ピエモンテ編[2]トリノ〜ピエモンテの村

2日目午前11時半、イータリーでジェラート2日目正午、イータリーでランチ。トマトのペンネ2日目正午、イータリーでランチ、本日のピッツァ午後3時、チョコレートとヴァニラのジェラート午後3時、コーヒーとクリームのジェラート2日昼、アル・ビチェリンでビチェリン2日目夜、前菜のフリチューレ2日目夜、タヤリンのサルビアバターソース2日夜、デザートはボネ

1ユーロ≒100円。

午前11時、トリノのオールシーズンズ・ホテルを出る。

宿泊税込みで1部屋73.6ユーロだった。メーンの駅に近いし、無料の朝食もなかなかの充実ぶり。

ごく薄く切られたハムがいかにもイタリアっぽい。チーズもコーヒーもフツーにおいしい。さすがイタリア。

古い鳥かご式エレベーターも味があった。

イタリア中のおいしいもの、体にいいものを集めた食材店「イータリー」へ。

駅から15分、タクシーで15ユーロほどで着いた。

東京・代官山店も行ったことがある。ああ、でも全然違うわ。店に入るなり鼻血が出そう。広い。タッチアンドゴーで迷い込もう。

おコメ、野菜に魚、もちろんワイン、えー、見てみて、イタリアにこんなに地ビール、あるなんて。

もちろんパスタだって何でもござれ。ピエモンテ名物の卵入り細麺・タヤリンもたくさんあった。

「さっとゆでて、黄身としょうゆをからめて食べたいねぇ」。ユウさんが言った。うーん、ご飯と勘違いしているような。

ピスタチオとミルク(フィオル・ディ・ラッテ)のジェラート、2ユーロ。

親切なスタッフがモリモリに盛ってくれた。いそいでほおばる。

ハァーッ。ため息が出る。とろけそう。自然な色のピスタチオが香る。このクオリティで200円とは、何に感謝したらいいんだろう。

ジェラートが好きだー。とりあえず叫ぼう。

正午、「どイタリア」で行こう。パスタとピッツァ。

イータリーは売り場ごとに食事スペースがあって楽しめる。

本日のピッツァは牛のモッツァレラ、ズッキーニ、エビ、トマトがのって9.5ユーロ。

「ナポリタンスパゲティは?ケチャップであえたの」などと言うユウさんはスルーして、ペンネのトマトソースを頼む。7.5ユーロ。

ペンネはチーズたっぷり、オリーブが効いている。どちらもそつなし、模範演技をグラッツィエ・ミッレ(本当にありがとう)。さすがイータリー。マネできそうで絶対にできない味だな。

午後2時、サンカルロ広場でヨーコさんと合流。

1日中遊んでいられそうだったが待ち合わせの時間になった。慌ててタクシーで向かう。

「あ、チカコサーン!」パリのピアニスト・ヨーコさんが手を振っていた。よかった、会えた。

パリからTGVで5時間半、3カ月前に予約したから一等車でも40ユーロほどだったという。

トリノはジェラート族、続々。

日曜日の昼下がりを歩く。暑すぎず寒すぎず、最高だな。ジェラートを手に歩く人たちが目に付く。

1日3ジェラートを実践しよう。

通りかかったカフェ「カンボリーニ(Camborini)」でヴァニラとチョコレートをヨーコさんが選んだ。2ユーロ。エクアドル産カカオがこれでもか、の濃さだった。たまらない。

老舗のチョコレートチェーン「Venchi」ではコーヒーのソルベとマスカルポーネのジェラートに。2ユーロ。

ティラミスのような組み合わせにしたヨーコさんのセンス、いいなぁ。まったりマスカルポーネにコーヒーがシャリッと合いの手を入れる。黄金タッグにメロメロになる。

トリノ名物ビチェリンを。

その名も「カフェ・アル・ビチェリン」へ。

濃厚なホットチョコレートにカプチーノが入った飲み物で、2年半前に訪れた際にもいただいた。チェーン系コーヒーショップとは一線を画す。さすがに大人の味だな。

カフェ・アル・ビチェリン

午後5時20分、イタリア国鉄トリノ・ポルタ・ヌオーヴァ駅を出発。

44分、アスティへ。2等車で4.3ユーロ。「次はどこに行こう」「ナポリでピッツァ、シチリアでピスタチオアイスなんてどう?」「あぁ〜いいなぁ〜」。ヨーコさんと次の旅の話で盛り上がるのだった。

あれ、ここ、どこだろう。

日本のようにアナウンスもなければ駅の表示も見づらい。

ヨーコさんが「アスティ?」と花を売りに来たおじさんに訊く。

「アスティ、アスティ」。えー、大変。降りなくちゃ。

でもアスティは終着駅、あわてなくてもいいはず…。丁稚ケイを抱っこした私がまず降りる。

あ、と、扉が閉まるーっ。

終着駅のはずが何でーっ。ヨーコさんとユウさん、スーツケース2つが取り残された。えー、待ってー。

ヨーコさんが扉をこじ開けて飛び降りた。

また扉が閉まる。スーツケースとユウさんが取り残された。どうしよう。

ピアニスト、華麗なるタックル。

えいっえいーっ。必死でこじ開けてくれた。半分ほど開いた扉から、ユウさんとスーツケース2個が転げ出てきた。

うわぁ、ヨーコさんにそんなことをさせるなんて。でもかっこいいー。

降りてから3人で大笑いした。終着駅のはずが、違っていたんだ。

花売りおじさんが通りかからなければ乗り過ごしていた。あーあ、話が楽し過ぎて降りるのを忘れていた。

「ピアニストタックル事件」として後世まで語り継ごうっと。

午後6時10分、イクコさんに迎えられた。

「なかなか出て来ないからちょっと心配して…」。てんまつを話す。大笑いされた。

マンゴー村でB&Bを開こうとしているイクコさんとは2年半ぶりの再会になる。

3冊目の「パリのおやつ旅のおやつ」でも紹介した。

「B&Bは2012年春オープン予定」と書いたのだが、イタリア的な事情に阻まれて果たせなかった。でも3つの客室とダイニングはほぼ完成し、プレオープンまでこぎつけた。

午後8時半、お楽しみの晩ごはん。隣村の食堂「ラ・トッレ・デル・モナステッロ」へ。

前菜は大好物フリチューレ。

まな板にのってやってきた。ピッツァ生地を揚げたものに薄切りパンチェッタ(塩漬け豚バラ)をまとわせている。ああ、これこれ、会いたかったよ。じゅわっと塩けがいいな。

パスタは名物タヤリンにセージのバターソース、6ユーロ。

細い卵麺にバターをからめ、セージの葉っぱをのせただけのシンプルさ。イクコさんによるとピエモンテでは定番の組み合わせなのだとか。バター使いがフランスに近い土地柄を感じさせる。

セージが香っていいアクセント、帰ったらマネしてみよう。

ピエモンテ名物ヴィテッロ・トンナート。7ユーロ。

前菜をメーンにいただく。仔牛の薄切り肉、「ツナマヨ」ソースがけだった。

ツナマヨといっても日本のとは違い、ツナはペースト状でクリーミーなソースがいい。ロゼ色の肉があぁ、とろけそう。ツナマヨもなじみのある味、シンプルで素朴でおいしい。

7ユーロなんて信じられない。隣でピエモンテ牛のカツレツにフォークを入れていたユウさんが「おいしそうだねぇ」と欲しそうにする。ふーん、あげないもんね。

デザートはボネ。

地元名物のチョコレート・プリンは2年半前に取材して感激し、拙著「パリのおやつ旅のおやつ」でも紹介した。ここのもなつかしい味、しっかりとかための食感がいい。カカオ60%以上はあるな。

午後11時半、帰宅。

めくるめくピエモンテ、食の宝箱をまた、存分に探検しよう。ベッドに倒れ込む。あぁ今夜もブォナ・ノッテ(おやすみなさい)。駅でのタックル事件を思い出し、まだクスクス笑いするのだった。