インドの点心、サモサ。
前編は中身の話で、カレーにもアレンジできるトマトチキンでした。
そして今回はそれを包みこむ生地のお話しです。
点心などと僕はイージーに言っちゃってますけど、サモサのそれは餃子や饅頭のようなものではありません。
一言で言うなら、揚げパンです。
原料は小麦粉と塩、水、そしてオイルという実にシンプルなもの。
言葉が淡白なので「な〜んだ、そんな簡単なものか」などと軽視しがちですが、実はこれほど感覚が物をいう微妙な世界もありません。
気温と湿度、水の温度、小麦粉の状態、塩の水分や細かさ、もっと突き止めて言うならば打ち方、自分の手の温度や体調も大きく影響してきます。
だからデータ化できないわけで、つまり本当に美味しいレシピは書くことができません。
(あ〜こんなこと言っちゃった・・・。でも本当の話)
言い換えれば、感覚が鋭い職人ほど、
まぁこんなもんだよ的な大雑把に見えてしまうというわけです。
しかしインド人って不思議ですね。
とてつもなくいい加減に見えるんだけど、生地専門の職人さんがちゃんと存在してるくらいですから。
しかも同じ生地職人でも何種類にも分かれて存在しています。
彼らの作るサモサ生地は”あらよっ!ほれほれ”なんて具合にたっぷりのオイルを練りこみます。
こうすることでクリスピーかつ丈夫、さらに食べ応えもでてくるわけです。
でもね、彼らを偉大な職人さんだと持ち上げておきながら言うのも大変恐縮なんですが、この生地こそが日本でいまひとつウケない最たる理由ではないかと、インド人コックの友人が数え切れないほどいる僕はそう思ってしまうのです。
特集をしたり(ってこんな企画どこも買いませんけど)、
料理教室で披露したり、特別にお勧めをしたらみなさんは喜びます。
でも、いざとなると注文をすることは殆どないんです。
はっきりいって、お腹がいっぱいになってしまうんです。
また、ビールの友か、前菜か、それともスナックなのか、どう扱っていいいのかがわかりづらいのも難点。
店によっては551の蓬莱の豚まんよりも食べ応えがある。
アラカルトで頼むとそんなものが平気で二つゴロンとはいっていたりするんです。
コースの中にもひとつゴロン。ほかにチキンやナンもあるのに、これ以上食べたら身も心も粉々になってしまう。
特にいまの日本は、食べて軽やか、食感柔らか、でも味は濃い、な〜んて感じですからまったく逆方向。
おまけに日本人は海外の人間には、はっきりとものを言わないところがあるから、ますます彼らは気づかずに”あらよっ!ほれほれ”と陽気に突き進む。
ま、僕がいくらぼろくそ言っても、いろいろと理由をつけては自分たちのやり方を変えることはありませんけど。
インド人の陰口はこれくらいにして、ならばカワムラはどんなものを作るのか?!
今回ご紹介するのは、いわばチャパティとナンの中間です。
このブログをずっと読まれている方はもうお気づきですね。
そう2011年3月9日にご紹介した「チャパティとナンの狭間で」に近いです。が、今回はイーストやターメリックを使いません。
基本的に材料はインド人と同じですが、小麦粉に全粒粉を混ぜるんです。
さらに、ひとつに使う生地の量が少ない。
おまけに包み方も違います。
これは、味わいと食感、軽量化、
そして誰もが簡単に包むことができる、という点をポイントに構築しています。(詳しくは図を)
でもってさらに、
サモサにせずとも、そのままでもおいしく食べられるという点です。
チャパティと同じ感覚、つまり日常食的なパンとしても楽しめます。
もひとつさらに!形や道具にこだわる必要も一切ありません。
強いて言えば、薄く延ばすための延し棒があればなんとかなります。
とにかく薄く延ばしてフライパンで焼けば出来上がるんですから。
こんなだから、料理が苦手な女性から子供さんも一緒に遊べます。
ぜひ、お試しください!
あ、中身もいろいろ工夫して楽しめます。
僕もいろいろやってますが、みなさんもご自身で考えてみてください。
ただし、その場合はあまり水分や油分が多いものは避けたいところ。
生地に染みこんですぐに破けてしまいますから。
では!
☆With メープルシュガーレシピ28
『生地 for サモサ』
(20個くらい)*トマトチキンも同量
全粒粉 200g
小麦粉 200g
油 15-20cc
塩 4-5g
湯 1カップくらい、またはそれ以上(状況によって変わります)
1.小麦粉から篩にかけてボウルにいれる。
2.そこに塩を加えてよく混ぜる。
3.湯を100ccだけ入れて、ほぐすようにして混ぜていく。
4.まんべんなくほぐれたら残りの湯を加えてさらによく混ぜ合わせる。
5.粉の状態や気候、部屋の湿気などによって加水率が変わるので感覚で調整する。
6.生地は少し固いくらいがよい。柔らかすぎると揚げたときに破ける可能性がある。一方固すぎても破裂する可能性がある。
ここが今回の最大のポイント。
7.ラップをして1時間ほど寝かせる。
8.生地が落ち着いたら60gほどをつまみ、打ち粉をしてから延ばす。できるだけ長方形にする。
9.生地の手前、左右の二ヶ所にトマトチキンを載せる。載せたら一度カレースプーンで空気を抜くようにしてぎゅっと抑える。
10.トマトチキンを載せた周辺の生地部分にハケなどを使い水をつける。
11. 生地の向こう側を折り返し中心をぎゅっと抑えて接着する。
12.包丁で半分に切り、手にとって中の空気を押し出すようにしながら、指で生地をつまんでいく。ちょっと中華料理のコック気分。
13.接着面にフォークなどを当てて漏れがないようにする。ちょっとデザインもよくなるし。
14. 油で揚げる。最初はやや弱火にして、固くなってきた頃に中火に上げる。
15. 全体がふっくらと狐色になったら出来上がり。ふーふーしながら熱いうちに。
*パンとして食べるときは(8)の段階で、丸くもっと薄く延ばし、熱したフライパンに載せて両面を1分ずつ焼く。
焼きあがれば最後に直火で炙ってぷく〜とふくらめば大成功。バターなどを塗って出来上がり。
『club-THALI傑作〜面倒くさいがめちゃうまサモサ』前編 はこちら