ニュージーランド編(9)ワイカト大で「おやつデモ」

午前11時、ワイカト大へ。

「和のおやつデモ」スタートは午後1時だった。

シンクなしの宿の台所で蒸した「がんづき」8個にセイロ、ナベ、ボウル、材料一式をボウルに詰める。

酢や油、牛乳は瓶や紙パックごとピンクのボウルに入れて腕に抱える。ふたは開けているからそっと運ばないと。ちょっと銭湯に行くみたい。

姉と甥っ子ユウ&リョウを荷物持ちに、1歳8カ月のエビ反り男ケイを抱っこする。

会場となるS1.01教室に向かう。

開始10分前まで授業をしているから中に入れない。荷物を教室前の机におろす。

今週はゼロ・ウィーク。

新歓のにぎわい、新学年が始まったんだな。

芝生の仮設ステージで、和太鼓の演奏が終わったところだった。警察や消防、銀行に政党もやって来てPR活動をしていた。

お祭り騒ぎが大学らしい。

BONGO CAFEで衝撃。

論文インタビューのためワイカト大に通っている姉は連日、スチューデントセンターにある「Bongo Cafe」でスシを食べているらしい。

「30分の休憩中にパッと食べられる」から。

カフェテリア方式で好みの寿司をトングで紙パックに詰める。

野菜天、イカのリングフライ、ギョーザもスシネタ。

変化球スシにトングが動かぬまま前へ進む。見慣れぬ顔があった。

焦げた茶色に包まれてコロッケみたいだが…あ、巻き寿司だ。

「揚げ巻き寿司」だった。

エビフライ寿司とともに、おそるおそる買った。

具はアボガドと…あとはなんだろう。ちょっと硬めのライスコロッケと思えばOKか。ハハー、びっくりしたなぁ。

12:30、教室の入り口で準備する。

フミコ先生が借りたカセットコンロにセイロをのせる。

「まだ早いですよね?」。デモに来てくれたらしい人に尋ねられた。

わぁ、出足好調だな。確信した。たくさん来てくれそうだ。

12:50、授業終了。

よしっ、教室へ入れる。出て行く学生と入れ違いにセイロを抱えてなだれ込む。

階段式の講義室は80人収容だった。前からどんどん人で埋まっていく。

うれしくてワクワクしてスキップしそう。

あれ、ユウとリョウが教室に紛れ込んでいる。「チカチャン、がんづき欲しい」。

分かった、余ったらね。言い聞かせて端っこに座らせる。

13:03、デモスタート。

立ち見も出た。70人ほど入ったようだった。

フミコ先生が私について紹介してくれた。さぁ、出番だ。緊張しているような、まったくしていないような。いまをエンジョイしよう。

「きょうはみなさまを<世界のおやつ旅>にご案内します。機長はチカコ、客室乗務員はフミコ先生です…」。

と、言った(つもり)が、シーン。うう、通じなかったか。

ブータン、カナダ、東北、フランスと写真を見せながら説明する。

がんづきの実演も。

小麦粉や酢を並べる。「みなさんの家庭であるもので日本のお菓子が作れます」。そう力説する。

粉ふるいの取っ手をカシャカシャ握り、雪のように粉を降らせた。

「オオーッ」。どよめいた。へえ、粉ふるい、珍しいのかな。

ハミルトンのパックン・セーブで買ったんだけれど。こんなので盛り上がるんだ。

試食用のがんづきを入れたタッパーは2個ともカラになった。よかった。

終了後、ハミルトン・プレスの取材。

全戸に無料で配られる週刊情報紙という。NZ版リビング新聞だな。

「一番ウケたのは粉ふるいでしたねぇ」。フミコ先生が笑った。本当に。

帰ってプールでひと泳ぎ。

破れかぶれながら終わった。ホッ。粉ふるいが旅よりウケたなんてどうよ、と思ったけれど、単純なことでも「見る」って、すごく大切なんだな。シンプルは強い。

バー&キッチン「the Helm」で夕食を。

宿から一番近いパブに行く。庭での食事は丁稚ケイが暴れてもあまり気にならない。

ホッとしてオオカミの食欲になる。がおー、食べるぞー。骨付き肉32ドルにラム入りサラダ22ドルをモリモリいただく。

エビ反りケイは…。

棒付きキャンデーで機嫌が直ったは10分ほどだった。泣きながら靴を要求し、履いたままエビ反りになりベッドの上で転げまわり叫び…。

はー、ホラー映画の主人公かいな。