朝8時、大聖堂前の老舗菓子店「クリスチャン」へ。アルザスで朝食を。
フランクフルト近郊に住むレイコさんと向かった。大聖堂前を通り過ぎる。デモが成功しますように。手をあわせる。
「クリスチャン」には会社員だった8年前にもやってきた。同じ朝食をとった。トーストも目玉焼きも覚えている。名物クグロフはあっさりめだった。生オレンジジュースがアルザスらしいグラスになみなみ、注がれている。ごくごく。10ユーロ。
レイコさんは「ドイツよりおしゃれ!」と、スーパー・モノプリのデザートやワインを買ったり、「極度乾燥しなさい」と書かれた服に再びウケたりしてバスで帰って行った。1晩、助けてくれたこと、本当にありがとう。
午後1時、総領事公邸キッチンへ。
パリから運んできた「岩手がんづき」の包みを広げる。ラップでぐるぐる巻きにしたうえ、アルミ箔で包み、さらにファスナー付き袋に入れてきた。
「あ、ふわふわだ」「大丈夫そう」。よかった。パリから冷凍〜アルザス輸送作戦、成功したみたい。直径20㎝を12等分にカットした。
7日の欧州評議会でのデモは80人ほどの参加という。
場所は「評議会内のsnack」でやると聞いていた。セルフ式の気軽な場所だと思っていたら、いつのまにか会場は「ブルー」という名のレストランになっていた。
白いクロスの敷かれた「ちゃんとした」会場だという。ひゃー、大丈夫か。パリの日本文化会館のようなデモは難しいかも…と思いつつ、計量した粉類を用意して持っていっておくことにした。
午後4時、大聖堂わきのアルザス陶器の店へ。またしても買ってしまった…。
パリから着いた料理ジャーナリスト・ユミコさん、料理教室を準備中のカヨコさんと街を散歩する。ユミコさん行きつけの器の店へ。愛らしいスフレンハイム焼にクラクラする。クグロフ型やテリーヌ型…。ダメ、絶対。
もういくつも持っている(ただしインドに送ってしまって手元にはない)。おまけに重い。子連れ旅はまだ続く(でも食材が減った分、余裕はできた)。
天の声と押し問答する。最後はエイヤッ、買っちゃえ。そうそう来られない。今回のアルザス記念にしよう。手のひらに乗る「赤ちゃんクグロフ」を買った。8ユーロちょっと。
菓子店「ティエリー・ミュロ」へ。
「クリスチャン」とは違ったモダンなお店だった。あ、ここも何回か来たことがある。
「ドーム」という名の焼き菓子にそそられた。3.9ユーロ。切ると「あんこ」のようにキイチゴのジャムが現れた。「外側はガレット・ブルトンの生地でしょうねぇ」。
カヨコさんが言った。さすが。確かにちょっとサクサクしていて、塩けを感じる。
サクランボとチョコのケーキ「フォレノワール」も小ぶりな日本サイズが食べやすい。3.4ユーロほど。こっちのが安いのね…。
「洗濯ヒモ」という名のレストラン、場所も味も雰囲気も値段も大ウケ。
ユミコさん御用達のレストランに行く。木組みの家々が並ぶ旧市街プティット・フランス地区にあった。
その名も「ラ・コルド・ア・ランジュ」。洗濯ヒモ、という意味だった。
ユミコさんがいたずらっ子のように笑って言った。「好きでしょう、こういう店」。
ハイ本当に。店内に入ってワクワクした。その名の通り、天井からTシャツや赤ちゃんの服…洗濯物がぶら下がり、テーブルや椅子は教室の机みたい。
丁稚ケイのために補助イスと落書き帳、色鉛筆を出してくれた。
こんなお子様対応をしてくれたレストランはフランスで初めてかも。ありがたい。遠慮しなくていいのが今の私には一番だから。何にしようかな。
「コットン」「サテン」「ビロード」…。メニューには料理からイメージした織物や布の名前がついている。茶目っ気があっていいな。
すね肉のアルザスビール煮込み、17ユーロ。
やったー、骨付き肉。「ジュート織物」との名前がついていた。ワイルドな感じ、なんとなく分かるかも。表面がカリカリして、お肉はほろーり、骨から外れる。
うう、骨付き肉にはめっぽう弱い。よーし。思わず燃える。付け合わせのシュークルートも酸味がやさしい。
牛とハムの揚げ焼き「コルドン・ブルー」、マンステール・チーズがけ。
「ビロード」という名前、ちょっと似合わないかな。でも許そう、ここは雰囲気を楽しめれば。アルザス名物マンステール・チーズがとろけ、姿は見えねどしっかり香る。
添え物には「ラット」というジャガイモを選んだ。
「非常にムチッとして、しまりがよくって、おいしくてちょっと高級なおイモです」。ユミコさんが解説してくれた。
アルザスのパスタ「シュペッエル」、クリームと角切りベーコン、クルトン入り。11.5ユーロ。
細うどんのような食感、丁稚ケイにぴったりかも。ついつい食べてしまう。クルトンがカリカリ、まったりしたクリームにからむ。いいアクセントになっている。
年中無休で昼休憩なし、ノンストップ営業、立地も最高だわ。入りやすいだけの観光客向けの店かと思いきや、茶目っ気たっぷりで、なかなかのおいしさ。えらすぎる。さーて明日、がんばろう。