午前9時、下御霊神社へ水くみに。
一緒に泊まったマリさんに誘われた。おいしい井戸水でパリの紅茶を淹れたい。ティーカップで京都とパリが1つ、いいな。
寺町通を歩く。「あ、やかん忘れたー」。マリさんが言った。
サザエさんみたいだな〜。言い合いながら3人で歩く。
午前10時、「木聞(こもん)」へ。
京都の設計事務所「リブアート」が手がけるインテリアの店がイベント会場だった。
無垢の木の香り、すがすがしい。
マリさんが働いているご縁で貸してもらえた。
ぱん作家のマユさんもやってきた。京都イベントは彼女との共演になる。
パン細工が窓辺に揺れる。エッフェル塔や音符、スプーン…彼女らしい。
「世界のおやつ旅」に出てくる場所がパンに。
「メープルとくるみのベーグル」はカナダ産メープルシュガーをたっぷり入れて。
岩手のもちきび入りベーグルもあった。
わくわくした。スイス製エメンタール・チーズが香るブリオッシュに、イタリア産マロングラッセがごろごろ入ったハチミツパン…。
ほどくのが惜しいラッピング。
毛糸や麻ひもづかいがシンプルながら決まっている。だれかに贈りたくなるパンだな。
「これ…焼いてきたんです」。
控えめなマユさんが円盤状の物体を取り出した。思わず声を挙げた。
すごい。表紙のロゴそのまんまパン。
ライ麦入りパン生地でふくまらせず焼いたという。
細かいところまで切り絵のように抜かれている。何て手が込んでいるんだろう。ぐっときた。
100倍返ししなくては。
午前11時、スタート。
カリンの木のテーブルに12人分のおやつを並べる。
鹿児島から来てくれた日本茶インストラクター・チエコさんに訊いた。
ティーバッグをおいしく淹れるコツって何でしょう。
「お湯を先に注いでから袋を浸して」。へーえ。
西宮のミキさん夫妻の差し入れ、「ツマガリ」のシュークリーム。
なつかしい関西の味、午後の部の前にマリさんと一緒にいただいた。
「やっぱりカスタードが一番好き」「そうだねぇ」。ホッ。
午後2時、2回目スタート。
日本画家、フィンランドの織姫、カナダで勉強したガーデンデザイナー、刑事司法とジェンダーの研究者…12人12色、私が話を聞きたくなる。
名残惜しい。また来よう、春の京都に。
インドに行く前に壮行会だー。自分主催というのもナンだが。
ま、インドに行くと言って早2年、これが最後のイベントと言いつつ毎年やってきている。
ヘタな外タレのような…そう言いかけたらマリさんにからかわれた。
「行く行くばっかり言って、またやってきてイベントして…。行く行く詐欺やな!」。
あはは、本当にそうかも。
ひと呼んで「行く行く詐欺師チカコ」。
午後6時、京都駅発のぞみで博多へ。
午後10時、久留米の姉宅に到着。
ベルを鳴らす。玄関が開く。福岡に来るのは1カ月半ぶりだった。
7歳になった甥っ子ユウがパジャマ姿で立っていた。満面の笑みで言った。
「おかえりなさい」。
いらっしゃい、じゃないんだ。「おかえり」を言われるってあまりない。待つ人がいる、っていいな。
グッときた。ありがとうユウチャン、おかえりって言ってくれて。ただいま。ぎゅっと抱きしめた。