3食うどん、どんとこい。
そば文化圏の初任地・新潟で20年近く前、うどん恋しさに足踏みして手打ちした。
出来上がったのは「うどん」と呼ぶには苦しい「すいとん」だった。
香川県人には負けるが対岸の岡山育ち、うどんなら讃岐、なのだった。
午前9時、県庁近くの「さか枝」へ。冷たい「かけ」小170円。
高松の友・ハルコさんの案内で向かう。小とは思えぬ量だな。ニンマリ。コシが強くてシコシコで。こうでなくちゃね。
午前11時、道の駅「源平の里むれ」へ。
「食のセレクトショップ的」。ハルコさんは言った。確かに。外から見るとそっけないが、各地の産直ものがそろっている。
お豆さん命、オマメラーとしては、香川名物「しょうゆ豆」は欠かせない。
甘辛いソラマメがちょっと硬めなのがやわらかい煮豆とは別物で、1袋すぐに開けてしまう。
棚の右から左、ザザザーと全部、いただくわ〜。保存も効くし、東京ではアンテナショップ以外ではなかなか手に入らない。
すまして大人買いしよう。大豆しょうゆ豆、昔しょうゆ豆、ソフト、甘口、辛口…。合計6種類を手にした。荷物が重いっ。
特製うどん名刺入れも。888円。
ただの食品サンプルかと思ったら名刺ケースだった。「讃岐商人(企業戦士)専用」とある。
ハルコさんによると「県庁職員も使っていて、たまに手元から出される」。
キーホルダーや携帯ストラップならまだしも名刺入れ…。思わず手にする。「エビ天」「釡玉」「ちくわ天」の3種類ある。
よく見ると1つずつ、具の置き方が違う。うっかり「ちくわ天」を買ってしまった。讃岐商人でも企業戦士でもないけれど。
午後1時半、坂出「がもう」へ。ラスト2玉、ぎりぎりセーフ。
営業時間は午前8時半から午後2時だが「麺がなくなり次第終了」という。大丈夫かな。
「最後の2玉です」。わーい、間に合った。日ごろの行い、いいぞ。
バギーが広げられる店の外、駐車場わきのパラソルに陣取る。「ここのだしが、好きなんだよねぇ」。ハルコさんが言った。
確かに。澄んだ黄金色のいりこだしがさっぱり、でもしっかりすっきり香る。すごい。これで130円なんて。
自販機で買うペットボトルのお茶より安い。恐るべし。
手乗りインコならぬ「丼乗りスズメ」。狙うは、いりこだし。
食べ終わった丼にスズメが乗っかってきた。味が分かるのか。さすが。
店の人が言った。「義理人情のないスズメでな…」。
以前は田んぼがあったそうだが、スズメたちは実りの季節になるとコメをついばみ、それ以外はうどんを狙う。
「よその田んぼに行きゃあええのに、人情がない」。ぷぷっ。
午後2時、おやつに「山下うどん」。
高松を出る時間が迫る。もう1杯ぐらい、楽勝だよね。「がもう」を出てすぐ「山下うどん」へ向かった。
ハルコさんによると、以前は看板がなく「郵便局集配職員休息所」という札だけだったという。商売っ気、なさすぎ…。
3食目だから最後は豪勢に。具をのせようっと。
「釜揚げうどん」小180円に80円のかき揚げにした。260円。どこが豪勢じゃ。
村上春樹さんと安西水丸さんのサインを背にいただく。ある意味ゴージャスなのだった。
後払いで食べたものを自己申告する。いいなぁ。
午後4時10分、高松駅から快速マリンライナーで岡山へ。旅の友は「おいり」。
ザーザー降りの高松駅でハルコさんと別れた。ありがとう、また来ます。丁稚ケイに香川の嫁菓子「おいり」を1粒、2粒やりながら瀬戸大橋を渡る。
大雨で徐行運転。45分遅れで岡山駅に着いた。
駅は大混雑だった。券売機も長い列、福岡・久留米まで指定席は満席だった。
ま、いっか。ここは日本、何とかなる。最近こればっかり…。
改札を出てパンの「岡山木村屋」へ。
岡山県人なら木村屋の好きなアイテムについて、10分は盛り上がれるだろう。…って、たった10分かい。
久留米に住む母にはココアパンとけしパンを買った。
車中のおともに「スネーキ」。110円。
ふわっと甘い渦巻きパンで、幼なじみエミゴのごひいきだった。確かに昔からあるパンだな。
いまさら思う。なぜ「スネーキ」…。スネークかスネール(かたつむり)をもじったのだろうか。
午後6時14分、岡山発「さくら」で大雨警報の久留米へ。
博多での乗り換えなしで2時間8分、やっぱり楽ちんだな。
姉宅へ転がり込む。退院を繰り返している母と会うのは2月以来になる。
「ケイ君には、会いたいなぁ」。母は言っていたらしい。
「には」、って、不肖の娘はどうでもいいんかい…。