≒97円
愛するレストランPOMZEへ。
おやつデモ第1ラウンドを終えた翌日、ホッとしているだろう…と、予約していたのが8区のレストラン「POMZE(ポムズ)」だった。昨年9月に初めてお邪魔した。
お料理といいサービスといい、心がこもっている。おまけに背伸びせずにすむ。赤子連れの私にちょうどいい。同行のリサさん母娘も大のお気に入りで、再訪を楽しみにしていた。
平日のランチタイムは満席。
1階はボウル1杯のサラダバー、2階はクロスが敷かれて落ち着いた雰囲気とガラッと変わる。隣の席はバギーに乗った赤ちゃん連れと妊婦さん3人組だった。ちょっとホッとする。
めくるめくデギュスタスイォン(少しずつのお楽しみ)劇場、はじまりはじまり。
手島竜司シェフにお任せする。嫌いなもの?もちろんありませーん。
まずはおつきだし。パンのスフレ、ジャガイモのピュレにチョリソー添え。
黒いパンを割ると、中からジャガイモとチョリソーが現れた。わー、いきなり先制パンチ。わくわくする。笑顔が素敵なメートルドテル(給仕責任者)の大石直子さんが説明してくれる。
黒い服に身を包み、エレガントなもてなしが大好きになった。32歳と聞いてたまげた。えー、その若さでその落ち着き、ありえない。ツメのあかを煎じて売り物にしてほしい。
リンゴバターはコンクールのファイナリストに。
「このバター、コンクールで上位3位に入賞したんですよ」。直子さんがうれしそうに話してくれた。泡立てたエシレ製バターに、イルドフランス産リンゴがふわっとあとから香る。
買って帰りたい。ほのかに甘い自家製ミルクパンもおいしい。バターに似合いすぎる。おかわりー。
ブリオッシュのクルトンにオゼイユとフォアグラバターを削りかけて。
オゼイユはスカンポという青菜で、ふんわり香る。フォアグラもいいな。
イワシのパイ包み、酢漬けのサリコルネのせ。
サリコルネは海藻「おかひじき」、サクサクした食感だった。イワシの塩けに酢の風味がさっぱり、いい仕事ぶり。
ホロホロ鳥、ミントとグリーンピースのソース。
「わあー、初夏らしい」「こういう色合い大好き」「苔の庭みたい」。3人で声をそろえた。ミントづかいが決まっているな。パリパリしたレースのような飾りは米粉でできているそうだ。
フォアグラのポシェにエビのコンソメスープがけ。
あ、これイケる。だれが何と言おうとフォアグラが好きだー。セーヌ川に向かって叫びそうになる。おかわりがが欲しい。赤い葉っぱはホウレンソウの1種という。
リュー・ジョーヌの蒸し焼き、サヴァイヨンソース。
タラ科の魚にツクシのような野生アスパラガスが結ばれて花飾りも。う、美しい。卵黄を泡立てたサヴァイヨンソースは卵の殻に入れて出された。盛り上がるなぁ、こういう仕掛け。
メーンはピレネーの乳飲み豚、ネギとチョリソー、揚げニョッキ、タマネギのローストのピュレ添え。
骨付きの肉を前にすると鼻息が荒くなるのはなぜだろう。「手づかみでどうぞ」。小さな花を浮かせたフィンガーボウルを手島シェフが持ってきてくれた。素晴らしい。リサさんが言った。
「あとでしゃぶるよー、みんな!」
ゆっくり火が通されて、肉がふわーっ。骨から幽体離脱する。ほどけそう。食べ切るのが悲しくなった。あと5切れは食べられそう。ニョッキはお餅みたい。ジャガイモと片栗粉、パルメザンチーズと卵で作って揚げてあるのだそうだ。マネしたい。
16区イエナ市場の有名八百屋チェボーさんの野菜たちも主役に負けず盛り上がった。
「ミキちゃん、タマネギのピュレが残ってるよ!パンでぬぐって!ほらフォークの下も!」。人の皿に指図するのだった。
お口直し、ミントのシャーベット。
思わず興奮してしまった。あーあ、終わるのが惜しい。ミントがさっぱりして緑がさわやかで、気持ちをなだめてくれた。溶ける前に。3口でいただいた。
デザートはクレメダンジュ、リンゴとルバーブのコンポート、リンゴチップス、メレンゲ添え。
クレメダンジュはフロマージュ・ブランに生クリームを入れたふんわりしたデザートで、色鮮やかなリンゴ・チップスが踊っている。このデザートをパティシエールに教えてもらうことになった。(帰国後、お土産レシピとして紹介します)。
全9皿で45ユーロ、ありえないお値打ち。
はー、幸せが止まらない。みんな一緒に同じものを食べるのもいいな。
どこかの国で気取っているだけの店をありがたがっているみなさまー、こっちにどうぞー。両手を口にあてて東に向かって叫びそうになる。
味、値段、サービスが自分にあっている店なんてそうそうない。さわやかで一生懸命で、好きな道を進んでいる手島シェフと直子さんが将来、独立して自分たちの店を持ったら…。もっともっといいな。タクシーに乗っても余韻は続く。3人で熱く語るのだった。幸せな時間、心より感謝しよう。