるようです。メープル特有のブラウンな風味が行き届いており、なおかつ品がいい。
特別に濃いめの辛口ポークカレーを用意してもらいました。こりゃもはや美女と野獣としかいいようがない。久しぶりに喜びで指先が震えました。
後日、吉田さんはいろいろ試したそうな。
「ナン生地の上にメープルシュガーを直接振りかけてから焼き上げると、ぷちぷち食感も楽しめて格別でした。うちの2歳になる息子が夢中になって食べてましたよ」
Ohっ、なんで僕がいるときにやってくれないのだ!?
カレーとタンドールの店『SOL』
大阪府箕面市瀬川5-2-17 R171沿い 090-9885-1842
月・火定休、他不定休 11:00〜15:00、17:00〜21:00 土・日・祝は休憩なしのフルオープン
☆With メープルシュガーレシピ14
『メープルナン』(約8枚)
材料
強力粉 300g
薄力粉 200g
油 50cc
バター 適量*仕上げに塗るためのもの
(A)
メープルシュガー 50g
塩 大さじ1弱
玉子 1個
ミルク 200ml
ヨーグルト 50g
ベーキングパウダー 大さじ1
重曹 小さじ1/2
水 100cc
1.ボウルに(A)をいれてよくかきまぜる。
2.強力粉と薄力粉を加えてよくまぜあわせる。
3.油を30cc加えてこねていく。
4.まとまったら両手で体重を乗せるようにしてさらにこねる。固いときは水を少し加える(子供のほっぺたくらいの柔らかさ)
5.出来上がったらラップをして30分ほど寝かせる。
6.残りの油を手の平に塗りつけ、適当な量を丸める。さらに30分寝かせる。
7.生地を薄く延ばしてタンドールの内側に貼り付ける。
8.こんがりと焼きあがったら取り出し、上からバターを塗って出来上がり。
*オーブンまたは密閉度の高い蓋つきのフライパンでも可能です。