いち、にぃ、さぁん、肉だっぁ〜〜〜!
同じ肉でも牛肉だっぁ!七輪だっぁ。いこる炭に脂が滴り煙がもくもく、時に火柱ぼわっ〜。なんてカンテキ、いやステキなんだろう。
僕ん家は月1回”肉フェステバル”と決めています。(あはは、家族で焼肉食べに行くだけ)
行き先もお決まり。大阪北部のベッドタウン吹田市にある『元喜』というお店。大通りから一本はいったマンションの1階にあって、ひっそりと佇む隠れ家です。
今回はこちらの店主、キノピこと木下敏宏さんにスパイスwithメープルコラボをお誘いしました。彼は横浜からやってきた肉大好き男であり飲兵衛でもあります。よって甘いものにはなんの興味もありません!
「なに、メープル?あの木から採れるっていう甘いやつだよね?あんなもの焼肉とは関係ないじゃん!」
ははぁ、そういうと思った。しかーし、違うのだっぁ〜〜〜!メープルは糖分界の肉的存在。そんじょそこらのとはわけが違う骨太な糖なのだ。だから、きっと肉と親友になれるんじゃないかって。そう、タレはどうかな。きっと相性抜群やと思うで。
「なぁるほど、そう考えると面白いかも」
ところで、焼肉屋なんかでよく、タレと塩を聞かれるやん? あれはなんで?
みんな本格派は塩みたいな雰囲気になってるし。それやったらタレは不要なんとちゃう?
いったいタレってなに?
「あくまで大雑把な話だけど、あんまり味のない肉を注文するときはタレがいいかもね」
なんじゃ、その味のない肉ってのは?
「かりやすく言えば輸入肉。つまり安い肉さ。ほら国産みたいに脂肪も少ないし、仮にあっても国産肉の脂は風味がある。でも輸入肉にはそれがない」
でも僕みたいに脂要らずの赤身派はどうなる?歯応えがあって、おぅ今オレは肉を食っているのだ!って感じがするあの肉は?
「わかる、俺もそれが好きだから。なんといえばいいかな・・・・・。
脂は少なくても、よく運動していたり、いい餌を食って育てられた肉はやっぱり味があるんだよ。本当の肉の味がするっていうか。そういうのって塩だけでじゅうぶん味が出る。でも、狭い小屋に押し込められて運動もせずに育てられた肉はいくら脂が多くても肉の味がしない」
じゃあ一般人がスーパーなんかで買ってきて自分たちで焼肉やるぞってな時はタレをつけるべき?
「スーパーだってピンきりを置いてるだろうから一概に言えないけど、基本的に安い肉の場合はタレが無難じゃないかな」
ほぅ面白い話やね。ではもうひとつ質問。タレを肉に浸けるの?それとも肉にタレを付ける?
「通常はもみダレと浸けダレの2種類があって、もみダレは生肉に漬けるタレ。浸けダレは焼いてから付けるタレ。店によって、いろいろだけど、もみダレが命っていう店がけっこう多いよね。ちなみに当店は浸けダレのほうが命だけど」
ほなそれを教えてよ。
「なんてこというの!命だからダメだって。石井家仕込の秘伝なんだから」
*石井家=キノピの奥さんの旧姓。おふくろさんの『長寿苑』(茨木の名店)をはじめ、兄弟の多くがそれぞれ焼肉店を東京や関西で独立経営。
というわけで、今回のスパイスwithメープルは、もみダレに挑戦することになりました。ひとつは、三温糖を使用した通常のもの。そしてもうひとつがメープルを使ったタレ。スパイスはチリペパーパウダーを少し。『元喜』では辛味はそこそこ、香りがやや酸っぱくて香ばしい韓国産唐辛子を使用していました。
ボウルの中にそれぞれの材料を入れて、スプーンでからからとかき混ぜます。すると、いきなり面白い現象が現れました。
それは同じ重量なのに、メープルを使ったほうがとろみが強く、色が茶色になったことです。三温糖のほうは透明でさらさらとしていて、色も黒か紫に近い。醤油と何か反応をおこしているのかも。なぜ!?(誰か教えて〜)
味見するとメープルのほうが断然甘い。そして幅があって底が深い。後味も引っ張ります。ぜんぜん違います。
次に、肉にかけてもみこみます。あとは炭を用意するだけ。
焼いても見た感じはどちらも変わりありません。
でも香りはわずかにメープルのほうが香ばしく感じられます。
試食すると、通常のものはさらっとした甘みと角のある塩気を感じます。が、メープルのほうはどっしりと甘くて醤油の角がなくなっていました。もちろん肉は同じ部位、このときは2種類のカルビを使っています。
さらにやっぱり後味も違います。前者はよく言えばすっきりとしています。そして後者は旨味の余韻が続きます。でた、メープル名物”旨味のバイブレーション”
なんとまぁ同じ重量なのに、ここまで違うとは。
そしてもうひとつ実験。僕が普段使っている特製ラー油(*1)で香味付けをするとどうなるのか。これが、かなりいい感じだったのです。
「最初はあま〜いって感じだけど、飲み込んだあとからぴりぴりと辛くなる。これビールにぴったりじゃない?いいよっ!」
ほんま、はっきりと甘いのと辛いのとが入れ替わってやってくるのが面白い。まさに甘辛焼肉や。ちなみにオレ、今月(2011年10月号)のあまから手帖(大阪の老舗グルメ雑誌)に蕎麦の話を書いてるで、って関係ないか・・・・・・。
そんなヒィヒィというほどは入れてないのですが、いい感じにピリリ感が浮き立っています。舌の奥で感じるメープルの甘みの後から、脳天でちかちかと感じる辛味。
今までは合体、または変化を起こしてなんぼってのがパターンでしたが、今回は感じるタイミングと場所が違う、という新たな魅力を発見しました。
「大人の味だよ、これは!」
これだとBクラスに限らず、上等な牛肉でも相乗効果でよりおいしくなりそうです。キノピによれば、肉にタレを漬ける時間も店によって様々。生肉の上にタレをかけるだけの店、『元喜』のように一度もみこむ店、何十分も漬け込む店など。
「このメープルってさ、なんだかいろいろと化けそうな感じがするよね。きっと肉に漬ける時間によっても何かが変わると思う。それと作ったタレを保管する期間によっても変化しそうだね」
ああぁ言ってしまったね。そんな面倒なこと。あとは読者の方に任せよう!ね、どなたかお試しいただいたらぜひ結果をお知らせください!
それよりも肉を2,3切れ食べたら心に火がついちゃった。もっと食べよう!
いち、にぃ、さぁん・・・・・・・・
「あ、もう5時回ってる。暖簾出すからもう帰って!お疲れ様、楽しかったよ」
おいおい、熱いのは七輪だけかい!?
《 炭火焼肉 元喜 本店 》
吹田市五月ヶ丘北2-52-112 TEL 06-6816-1129
17:00〜23:00 (LO 22:30) 木曜日休 Pあり
☆With メープルシュガーレシピ30
『大人の焼肉のタレ』
(5-6人分)
牛肉 500g
メープルシュガー 30g
醤油(濃口) 45cc
ニンニク 少々
特製ラー油 ひとたらし(好み量)
1.ボウルに醤油、おろしたニンニク、特製ラー油を入れて混ぜる。
2.メープルシュガーを加えてよくかき混ぜる。解けにくいときは少しだけ温めると解けやすい。
3.出来上がったタレを牛肉にかけてよくもむ。
4.七輪などで肉を焼いて食べる。炭がなければガス火でも可能。
(*1)特製ラー油の作り方
チリホール 10本
ごま油 200cc
1.チリホールの種を取り除き、石臼などで粗く潰す。石臼がなければミルなどを使って粗挽きにする。ミルを使う場合はスパイス専用とすること。
2.フライパンにごま油、チリを入れて弱火でじっくりと加熱する。
3.出来上がったら常温になるまで冷まし、ガラス容器などに入れて保存する。