午前11時、ワイカト大へ。
「和のおやつデモ」スタートは午後1時だった。
シンクなしの宿の台所で蒸した「がんづき」8個にセイロ、ナベ、ボウル、材料一式をボウルに詰める。
酢や油、牛乳は瓶や紙パックごとピンクのボウルに入れて腕に抱える。ふたは開けているからそっと運ばないと。ちょっと銭湯に行くみたい。
姉と甥っ子ユウ&リョウを荷物持ちに、1歳8カ月のエビ反り男ケイを抱っこする。
会場となるS1.01教室に向かう。
開始10分前まで授業をしているから中に入れない。荷物を教室前の机におろす。
今週はゼロ・ウィーク。
新歓のにぎわい、新学年が始まったんだな。
芝生の仮設ステージで、和太鼓の演奏が終わったところだった。警察や消防、銀行に政党もやって来てPR活動をしていた。
お祭り騒ぎが大学らしい。
BONGO CAFEで衝撃。
論文インタビューのためワイカト大に通っている姉は連日、スチューデントセンターにある「Bongo Cafe」でスシを食べているらしい。
「30分の休憩中にパッと食べられる」から。
カフェテリア方式で好みの寿司をトングで紙パックに詰める。
野菜天、イカのリングフライ、ギョーザもスシネタ。
変化球スシにトングが動かぬまま前へ進む。見慣れぬ顔があった。
焦げた茶色に包まれてコロッケみたいだが…あ、巻き寿司だ。
「揚げ巻き寿司」だった。
エビフライ寿司とともに、おそるおそる買った。
具はアボガドと…あとはなんだろう。ちょっと硬めのライスコロッケと思えばOKか。ハハー、びっくりしたなぁ。
12:30、教室の入り口で準備する。
フミコ先生が借りたカセットコンロにセイロをのせる。
「まだ早いですよね?」。デモに来てくれたらしい人に尋ねられた。
わぁ、出足好調だな。確信した。たくさん来てくれそうだ。
12:50、授業終了。
よしっ、教室へ入れる。出て行く学生と入れ違いにセイロを抱えてなだれ込む。
階段式の講義室は80人収容だった。前からどんどん人で埋まっていく。
うれしくてワクワクしてスキップしそう。
あれ、ユウとリョウが教室に紛れ込んでいる。「チカチャン、がんづき欲しい」。
分かった、余ったらね。言い聞かせて端っこに座らせる。
13:03、デモスタート。
立ち見も出た。70人ほど入ったようだった。
フミコ先生が私について紹介してくれた。さぁ、出番だ。緊張しているような、まったくしていないような。いまをエンジョイしよう。
「きょうはみなさまを<世界のおやつ旅>にご案内します。機長はチカコ、客室乗務員はフミコ先生です…」。
と、言った(つもり)が、シーン。うう、通じなかったか。
ブータン、カナダ、東北、フランスと写真を見せながら説明する。
がんづきの実演も。
小麦粉や酢を並べる。「みなさんの家庭であるもので日本のお菓子が作れます」。そう力説する。
粉ふるいの取っ手をカシャカシャ握り、雪のように粉を降らせた。
「オオーッ」。どよめいた。へえ、粉ふるい、珍しいのかな。
ハミルトンのパックン・セーブで買ったんだけれど。こんなので盛り上がるんだ。
試食用のがんづきを入れたタッパーは2個ともカラになった。よかった。
終了後、ハミルトン・プレスの取材。
全戸に無料で配られる週刊情報紙という。NZ版リビング新聞だな。
「一番ウケたのは粉ふるいでしたねぇ」。フミコ先生が笑った。本当に。
帰ってプールでひと泳ぎ。
破れかぶれながら終わった。ホッ。粉ふるいが旅よりウケたなんてどうよ、と思ったけれど、単純なことでも「見る」って、すごく大切なんだな。シンプルは強い。
バー&キッチン「the Helm」で夕食を。
宿から一番近いパブに行く。庭での食事は丁稚ケイが暴れてもあまり気にならない。
ホッとしてオオカミの食欲になる。がおー、食べるぞー。骨付き肉32ドルにラム入りサラダ22ドルをモリモリいただく。
エビ反りケイは…。
棒付きキャンデーで機嫌が直ったは10分ほどだった。泣きながら靴を要求し、履いたままエビ反りになりベッドの上で転げまわり叫び…。
はー、ホラー映画の主人公かいな。