ニュージーランド編(8)丁稚ケイ、救急病院へ

1歳8カ月の丁稚ケイ、異変。

土曜夜に40℃の熱が出た。朝になると平熱に戻るが、泣き叫ぶ。

体操選手のように体をエビ反りにして嫌がる。人が変わったみたい。どこか痛いのかな。

かと思えば一瞬だけ、いつものケイに戻る。

「クックッ。クックッ」。

連発して靴を指さす。履かせろ、ということらしい。何じゃいな、熱があるのに。

夜は39度まで熱が上がる。最高で41℃あった。解熱剤をのませると下がるけれど…。

グルメスーパー「Nosh」で買い物。

外に出たがって自分でバギーに乗る。仕方ない。散歩がてら向かった。

ライムとヴァニラのシロップ、9.49ドル。

ライムが身近なのがいいな。どうやって使おう。

ドノヴァンズのクランベリーのチョコとヨーグルトがけ、170g入り4.99ドル。

ドノヴァンズはハミルトンのチョコレート屋さんで、ニュージーランドらしいフレーバーもあった。

マヌカハニー、キウイ、フィジョア、チリとライムの板チョコなんて面白い。

チリとライムは現地在住17年のフミコさんもお気に入りと聞いていた。試してみよう。

2枚で7ドルだった。

レジのお姉さんに言われた。「今日はチョコレート・デーね!」

戻って熱を測る。38℃台に下がったが、顔中に赤いブツブツが広がっている。

ネットで病状を調べる。1歳までにかかることが多いという「突発性発疹」だろうか。そういえばまだ、かかっていない。

24時間対応の救急クリニックに行くことにした。

その前に寄り道を。

食材店「Vetro」でリンゴのシロップを買った。

250ml入り、16ドルほど。

ひと瓶に16.5キロ分のニュージーランド産リンゴが詰まっているという。フミコさんに教わった。

パンケーキやハム、ブルーチーズにかけたり、冬はショウガとお湯を足してホットドリンクにしたり…とあった。

ケイに飲ませるために買う地元産リンゴジュースがどれも濃いから、きっとおいしいに違いない。

クリニックで受付を。

名前、住所、症状を訊かれ、診察費40ドルを払う。診察前に支払いなんだな。

広いキッズコーナーで順番待ち。

おもちゃに目を輝かせる。さっきまでグズグズ、泣いていたのに。

医師の診察前に症状を訊かれ、体温と体重をはかった。

2番診察室に呼ばれた。しばらく待つとアラブ系と思われる医師が現れた。

「とにかく水分をよくとって。アイスでもジュースでもいいから」。

処方せんを渡される。併設の薬局で渡すと解熱剤をもらえた。17.9ドル。

病院に行くのはおっくうだけれど、インドに行く練習だと思おう。

機嫌の悪さは続く…。

抱こうとしても「ボクにさわらないで!」とばかり、号泣してぐぃーんとエビ反りになる。

そこまで反り返ったら、きれいに筋がとれそう。まっすぐなエビフライにしてやるぞー。ハァ。

ともかく熱が下がってきてホッとする。あとは赤いブツブツと、ご機嫌が治ることを祈ろう。

「いままで楽勝ベイビーだったんだから、少々ええじゃろ〜」。姉は言った。

明日の「おやつデモ」準備は何もできずに終わった。大丈夫かいな。

そう思う反面、不思議なほどプレッシャーがない。

パリやストラスブールでデモをする前はドキドキピリピリしていたのに。

場数を踏んで成長したということか、単に図太くなっただけか…。

フミコ先生からメールがあった。

「チカコサンのデモと同時間にキャンパス内で、結構有名なピアニストのコンサートがあるらしいで
す、ううう、ライバルかっ!」。

あはは、何人来てくれるかな。5〜6人とかかな…。