目覚めと別れのカプチーノ。
トモコさんが毎朝、淹れてくれた。カシャカシャ泡立てた牛乳を注ぎ、2杯目も勧めてくれた。
甘えて毎朝、お替わりした。
たくさんの人の出会いの場になるであろう石の家ができたら、また訪ねられたらいいな。
「ずっといますから」。ドモドッソラ駅のホームでトモコさんと別れた。
午前9時48分、イタリア・ドモドッソラ発、ジュネーブ行き特急に乗る。
スイス・ローザンヌまで1時間50分、丁稚ケイがぐずると1分が長い。フーッ。
立ってユラユラしながらあやす。周りのイタリア人が微笑んでくれるので救われる。
後半1時間は眠ってくれたので座れた。ホッとしたらお腹が空いた。
高いだろうな…と思いつつ車内販売のサンドイッチに手を出す。
プロシュートハムのサンドイッチ、ミネラルウォーターで9.1ユーロ。ひぇー、高級だ。
正午過ぎ、スイス・ローザンヌ着。
15分ほど到着が遅れた。「中央口のタクシー乗り場」を探してうろうろする。
雨の中、ナツミさんが迎えに来てくれた。「はじめまして」。相方ユウさんのいとこにあたる。
丁稚ケイは40歳で産んだ。人生は有限、そうそう長付き合いできない。ケイはきょうだいもいない。1人で生きる時間が長くなるだろう。
せっかくのご縁、できるだけ近しい人に会わせておきたい。私も会いたい。
ローザンヌ近郊の村をめざす。
「コロコロたまご、作っておいてくれる?」。ケイの「はとこ」にあたる11歳の愛娘ユマちゃんに電話で伝えている。何だろう、コロコロたまご。
鶏そぼろ弁当、久しぶりに和の味。
ユマちゃんは1時間50分の昼休憩、歩いて10分の小学校からご飯を食べに帰宅していたところだった。すぐにケイを抱っこしてくれた。コルクの積木を出して遊んでくれたり、歩く練習をさせてくれたり。た、助かるー。
初対面なのにしっくりくるのは、やっぱり血のつながりなんだろうか。不思議だな。
スイスでお手製のお弁当なんて!久々の和の味、家庭の味。うれし過ぎる。ふたを開ける。
わぁ、なつかしい、三色ご飯だ。「コロコロたまご」は、いり卵だった。鶏そぼろ肉が手に入るんだな。
おやつは抹茶ロールケーキ。
すごーい、刻んだイチゴたっぷりの手製ロールケーキをいただいた。しっかりモスグリーン、やさしい手作りだな。窓いっぱいにレマン湖とブドウ畑の緑が広がる。
雨に濡れて葉っぱたちが成長しているのが目に見えそうだわ。ハーッ、ちょっと根が生えそう。ここんちの子になりたいなぁ、ケイ。話しかける。
おからロシアンクッキー、どんなのだろう。
スイス料理と言えばチーズフォンデュとラクレットぐらいしか思いつかないけれど…。そういうとナツミさんは言った。「キノコのソースとか、肉のラグーとかもおいしいですよ」。
お菓子はモンブランやチョコレート…。ユマちゃんは「ホワイトチョコが好き」なんだそうだ。
スイスを中心に海外暮らしが10年を超えるナツミさんは、お豆腐から納豆、ヨーグルトに化粧水まで自家製だった。
豆腐が手に入りづらかったころ、仲間と集まってお豆腐を作っていた。
たくさんできるおからはケーキやカレーに混ぜたり、「ロシアンクッキー」に入れて焼いてたのだとか。
おからロシアンクッキー!こういう組み合わせに私は弱い。
おいしそう。作り方を教わろう。
夫のジャン=フランソワは、お母さんの作ってくれた「ブラスレ(腕輪)」という名の焼き菓子が好きだったとか。
へーえ、フランスでは見たことがないな。
晩ごはんはマイルドなタイ風グリーンカレーだった。
かの地に赴任したことのある人に教わったという。村のパン屋さんからの帰り、ココナッツミルクを買っていたのはこのためだったか。ガソリンスタンド併設のコンビニでも売っていたのにはびっくりした。
エビたっぷりで、やさしくスパイスが香る。ケイもほとんど1人前、食べてしまった。
スイスにもおいしいもの、たくさんありそう。いっぱい食べて・・・いや覚えて帰ろうっと。