1スイスフラン≒83円
午前9時、ヴァニラ入りヨーグルト。秀逸。
ベリーがたっぷり入ったヨーグルトをいただいた。おや、ヴァニラの粒々が入っている。幸せ、パリで偏愛するラ・フェルミエールのヴァニラ味を超えるかも。買って帰りたい。
オードリー・ヘップバーンが歩いたマルシェへ。
小さな街モルジュは近くの村に住んだ女優オードリー・ヘップバーンが、よく買い物に訪れた。
水・土曜に立つマルシェをひやかす。
八百屋さんでいまが旬のサクランボにキイチゴ、お肉屋さんで地元産生ハム…安くはないけれどおいしそう。
居候させてもらっている親類ナツミさんは、行きつけの生パスタ屋でラヴィオリを買い始めた。
量り売りでレモン味、ホウレンソウ入り、きんちゃく袋みたいな肉詰め…。
あれ、値段はそれぞれ違うのに、店主が1つの袋にどんどん詰めている。どうやって量るんだろう。
「ま、だいたいでね。日本とは違うよ。じゃ36フランね!日本語で36ってどういうの」。
イタリアから来ているらしい店主が笑って言った。「さんじゅうろく!」と教える。ヒエー、という難しそうな顔をした。いいな。
洋菓子店「マイヤー」で、オードリー印のチョコレートを。4個入り8フラン。
オードリーはここのショコラ・ショー(ココア)が好きだったらしい。
マカロンやサンドイッチ、ケーキもたくさんおいてあった。
チョコレートのショーケースはなぜか空っぽだった。「欲しいものを言って。奥にあるから」。
それじゃあ選ぶ楽しみがないし思いつかない。ココアは1缶30フラン以上もする。さすがスイス…。
おそるおそるオードリーの名前を冠したチョコ詰め合わせにした。
ドイツ菓子フォレ・ノワールを生チェリーで。
チェリーが大好きなナツミさんから「ぜひ作って!」とリクエストされた。もちろん喜んで。アルザスで食べ歩いた成果を披露しよう。
マルシェで2種類のチェリーを800gほど買ってきた。
フォレノワールはキルシュかシロップ漬けの瓶や缶詰めでしか作ったことがない。生で作るなんてぜいたく過ぎる。めったにないチャンスだわ。
生を巻き込むより少し甘さを加えた方がいいかも。
500gほどヴァニラ入りシロップで30分、コトコト煮る。
ココア味スポンジを焼き、生クリームをたっぷりのせて巻き込んだ。生クリームを盛ったら、残しておいた生チェリーをのせて、どうぞ召し上がれ。
ナツミさんの愛娘ユマちゃんは「キャー、もっと食べる、食べる!」。大喜びしてくれた。うれいしいなあ、本当に。作ってよかった、生きていてよかった。大げさでなく本気で思う。
丁稚ケイも60度の一切れをほとんど1人で食べてしまった。
スイス名物ラクレットが食べたい!
私がリクエストした。ラクレット、ちゃんと食べたことがない。
「まあたいていは冬にするものだけれど」「本当に食べたい?ジャガイモとチーズですよ」。何度も念押しされながら、ナツミさんは応じてくれた。
スイスといえば・・のスーパー「ミグロ」でラクレットチーズ、ジャガイモを買う。
まずはラクレットを5ミリ厚さに切る。
おしゃもじみたいな器にのせて、ラクレット専用グリルへ。
しっかりとろけたらヘラでお皿にとり、ゆでたジャガイモに添えて召し上がれ。以上。
付け合わせには酢漬けキュウリやヤングコーン、リンゴを添えて。
飲み物は温かいものを。冷たい飲み物はチーズを口の中で固めるから。「でもアルコールなら冷たくてもOK」とか。
理屈にあっているような、いないような。
コショウとナツメグ入りの専用スパイスもあった。へーえ。何にでも使えそう。いいお土産になりそう、買って帰ろう。
日本人的にはジャガイモ以外も、からませたい。
ジャガイモ&チーズばかりじゃ飽きてしまう。偏っているような。
こっそり酢漬けキュウリやヤングコーンもからませてみるが…やっぱり違うな。
でもスイス人はジャガイモ一直線だそうだ。もう食べられない…といいつつ、チーズがおいしい。
イモ抜きなら、イケるかも。勧められるまま調子に乗る。
10枚近く、食べたような。く、苦しい。チーズおじゃが腹になってしまった。ブドウ畑を散歩して消費しよう。
夕暮れは午後10時、レマン湖の夜景が美しい。息をのむ。対岸に水の街エヴィアンがきらめいている。
「その向こう、この白いの、モンブランだよ」。帰宅したナツミさんの夫ジャン=フランソワが言った。わ、そうか。そういえばモンブラン、食べていないな…。季節じゃないから無理かなあ。
いやされる景色を見つつ、まだ食べることを考えているのだった。