9:00、チーズ学校へ。
料理研究家フィオーナが真っ赤なアウディで迎えに来てくれた。
ドイツ人の翻訳家アーニャも一緒だった。共通の友人フミコさんを最後に乗せてハミルトンを出た。
名馬のふるさと・ケンブリッジを抜け、牛や羊が草を食む牧草地を通り、湧き水の街・プタルルに向かう。
10:00、チーズ工房「オーバー・ザ・ムーン」着。
あれ、ここ?ドライブインみたい。ちょっと意外だった。
名前のように、月明かりに照らされる大草原の小さな工房…をイメージしていたのだが。
道路わきの店の2階が「ニュージーランド・チーズ・スクール」。
校長は豪州メルボルン出身のニール先生だった。
農場生まれで大学でチーズを学び、自家製チーズを指導して25年になる。
技術指導のため、日本にも何度も来ているという。
自己紹介が終わるとエプロンをつける。
白い衛生帽子もかぶった。
フミコさんがフリル付きエプロンのリボンを背中で結んでいた。
あ、「和のおやつデモ」でもアシスタント役で着ていたな。
アーニャがからかう。「フミコはふだん、フリフリの服なんて着ないのに!」。
「何と言っても衛生第一です」。
ニール師匠は赤い衛生帽をベレー帽のように斜めにかぶった。
わ、かわいい。還暦祝いの帽子に見える…。いや失礼か。
まずはキプロス風チーズ「ハルミ」を。
ニュージーランドで初めて食べた。
キュッキュッとした独特のかみごたえ、はんぺんのように少し焼いて食べるのがお約束だった。
牛乳を45℃に温め、レンネット(凝乳酵素)を加える。よく混ぜて穴の開いた型に流す。
かたまったカード(凝乳)をナイフで切る。まるで豆腐だな。
フミコさんは真剣な表情でナイフをカードにジグザク走らせた。フィオーナも丁寧なナイフさばきだった。
私とアーニャは大ざっぱに。性格って出るな。2人でクスクス笑い合った。
ホエー(乳清)はリコッタ・チーズに。
「捨てるところがないのね」。アーニャが感心して言った。
モッツァレラ・チーズは2種類作った。
30分モッツァレラは電子レンジを使う。
スライムみたいに伸ばしてボール状にまるめる。
わあ、面白い。デモやイベントでやったら絶対、ウケそうだな。
お待ちかねの試食は…。
ハルミは焼いていただく。いままで買っていたのは何だったんだー。思わずほえた。
出来たてのリコッタには4人ともメロメロになった。手づくりってなんておいしいんだろう。
「ゴージャス!」「素晴らしい!」。
語いが少なくて2語しか口から出ない。悲しい。
日本語でも「おいしいっ」を連発して身もだえているから同じか。
「写真撮りますよ、チカコさん〜」。フミコさんが世話を焼いてくれる。
おせっかい魂、さく裂させよう、私も世界中で。
16:00、ハミルトン着。
自家製チーズとチーズ製作キットを抱えてモーテルに戻る。
「こんな機会でもないとできない経験だったわ。ありがとう、チカコ」。フィオーナとアーニャが言った。
もちろん私も。ニュージーランドに移り、根付いた女性3人との遠足、かけがえのない時間だった。
詳しくは帰国後、報告します!