インドスイーツこわい★

ラスマライの缶詰ぷにょっとしてます似た写真が「スパイスジャーナル08」にもメープルシュガー入りラスマライラスマライをいじくる女性軍“こわいこわい”と言いながらラスマライと戦うみっちゃんの姪っ子 ラスマライラスマライさぁお次はケーキやでぇラスマライ&ケーキ

酒のつまみとして聞いてください。
昨年の暮れのこと。僕は大阪阿倍野でクリスマスの夜を過ごしておりました。
絵に描いたような下町のど真ん中で、実にコテチックな「さいでんな、ほうでんな♪」(←山下達郎氏曲の関西弁替え歌)ナイトです。

と言ってもここはお店ではなく、小誌スパイスジャーナルのヨーガでお馴染みの本沢みっちゃんのお宅。毎日のようにいろんな人が出入りしているお宅のようで、そりゃもうちょっとでもきっかけがあると、賑やかなパーティハウスと化すのだそうです。

今日は忘年会をかねたクリスマス会。はい、その通り。僕は料理人としての参加です。いつものスパイスボックスをもって伺いました。

夕方、みっちゃんのご主人と僕(二人ともごついおっさん)でこつこつと仕込をして、やがてうちのカミさん、みっちゃんの姪っ子と生れたばかりの赤ちゃんがやってきて、台所がスパイスの香りで一杯になった頃にみっちゃんが買い物から帰宅。

そして完成間近になってみっちゃんのお母さん。そのあとはエトセトラ。

気がつけば、どこが始まりか分からないくらい、すっかりみんな盛り上がっています。あかん、このままだと僕は絶対についていけなくなる、と思い、シェリー酒を片手にキッチンドリンキン。

その後、数名がやってきて、よく見ると男は僕とご主人の二人だけ。おぉこわ〜。

ところで今日の料理ですが、クリスマスにちなみチキンを多用しております。ヨーグルトとスパイスに漬けこんだチキンのグリル、チキンの甘辛いカレー、ハーブとヨーグルトで煮込んだチキンと共に蒸らしたご飯、インドの豆が数種類と大根やきのこが入った辛いカレー、そしてベジ餃子。

出来上がるたびに、みんなは大きな声を上げて喜んでくれます。でもって、ちゃっちゃっと食べて飲んで、また大きな声で盛り上がる。

こうして全員がすっかりできあがった頃、とっておきのデザートの登場です。

”うっしっしっし・・・・・実はこれこそが本日のメインイベントだ”と僕はこっそりそう思っていました。

ほい、今日はインドから謎のスイーツが来日しております!
「わぁ〜〜〜い、スイーツスイーツ、それを待ってたんよ!」
「わたしも実はケーキを買ってきた。どっちから食べる!?」
”ふん、笑っていられるのも今だけや。そのうち泣かしたるからな”

スイーツの名は「ラスマライ」。僕は食べたことがありません。でも、経験がなくても、そのやばいほどの甘さが想像できます。今までいくつかのインドスイーツを食べてきて、とにかくインドは全部がヘヴィに甘いから。

では、なぜもっているかというと、いきつけのスパイス問屋からほぼ強制的にもらったからです。ええ、この問屋からは、しばしばそういう一方的ギフトがあるのです。でもって、スイーツに関してはいまのところ100%の確率で眠ってしまいそうなほど甘い。

人によって感じ方に差はあると思いますが、この大胆すぎる甘さは、僕などのような細かい人間にはとても耐え難い。

でも、一口だけ、食べてみたい。そしてなによりも、目の前の女性軍を困らせたい。そんな怖いもの見たさでドキドキしながら缶詰をみんなに手渡しました。

「へぇ〜この缶詰、なんか桃でも入ってそう!」
「どれどれ、わたしにも見せて。なんて書いてあるのぉ〜?読まれへんわぁ」
ラスマライ、ら〜す〜ま〜ら〜い。
「ふぅ〜ん。なんでもええし。早く食べたい!」
”なんだ、じゃあいちいち聞くなよ”

いよいよ開封。カリカリカリカリ・・・・・・・パカッ。
と、そこに見えたのは、なんと白い円盤型のふんわりとしたまんじゅうのようなものでした。透明のシロップの中に浮いており、触ってみるとぷにゅぷにゅとしている。あぁこわ〜。

問屋が僕に教えたとおり、まんじゅうを取り出し、軽く絞っていきます。そしてミルクを沸かしてそこにいれていきます。ここで本来なら砂糖を大さじ2ほど入れろ、と言われているのですが、一応味見を。

すると、これがすでにかなり甘い。”うわぁ、もう味見はしたくない”と思いつつも、うんうん、おいしいぞ〜!と僕は声をあげてみたりして。

「わくわく、わくわく、早く!」 ”うっしっしっし・・・・”

器に入れて、さぁどうぞ。
「ズズズ・・・・・・・パクッ・・・・・・・・・・??? うぎゃぁ、なによこれ、これ甘すぎるわ〜〜〜!」
誰かがそう叫びました。”やったぜ!”

「インド人てこんなもん食べてるの?ちょっと感覚がおかしいんとちゃう?うわっあまっ・・・・ズズズ、なにこれ・・・・・パクッ、いやぁ甘すぎる・・・・・・」
”???”

なんだか言ってることとやってることが違ってきました。みんなボロクソなことをいってる割りに、甘いミルクともっと甘いまんじゅうを食べちゃってます。
”こりゃアカン。よし問屋が言うように砂糖を追加したろ”

僕は言いました。実はミルクに砂糖を大さじ2ほど入れてちょっと煮詰めろ、って言われてんねん。考えられへんやろ?それを冷やしても美味しいのだとか。ほんま信じられへんわ。

するとそのとき、みっちゃんが立ち上がります。
「ほんなら入れたらええやん。そうそう、これにしよ。メープルシュガー」

前に僕がプレゼントしたことがあったのです。チャイに入れるとインドのものよりはるかに美味しくなるのだと、みっちゃんはすっかりメープルシュガーがお気に入り。

ちなみに、みっちゃんとご主人は数え切れないほどインドへ行っており、ヨーガのみならずアーユルヴェーダの勉強をしたり、なんとインド人の子供を養子縁組までしているそうな。それほどインド通のお二人がメープルシュガーの大ファン。(嘘くさく思われるかもしれないけど本当の話)

鼻歌を歌いながらみっちゃんは鍋に残ったミルクの中にメープルシュガーを加えて、後はスプーンで混ぜ混ぜ。
「は〜い、こんな感じでいいかな〜」

周囲も続いて「どうかな、どうかな!」

そして2回戦スタート。
「うわっ!もっとあまくなってるやん・・・・ズズズ、なにこれ、ほんま信じられへん・・・パクッ・・・・・・あかん、これはあかん・・・・・・・・ズズズ・・・・・・」

もう一度口にしてみると、確かに先よりも倍ほど甘くなっています。もちろんメープルだから砂糖とはちょっと違う甘み。しかし、やはり僕にとっては異次元のレベルです。と、そう再確認した直後に誰かが声を上げました。

「よしっ、ほな次はケーキ食べよう!」
「わ〜い、ケーキケーキ!早くぅ〜〜〜〜」
”・・・・・・・・・・・・・・・”
女性は本当にこわいです。

*今回は料理写真がありません。というか撮影する暇がありませんでした。周囲の誰かが撮っていたようですが・・・・・。失念!

☆With メープルシュガーレシピ36
『メープルのラスマライ』(1缶分)

ラスマライ     1缶
ミルク       500cc
グリーンカルダモン 3ヶ
メープルシュガー  大さじ2(怖い方は1)

*ほかのスパイスやデコレーションアイテム。問屋曰くサフランやピスタチオ。カワムラ的にはカシアまたはシナモンのホール。さらにクルトン

1.缶の封を開けて、中のラスマライを取り出す。

2.シロップ漬けになっているので軽く絞る。

3.鍋にミルクとグリーンカルダモン、もしあればカシアシナモンホールを3センチほど入れて火をつける。グリーンカルダモンは皮を割っておく。

4.ひと煮たちしたらメープルシュガーとラスマライを加えてゆっくりと混ぜる。(インド人たちはミルクを煮詰めるらしいが甘くなりすぎるのでここではひと煮立ち)

5.火を消して1分ほど置いたら出来上がり。(冷やして食べてもおいしいと問屋曰く)

*ラスマライ
ミルクとレモンなどで作ったシンプルなチーズを、小麦粉などで練ってボイルしたもの。ふわふわとした食感でさっぱりとした味わい。ベジタリアンから人気のスイーツ。