ストライクのカボチャのクリームスープ× SJ★

油、カシア(シナモン)、クミンシードを入れて火をつけ、小さな泡が出だしたらカボチャを加えて炒めるほくほくと柔らかになったら、木べらやゴムベラで錬るようにして潰すミルクを加えては木べらなどでよくかき混ぜるメープルシュガーを入れてよく混ぜ合わせ…
実は風邪対策レシピなんです。コムラのお墨付き
カボチャ、ですか・・・
カシア。木の皮のスパイス。見た目も通常のシナモンと比べて荒々しい。
カボチャのコクと甘み、ぶつぶつ食感が最高!
おいっ! このカットは何の意味があるの?(PHOTO 河宮)

前回に続きましてスパイスジャーナル連動企画第二弾です。
今回の主役はカボチャ!

と、話に入る前に先に謝っておきます。カボチャのあらゆる関係者の方スミマセン!
えぇ、つまり・・・・・。
これほど好き嫌いが分かれる野菜ってほかにあったでしょうか!?
おいおい、のっけから脱線か。はい、少しだけ。

僕の、延べ20年ほどの飲食現場経験から思うのは、特に男性の半分以上の人はカボチャのことを嫌っていると思います。中には、そこまで嫌うか?と思うほど否定するお客さんも多いです。

「こんな野菜、地球上から消えてもかまわない」。「カボチャが好きだって言うやつの気が知れない」。(関係者の方なんどもスミマセン!)

実は僕も、嫌うほどじゃないけど、好んで食べるものでもありませんでした。

なんかこう存在感としてしっくりこないんです。栗きんとん、または中華ポテト、あるいは甘く煮た金時豆のような。
これはご飯のおかず?それとも酒の肴!?
どう付き合ったらいいのかがまったくわからない。

とはいえ、今まで、特に『THALI』(ターリー。カワムラが三重県松阪でやっていたインド家庭料理食堂の店名)時代には数え切れないほどのカボチャ料理を作りました。理由は女性客から人気があったからです。

屋台が崩れたようなオンボロの店なのに男性よりも女性の常連客が多かったのは、決して僕が男前!?だからではなく、調味料やブイヨンがゼロ+油分控えめ、見たこともないスパイスを多用、そしてなにより野菜をふんだんに使っていたからだと思われます。

こんな付き合いようのないものを、なぜ彼女たちは夢中になって食べるのかと心の底では思いつつ、ある日、ついに自分が目覚めてしまったのです。

その鍵となったのは、クリームとスープの間の食感と、糖分、そしてシナモンでした。

カボチャ料理の大半はサブジといって、スパイスと共に炒め蒸す料理なのですが、これがある一定の加熱と時間を経ると粘土みたいに固くなってしまいます。

そしてあるときに、残り2人前あるかないか、という状態になったことがあって、ふと思いつきでミルクを加えたのです。『THALI』ではランチが勝負時でしたから、いちいち頭で考える暇なんてありません。ヒラメキとスピードの世界です。

で、さくさくとお玉で混ぜて味見をすれば、これがなんだか美味しく感じてしまった。
”なんだこの快感は”と知らぬ宇宙の扉が開いたわけです。

そのときは軽く混ぜただけでターリー(インドの定食用の皿のこと)に載せて出しましたが、お客のほうを見るとやっぱり美味しそうな感じで食べているんです。

これをきっかけに「カボチャ+ミルク」のアレンジがどんどんエスカレートしていきまして、回数を重ねるたびに、形や味が違う新たな料理がいくつも出来上がっていきました。
その中に今回のカボチャのクリームスープもあるわけです。

見た感じは実に地味というか、健康的というか、面白くないというか。ただただ濃い黄色の液体です。どこからどう見たって、少なくとも元非カボチャ民の僕には「美味しそう」には思えません。

でも口に運ぶとなめらかな舌触りとまったりとしたコク、そして深い甘み、底の方からはスパイスの風味などが、なかなか複雑にうにゃぁ〜と染み出てくるのであります。

実際、スパジャーのスタッフ河宮(男)も、最初はいまひとつのノリだったものが試食してから「見た目とは裏腹に、味はパワフルに美味しいですね!これなら僕でもいける」と眼を見開いておりました。

糖分についてはケースバイケースで入れたり入れなかったりしますが、今回はメープルシュガーを使ったことで、やっぱり砂糖とは比較にならないほど底深いバイブレーションが生れました。

しかし、いつものようなメープルの持つミネラルっ気というか野趣のようなものは感じません。おそらくカボチャのほうが野趣があるんでしょうね。そのままではわかりにくいのですが、塩気や甘みによってカボチャの味はグーンと伸びてくる。

スパイスにおいては、とにかくシンプルで量は控えめ。鍵はシナモンです。僕はカシアというシナモンの近似種を使っていますが、良否ではなく、たまたまの都合でそうしているだけです。だからみなさんは入手しやすいほうでどうぞ。

そして今回のもう一つの鍵は、カボチャの果肉を残している点です。つぶつぶみかんジュースほどじゃないですが、そう、ふわふわ食感といえばいいのでしょうか。すべすべぇ〜っとしたミルキーな液体の中に、とろ〜り柔らかなカボチャの果肉が優しく、かつ不規則に浮いているわけです。

もちろんポタージュスープのように、仕上げにクルトンやドライハーブを散らすのもいいでしょう。いろんなアクセントのつけ方があると思いますので、どうぞいろいろ楽しんでみてください。

というわけで、前回から引き続いてスパイスジャーナルと連動してきましたが、撮影を終えた河宮は、「そぼろマサラのレタス包み」と「カボチャのクリームスープ」をしっかりと平らげ、ベランダに出て優雅にタバコなんぞふかしています。ま、カボチャを愛せたといっても食べ終わったら男はこんなもんです。

ちなみにスパイスジャーナルのレシピページには、栄養分析のコーナーもあります。コムラショウコという美人が担当しています。この本でいままで作ってきたレシピは総数70品。そのうち細かいレシピ解説と栄養分析をしたのは30品。僕などは裏町育ちのアウトローですが、コムラは一流の大学と調理学校を経た立派な管理栄養士。(実は河宮も早大出の立派な男です)

スパイス料理の完全なる栄養分析と評価、というのは僕はまだ見たことも聞いたこともなく、おそらくスパイスジャーナルが初めてかもしれません。本誌とあわせてご覧いただくと立体的でより面白いと思います。このたびの連動企画の2つのレシピは2012年1月末発行予定の08号に掲載しています。

えへへ、宣伝しちゃいましたね。

それではまた次回をお楽しみに!

コムラは「野菜と和食の会」という料理教室も開催しています。

☆With メープルシュガーレシピ35
『カボチャのクリームスープ』(2〜3人分)

カボチャ           1/8個(皮付で230g。レシピは皮無を使用)
ミルク            300cc
水              100〜150cc
メープルシュガー       2tsp
油              適量

カシアまたはシナモンのホール 5cmくらい
(なければパウダーのみでも可)
シナモンパウダー       小さじ1/2
ジンジャー(おろしたもの)  小さじ2くらい
クミンシード         小さじ1/2
ターメリック         小さじ1
塩              ひとつまみ

*ブログではいつも「さじ」表記していますが、スパイスジャーナルは完全バイリンガル誌のため「tsp」表記としており、同じ量を指しています。

1.カボチャの皮を取り、幅1〜2センチに切る。ジンジャーはおろして絞っておく。

2.鍋の中へ、油、カシア(シナモン)、クミンシードを入れて火をつけ、小さな泡が出だしたらカボチャを加えて炒める。
*スパイスは焦がさないようにご注意。またカシア(シナモン)ホールがなければ入れなくてよい。

3.塩を一振り、シナモンパウダー、おろしたジンジャー、ターメリックを入れて混ぜる。

4.全体が混ざればフタをして弱火〜中火で炒め蒸す。時折フタを開けて中身を混ぜる。

5.焦げそうになったら水を少しずつ加えてよく混ぜる。ここからミルクを入れてもよい。

6.カボチャがほくほくと柔らかになったら、木べらやゴムベラで錬るようにして潰す。

7.少しミルクを加えては木べらなどでよくかき混ぜる。すべて入れたら5分ほど煮る。

8.最後にメープルシュガーを入れてよく混ぜ合わせ、火を切り、5分ほど置けば完成!(この置くのがちょいとしたミソです!)

[PHOTO 河宮]