別れの朝、ローラン・デュシェーヌへ。
とうとうリサさんたちは帰ってしまう。10日間、本当にお世話になった。パリ最後のクロワッサンは13区のパン店「ローラン・デュシェーヌ」で買おう。
シャルル・ド・ゴール空港へ向かう前の午前7時半、タクシーで寄った。
新刊「パリのおやつ旅のおやつ」のために昨年9月、ここで「ケーク・マッチャ」の作り方を教わった。お世話になったキョーコさんにお礼も言いたかった。
残念ながらキョーコさんは休みでいなかった。
9月にも空港に向かう前にいただいた思い出のパン・オ・ショコラ、クロワッサンを3つずつ買い、大急ぎでタクシーに戻る。これで本当にお別れだわ。さみしい、さみしい。
1人になって大丈夫だろうか。東京よりも楽だった。
リサさんに言われた。「ストラスブールに行くし、いろんな意味でアウェーでしょう。センセイ、おいていくのが、しのびないわ」。
トホホ、本当に。おまけに私、すぐへこむし、すぐくじけるしな…。「でもすぐ立ち直ってるけどね」。笑われた。
抱っこひもの中の牢名主ケイも泣いている。分かるんだな。
あまりにもさみしすぎて、次に会う予定を入れることにした。
そうだ、7月、一緒にパリで習ったお菓子を再現する会を大阪で開こう。もちろんアシスタントは中2のミキちゃん、ご指名で。よーし、ガンボロー!タクシー車内で3人、手の甲を3つ、のせあった。「また来るぞー、オーッ」。
クロワッサン1.05ユーロ。やっぱり最高点。
急に広くなった部屋に戻ってかじった。ケイ、頑張ろうな、これから2人で。
話しかけながら分け合った。ああ、身もだえる。
紙のような層はごく薄いのに、でも主張があって、しっかりバリバリ、かみごたえがある。うーん、すばらしい。どこよりもいいわ、やっぱり。
パン・オ・ショコラもチョコレートたっぷりで、どこをかじってもチョコに当たる。うれしい。1.1ユーロ。
ランチにデザートを教わったビストロ「ル・コルニッション」へ。
アルザスでの「和のおやつ」デモの助っ人・カヨコさんと待ち合わせた。
1日遅れでストラスブール入りする彼女に、まずは山のような身の回りの品々を預け、持ってきてもらうことにした。私自身は冷凍した「がんづき」10個にひょうずだんご、粉や砂糖といった食材を運ぶ作戦にした。それに加えてバギーもパソコンもカメラも、そしてケイもいる。大丈夫か。1人で頑張らないと。
前菜はチョリソーにモッツァレラ、トマトのソルベ添え。
キッチンわきのカウンター席に陣取った。週替わりのランチは前菜、メーン、デザートで32ユーロになる。トマトのソルベは昨日、出来たてをスプーンですくっていただいていた。水牛のモッツァレラによくあった。チョリソーもスパイシーで食べ応えがあるな。
メーンは定番・リードヴォー(子牛の胸腺)に。+12ユーロ。
根強い人気があって必ず、メニューにあるという。ナイフを入れた瞬間からニンマリする。完ぺきだわ。外はカリカリ、中はとろけるよう。日本じゃお目にかかれない。ソラマメやエンドウの歯ごたえも楽しい。
デザートは半熟ショコラ、コショウのアイス添え。
マダガスカル産の粒コショウをぜいたくに使ったアイスも昨日、お味見させてもらっていた。
チョコと組み合わせたらどうなるだろう。興味しんしんで焼き上がりを待った。
とろーり、絶妙の濃さで流れるチョコレートがたまらない。コショウとチョコレートが相性よし、ひんやりアツアツ、舌が喜んでいるわ。
午後5時、15区のエレーヌ宅へ。
日本文化会館でのデモに2回とも来てくれたエレーヌ宅を訪ねた。東北のおやつデモで「あなたの自慢のおやつ、教えてください」。会場に向かって呼びかけたのにこたえてくれた。
彼女は大学でラテン語を学んだあとに看護師になり、結婚して3児の母になった。
いまは16歳、12歳、6歳の男の子を育てながら社会学について研究している。
旅行も大好きで、あちこちで出会ったレシピを自分流にアレンジして、家でも作っている。…って、後半は私と同じじゃない。
アルジェリアで撮った写真を見せてくれた。彼女が現地の女性とパンをこねながらほほ笑んでいる。
わぁ、いいな。思わず手を握る。これぞ私の理想だわ。「そうなの、私もチカコのしていることと同じようにしているのよ」。
詳しくは帰国後、報告します!