1スイスフラン≒83円
午前10時、マノール百貨店で待ち合わせ。
シゲコさんとタクシーに乗る。10分ほどで20フラン。チュニジア出身の運転手さんだった。
トシさんと食料品売り場で落ち合った。フォアグラのテリーヌ、いまが旬のサクランボ、魚売り場ではお刺身にできそうなマグロも。どれもピカピカ、目がくらむ。おいしそう。
「じゃ、まず乾燥トウモロコシ、探しましょう」。
捜査班3人が散り散りになる。UNHCR本部カフェテリアで18日、開く「Sweets for thoughts」デモで使う難民配給食料のひとつだった。
おとといからスーパーで探しているけれど見つからない。ポップコーン用でいいのだけれど。「鶏のエサ用ならありますけれどね…」。トシさんが言うが、ちょっとねぇ。
「ありましたよ!」黄色の粒々が詰まった袋をシゲコさんが手にしている。スナック売り場にあったらしい。さすが。
最上階の食堂でお茶にする。コーヒー3フラン、スイスの週末定番、三つ編みパン1.6フラン。
「トレス」と呼ばれるパンはスーパーで専用の粉を見かけるほど。ふんわりしっとり、テカテカした感じといい、日本のバターロールそっくりだった。なつかしい。
ジュネーブ日本語補習学校帰りのナツミさん、ユマちゃんとデート。
ベルエールのバス停で2日ぶりにあった。もう懐かしい。抱き合って喜ぶ。
午前9時から午後12時半まで、国語と算数の授業を終えたユマちゃんは腹ペコだった。スイス名物じゃがいもお焼き「ロシティ」を食べに行くのは止めよう。通りがかったカフェに入る。
日替わり定食が名物「フィレ・ドゥ・ペルシュ Filet de Perche」だった。
小さな魚のムニエルで、あっさりした味わいだった。ちょっとひなびたカフェも場末感たっぷり、なかなか味があってよかった。
近くのポルトガル菓子店、つつましやかな甘さ。
ナツミさんが友人から「おいしい」と聞いた店を探す。
ポルトガル菓子店「レピ・ドレ」だった。名物エッグタルトはマカオを思い出す。
プリンのようなフィリングはちょっと甘すぎるけれど、パイ生地がバリバリー、春巻きの皮みたい。歯ごたえ最高だな。
三角形の「Guarda napas」、3.9フラン。
「これも名物、ジェノワーズにクリーム入りだよ」。
店のお兄さんが自信たっぷりに言った。まぶされた砂糖もおいしそう。
三角形を3等分する。1辺にかぶりついた。パクリ。ナツミさんと目を見合わせた。「わ、クリームパンだ」「なつかしい」。
生地はふんわり、クリームはほどよい甘さ。昭和40年代から続くパン屋さんで売っていそう。帰ったら再現したいな。
「スイスで覚えたポルトガル菓子、なんてややこしいけれどね」。
外国人が半分を占める国際都市・ジュネーブならではじゃないだろうか。ナツミさんと笑った。
スイス定番おやつパックと、丁稚ケイの誕生日プレゼントを贈ってくれた。
大人用の椅子にかぶせ、子どもを座らせておける布だった。
「外出する機会、これからますます多そうだし」。心づかいがうれしい。
また会える。ちょっと安心感があるのはやっぱり親類だからかな。
ほおにチュッチュゥ、交互に3回して別れた。パリだとたいてい2回だけれど、ここは3回なんだ。
午後4時、「UNHCR特製がんづき」試作。
居候先シゲコさん宅に帰る。トシさんと彼の部署の研修生アリスもやってきた。18日のイベントを手伝ってくれる。
米スタンフォード大の学位を終えたばかりの新人で、9月にはイラク北部の現場に行くという。「いい経験になるわ」。気負わず、いいな。
トウモロコシを散らして「宮城がんづき」を焼く。どうだろう。
乾燥トウモロコシと缶詰コーンを散らしてみた。どっちがおいしいだろう。明日、食べ比べてから試食用を蒸そう。
日本人の誕生日はイチゴショートケーキでしょう。
がんづき作りを終えたらケーキ教室になった。トシさんのパートナー、ナオミさんと丁稚ケイの誕生日ケーキを作ろう。
ナオミさんは日本にいるから主役なしだけれど、動画でお祝いの様子を撮影して送るのだとか。
ジュネーブで会った初日、「チカコさん、誕生ケーキ、作りますから!」と宣言されていた。もちろん受けて立とう。
どんなのがいいだろう。
トシさんはイチゴショートにこだわった。えっ、でもナオミさんはジュネーブ育ちだし、フランス菓子「フレジエ」とかでなくていいのかな。
「ハイ、生クリームとイチゴ。日本人ならコレでしょう」。
ごくシンプルに。ジェノワーズ生地(スポンジ)をシゲコさん宅の大きなガスオーブンで焼く。グリュイエール産ダブルクリームと、脂肪分35%の生クリームを混ぜて泡立てる。
まだ出回っているスイス産イチゴをたっぷり、くるくる巻いて巻いて…。
仕上げはイチゴより風味の強い「マラ・デ・ボワ」を飾った。ナオミさんの分は直径20センチほど、ケイのは直径13センチほど。1本だけローソクを立てた。
午後9時、撮影開始。トシさんがボサノバ調で「ハッピーバースデー」を奏でる。
照明を落とす。じゃあスタート。トシさんのギターの音色がやさしく流れる。シゲコさんと私が歌い、ケイはダンスを踊り、アリスが動画を撮影した。
なんてぜいたくなんだろう。1本だけのローソクを眺める。もう1年、たったなんて。ぐっときた。本当に本当に早かった…って、まだ4日前だけれど。