メープルの森とシロップ作り

夏から冬のカエデの樹

太陽の光を浴びているメープルの森夏の間、大きな葉をツヤツヤさせてたっぷり太陽の光を浴びているメープルの森。そのとき、カエデの樹の内部ではでんぷんが作られ、蓄えられます。それがやがて糖分に変化するのです。(よく枝が張って、太陽の光や雨をたくさん浴びたカエデの樹ほど、糖分がたっぷり含まれた甘い樹液が採れます。)

秋になると葉は緑から黄、オレンジから赤へと美しく色を変えて、目の覚めるような風景を見せてくれます。やがて初霜がおりて、初雪…すっぽり雪に包まれたメープルの森は静かな冬眠の時を迎えます。

春の足音が聞こえたら準備

カエデの森やがて日が長くなって、雪やつららがまぶしくきらめき出すと、メープル農家の人々の仕事が始まります。シュガーブッシュ(砂糖林)と呼ばれるメープルの森に入り、馬やトラクターが通れるよう野道に落ちた枝や落木を脇に寄せ、樹液を煮詰めるための薪として集めます。

次に、樹液を採る管を樹に打ち込むタッピング作業を始めます。カエデの幹の樹液が通っている層に届くよう、直径約1㎝、深さ6.5~7.5㎝の穴を専用のドリルであける作業です。その穴に鉄の管を打ち込み、バケツを下げ、雨雪よけのフタをします。

樹にやさしく樹液を採取するために、タッピングができるのは樹齢40年以上、幹の直径が26㎝以上の樹だけに限られています。

バケツからチューブへ

穴を開けている男性 木に取り付けられたチューブ

現在では樹液の採取は、鉄の管とバケツの代わりにプラスチックの管とチューブが多く用いられています。樹液の鮮度が保たれる、険しい斜面や離れた場所にある樹々からも樹液を集めやすくなるなど、多くの利点があるからです。

樹々をつなぐ細いチューブは太いメインチューブにつながって、丘の下に設置された保管タンクに直接流れていきます。吹雪でチューブがはずれたり、リスなどがかじって傷めたりして修理が必要になることもしばしばです。

チューブが張り巡らされた森

また、タンクに集まった樹液をその場で煮詰めてメープルシロップにするためのシュガーハウス(砂糖小屋)の蒸発器やその他の道具も、まだ寒いうちにすべて準備を整えておきます。

樹液が流れ出した!

氷点下の寒さのあと、カラスの鳴き声やつららの溶ける音が聞こえて日中の気温が5℃になる最初の暖かい日が、樹液が流れ出す日です。冬眠からさめたカエデの樹が、根から雪解け水でうるおった大地の水分やミネラル分を吸収し、蓄えていた糖分とともに樹液として枝先まで送って、芽吹きの準備を始めるのです。

さあ、いよいよ年に一度、ほんの数週間だけの樹液が流れ出すうれしいシーズン、そしてメープルシロップ作りで忙しいシーズンがやってきました。

昼夜煮詰めてシロップに

メープルシロップ集められた樹液は、すぐに森の中のシュガーハウスで蒸発器にかけられ、昼夜を通して煮詰められます。樹液の鮮度の良さがシロップの質を決めるからです。

薪を燃やして樹液を煮詰める蒸発器は、いくつかの四角くて平らな鍋をつなげたような形をしています。一番手前に注がれた樹液が、流れながら徐々にグツグツと勢いよく煮詰められ、黄金色に輝きとろみを増していきます。

最後のプロセスに来る頃には、温度は104℃前後、つややかな琥珀(こはく)色をしています。小さなひしゃくを沸騰しているシロップの中に浸して持ち上げたとき、ひしゃくからのしたたりが広がってカーテン状になればメープルシロップのできあがり。

40リットルの樹液からできるメープルシロップは、わずか1リットル。昔はこれをさらに煮詰めて、メープルシュガーの固まりを作ったのです。