「トップポットドーナッツ」を知った。やられた。他のドーナッツがもう、食べられなくなった。
シアトル在住30年の友エツヤさんが案内してくれた。屋根のドーナッツがちょっと野暮ったくてかわいい!ひとめぼれ。
魅惑のショーケース劇場で、主役のオールドファッション・ドーナッツ。
わ、お皿が健気に回っている!堂々のセンターを張っているのはグレーズ(砂糖衣)のかかったオールドファッション・ドーナッツ。
厚ぽってりとしたグレーズ、いかにもおいしそう。しっかりめの生地で作られたオールドファッションタイプはレモン味、メープル味、ラズベリー味、チョコレート味など8種類。
生地はプレーン、ココア、ブルーベリー入り。グレーズ(砂糖衣)のバリエーションがたくさん。
私はシンプルな砂糖衣と、メープル味の砂糖衣のかかったオールドファッション。ライターの友アミさんはチョコレートとシナモン味のケーキドーナッツを買っていた。
持ち帰っていただいた。ひとかじり。すぐに分かった。そんじょそこらのチェーン店とは役者が違う。砂糖衣と生地の混じりあったところがカリカリしていてたまらない。
この食感、どこかで…。そうだ、アミさんと私が認定した東京一おいしい板橋・中野製菓の黒糖かりんとうにも相通じるわ。
でも生地はふんわりやさしい。絶妙の揚げ加減、これまでにお目にかかったことがない。夢中で2個とも一気食い。
そういって朝、パンを食べずにヨーグルトだけにした。アミさんに笑われた。だって夜中からそわそわしていたんだもの。明日朝、どの子を買おうかなって。
アミさんはきっぱり言った。「ダースで行きましょう。私、東京まで持って帰りますから」。そうだ、ここで迎える明日はない。クイック旅行者は暴走する。どうだ無敵のダース買い、16.99ドル(1450円)だ。
値段はシンプルなものが0.99ドル(85円)、砂糖衣が1.89ドル(160円)、クリーム入りは2.29ドル(195円)、アップルフリッターは2.49ドル(210円)の4パターンになる。どれを詰めても12個で16.99ドルだから、全部クリーム入りを選べばすごくオトクだが恐ろしくヘビー級になる。シンプルなものばかりだと割高になるし、悩むなぁ。なんとなくバランスのとれた選択になるのだろうな。
「かまぼこ板ドーナッツ」と勝手に名付けたバー状ドーナッツ2本、シアトル本拠のプロサッカーチーム・サウンダーズのチームカラー、青と緑のチョコスプレーのかかったサウンダーズ・ドーナッツも混ぜてみた。箱をかかえる幸せと言ったら…。恍惚とした表情を浮かべていたに違いない。
壁の棚に絵本や本がたくさんおいてある。絵本を読み聞かせがらドーナッツをほおばる親子たち。平日は午前6時から、土日でも午前7時からオープン。えらいぞ。ドーナッツ=朝食なんだな。シアトル圏に8店舗あり。
アップルフリッターは2.49ドル(210円)ごつごつしたオールドファッション生地に、やさしいグレーズがしみ込んで、ところどころにリンゴとシナモンがこんにちは〜と現れる。もう、とりこ。車内で話す。「エツヤさん、日本にお店、持ってきてくださいよ」「5億円ぐらいはいるかも」「宝くじ当たらないかな」。
レシピ本も売っていた。思わず購入。
ドーナッツの味を再現できるとはとても思えないけれど、せめてあのとろけるグレーズの秘密だけでも知れたらいいな。重たいけれど本を買おう。著者サイン入り、16.95ドル(1450円)。
エツヤさんと私は断然、オールドファッション派、アミさんはふわふわしたケーキ派。少しずつ試食して視力検査の輪っか状態になったドーナッツたちを、東京で待つ息子カナッティ&パパのためにお持ち帰り。
正式な店名は「TOP POT HAND-FORGED DOUGHAUTS」。2人の創業者が昔、「TOPSPOT」という名の中華料理店のレトロなネオンサインを買っていた。でも年月とともに「S」が落ちてしまい、そこから「TOP POT」の発想を得たのだとか。ちょっとレトロで野暮ったくて、おしゃれ。そんな絶妙なさじ加減が、私もシアトルっ子も夢中にさせるんだな。
2002年に1号店をオープン。HAND-FORGEDは店の日本語HPでは「手打ち」と訳されていた。Fogeは「鍛造する」「鍛工場」の意味。ロゴマークも鍛冶屋さんらしき人があしらわれている。それにしても「手打ちドーナッツ」…。