「世界のおやつ旅」お披露目旅(3)京都・寺町通「木聞(こもん)」

午前9時、下御霊神社へ水くみに。

一緒に泊まったマリさんに誘われた。おいしい井戸水でパリの紅茶を淹れたい。ティーカップで京都とパリが1つ、いいな。

寺町通を歩く。「あ、やかん忘れたー」。マリさんが言った。

サザエさんみたいだな〜。言い合いながら3人で歩く。

午前10時、「木聞(こもん)」へ。

京都の設計事務所「リブアート」が手がけるインテリアの店がイベント会場だった。

無垢の木の香り、すがすがしい。

マリさんが働いているご縁で貸してもらえた。

ぱん作家のマユさんもやってきた。京都イベントは彼女との共演になる。

パン細工が窓辺に揺れる。エッフェル塔や音符、スプーン…彼女らしい。

「世界のおやつ旅」に出てくる場所がパンに。

「メープルとくるみのベーグル」はカナダ産メープルシュガーをたっぷり入れて。

岩手のもちきび入りベーグルもあった。

わくわくした。スイス製エメンタール・チーズが香るブリオッシュに、イタリア産マロングラッセがごろごろ入ったハチミツパン…。

ほどくのが惜しいラッピング。

毛糸や麻ひもづかいがシンプルながら決まっている。だれかに贈りたくなるパンだな。

「これ…焼いてきたんです」。

控えめなマユさんが円盤状の物体を取り出した。思わず声を挙げた。

すごい。表紙のロゴそのまんまパン。

ライ麦入りパン生地でふくまらせず焼いたという。

細かいところまで切り絵のように抜かれている。何て手が込んでいるんだろう。ぐっときた。

100倍返ししなくては。

午前11時、スタート。

カリンの木のテーブルに12人分のおやつを並べる。

鹿児島から来てくれた日本茶インストラクター・チエコさんに訊いた。

ティーバッグをおいしく淹れるコツって何でしょう。

「お湯を先に注いでから袋を浸して」。へーえ。

西宮のミキさん夫妻の差し入れ、「ツマガリ」のシュークリーム。

なつかしい関西の味、午後の部の前にマリさんと一緒にいただいた。

「やっぱりカスタードが一番好き」「そうだねぇ」。ホッ。

午後2時、2回目スタート。

日本画家、フィンランドの織姫、カナダで勉強したガーデンデザイナー、刑事司法とジェンダーの研究者…12人12色、私が話を聞きたくなる。

名残惜しい。また来よう、春の京都に。

インドに行く前に壮行会だー。自分主催というのもナンだが。

ま、インドに行くと言って早2年、これが最後のイベントと言いつつ毎年やってきている。

ヘタな外タレのような…そう言いかけたらマリさんにからかわれた。

「行く行くばっかり言って、またやってきてイベントして…。行く行く詐欺やな!」。

あはは、本当にそうかも。

ひと呼んで「行く行く詐欺師チカコ」。

午後6時、京都駅発のぞみで博多へ。

午後10時、久留米の姉宅に到着。

ベルを鳴らす。玄関が開く。福岡に来るのは1カ月半ぶりだった。

7歳になった甥っ子ユウがパジャマ姿で立っていた。満面の笑みで言った。

「おかえりなさい」。

いらっしゃい、じゃないんだ。「おかえり」を言われるってあまりない。待つ人がいる、っていいな。

グッときた。ありがとうユウチャン、おかえりって言ってくれて。ただいま。ぎゅっと抱きしめた。