パリ編[7]第2ラウンド仕込み&ジル・ヴェロで大人買い

le moulinのクロワッサンたちまかないごはんはアショアがけごはんひょうずだんごを仕込むセイロでがんづきを蒸すGills verotの野菜のテリーヌGilles verotの野菜のラザニアGilles verotの自立する豚のパイ包みGilles verotの鴨とイチジクのパイ包みGilles verotのフロマージュ・ドゥ・テットGilles verot尽くしのおうちディナー。最高

午前10時、日本文化会館へ。1日1クロワッサンはまたしても「聖母の水車」で。

明日2日の「東北のおやつ」デモ用を仕込むだけでなく、来週のアルザス巡業の分もある程度仕込んでおきたい。
アシスタントの中2・ミキちゃんが計量してくれた粉類がずっしり、重い。

「忘れもの、ないですね」。リサさんがウッカリな私を察して何度も念押ししてくれた。はい、大丈夫です。

パリ公演の試食70人分とアルザス分の150人、計230人分の試食を作る材料が詰まっている。さすがにタクシーで行こう。

途中でパン屋「ル・ムーラン・ドゥ・ラ・ヴィエルジュ」に寄って朝食を買う。クロワッサン1.05ユーロ、パン・オ・ショコラ1.2ユーロ、リンゴタルト3ユーロ、パルミエ2.5ユーロ。

「やっぱりクロワッサン、最高!」。

日本文化会館5階のキッチンで立ち食いする。丁稚ケイのシッターを務めてくれるリサさん、にっこり。リンゴタルトのリンゴは丁稚ケイが独り占め、土台だけ残される。しゃーない、リンゴは食べたつもりの「エアー・リンゴタルト」でガマンしよう。

さあ仕込み始めよう。まずは岩手がんづきから…と配合をにらんでいて気付いた。あ、部屋の冷蔵庫に牛乳忘れた…。だーから、言わんこっちゃない。近くのスーパー・フランプリへ買いに走る。2リットル入り2.85ユーロ。

岩手・大槌町で習った「ひょうずだんご」を仕込む。

黒糖、ごま、くるみを皮にのせてギョウザのように包んでいたら、ジャーナリストのユミコさんが現れた。「ひょうずだんご」の仏訳に悩んだらしい。「ラヴィオリ、でいいんじゃないですか」と会館スタッフのカリンさん。訳すのは難しい。

ストラスブールの欧州評議会でふるまう分も含め、150個余りを作った。

まかないはバスクの伝統料理「アショア丼」。

南仏取材から戻ったばかりのユミコさんが缶を鍋にあけて温めている。いい香りが漂う。「アショア」だった。ビアリッツの民宿で3年前、いただいたことがある。

アショア?何それ?というリサさんに得意げに説明する。「トーフなしの麻婆豆腐ですよ」。バスク特産のトウガラシがちょっぴり効いていて、ご飯がすすむこと。仔牛肉の不ぞろいミンチが食べ応え十分、マネしたい。ケイもモリモリ食べていた。って、いいのか、弱冠生後11カ月よ。

付け合わせは三ツ星レストランシェフ御用達の農家・ジョエル・チェボーさんの小さなニンジンと小さなカブ、というのがまたぜいたくだわ。

東京から持ってきた「マイ・セイロ」。

日本文化会館にもセイロはあるのは知っていた。2年前に開いた「和のおやつ」イベントで、私が13区の中華街まで買いに行ったから。でも道具があるかどうか分からぬアルザスに手ぶらで行けぬ。

岩手がんづき、宮城がんづきを蒸す。セイロのふたが足りない。何か替わりになるものは…。

パリに虚無僧セイロあらわる。

ユミコさんに差し出された。「はい、これは?」竹のざるだった。ひっくり返してセイロにのせてみる。あらよっと。
おお、いける。何だか見たことあるようないでたち…そうだ、「虚無僧」みたい。

午後5時、本日は閉店。

午前10時から7時間、あっというまだった。

丁稚ケイは泡立て器にコンセント、リモコン…あるものに次々、手を伸ばす。一番のお気に入りは歌手キム・ヨンジャの「うちわ」だった。2007年の「音楽の日」、日本文化会館でコンサートを開いた時のものだった。握って離さない。

そうか、君、キム・ヨンジャが好きか…。リサさん母娘が帰国した後の子守りグッズとして道連れにさせてもらおうか。

寄り道は前々日に引き続き、シャルキュティエ「ジル・ヴェロ」へ。

リサさんたち3人でほれこんでしまった。この店ならばハズレがない。鼻にかけつつ平然と言い放ちたい、、「端から端まで全部いただくわ〜」。

リサさんは気合が入っていた。「何でも買いますから!言ってください!」よーっしゃ。

野菜のテリーヌ、245g11ユーロ。

6層の宝石箱みたい。クミン味、酸っぱいの…どの層も味付けが違うのにまとまっていて、「どうよ」といった押しつけがましさがない。

野菜のラザニア、200g3.32ユーロ。

ミキちゃんが言った。「これ好きかも」。丁寧でバランスがいい。

めくるめく大人買い3連発。見よ、自立するパイ包み。24ユーロ。

豚肉、鶏、鴨のフォアグラ入りで2011年、世界コンクールで第2位に入ったと書かれてあった。ちょうどいい塩加減、バゲットがすすむ。うなりっぱなし。

鴨とイチジクのパイ包み、1.095g50.37ユーロ。

どれぐらい欲しいですか?女性店員に訊かれた私はニヤリ、ほほ笑んでいたにちがいない人差し指を2本、びしっと振り下ろす。「20㎝ほど!」。

フロマージュ・ドゥ・テット、610g12.75ユーロ。

B5サイズが2枚ほど。舌にのせるとほろーり、ふんわりほどけるような味わい。やっぱり不動の一等賞だ。どこにもない味わい、パリならではだな。

最強の離乳食、きなこマカロニとともに。

ホテルに帰っていただきまーす。丁稚ケイには、ゆでたマカロニにきなこと砂糖をまぶした「きなこマカロニ」も出してやった…って朝食の残りだけれど。食通がうなる絶品テリーヌたちも平然と食べていた。どんな取り合わせやねん。

さあーて、明日の第2ラウンド、情熱を右手に、おやつを左手に携えて伝えよう。がっちりしっかり盛り上げていこう。