16:00、ワイキキ・ビーチへ。
ビルが林立するワイキキだけが異次元だな。
ワイキキ在住、シノグさんの友人の友人・ダファーにデザートを教わることになっていた。
お菓子作りが大好きで、得意の「ラティーザ」を披露してくれるという。
何だろう、ラティーザって。
シノグさんも首をひねった。「うーん…どんなのかな。食べたことがあるような、ないような」。
クヒオ通りにあるホテルから歩いて5分、アパートを訪ねる。
ワイキキど真ん中に住んでいるのね。すごい。
ハワイ旅行6回目のサイコさんが声を挙げた。
「東京で言えば銀座に住んでいるみたいなものでしょう!」
エレベーターから降りて来てくれたのがダファーだった。
「アロハ〜」。笑顔に迎えられた。ああ、素敵だな。心がとろける。
アロハ・スマイルはシノグさんもだな。穏やかでやさしくて。
ハワイに暮らすとあんなふうに笑えるのかな。お手本にしよう。
彼女の住む4階へ。
ちょっとしたスナックを用意してくれていた。
ブルーベリーとイチゴ、クラッカーにチキン・ディップもあった。「自分のおうちのようにくつろいでね」。
じゃあ遠慮なく。あ、おいしいな、このチキン・ディップ。
「缶詰のチキンとセロリをマヨネーズで和えただけよ」。
ダファーは照れていたけれど、お料理上手なのが分かる。セロリが名わき役だった。
「ラティーザ」はグアム名物。
グアム出身のダファーはホテル・ウーマンで15年ほど前、ハワイにやってきた。
ラティーザはグアムのホームパーティーにかかせない。
「スペイン発祥のデザートで、ラテン系の友人にふるまうと喜ばれる」のだとか。
お父さんのジョセフが作ってくれた味にアレンジを加えたという。
「スポンジにカスタードクリームをのせたものよ」。簡単に説明してくれた。
まずはスポンジ生地を作る。
卵4個をハンドミキサーで泡立てる。「なるべく手でやるようにしているけれどね〜」。
植物油4分の3カップ、アーモンドミルクを混ぜてからミックス粉をふるい入れ、ゴムべらでなじませる。
厚さ2cmほどに流し入れて焼く。
シート状に焼くんだな。「市販品を使ってもいいけれど甘いから。クリームとのバランスを考えたら薄く」。ダファーのこだわりだった。
「次にカスタードクリームを作るわ」。
卵をボウルに2個、割り入れた。あれ、卵白も使うんだな。
日本でカスタードといえば卵黄だけで作るけれど…。
シノグさんが解説した。「そう、こっちのカスタードクリーム、白いんですよ」。日本やフランスのとも違うんだな。
エバミルク2缶(700ml)、水2カップを鍋に注ぐ。
あ、練乳で作るんだ。無類の練乳好きとしてはときめく。
砂糖は1.5カップを加え、バター1スティック(114g)も混ぜて火にかける。
バターが溶けたら溶き卵を流し入れる。
「日本だと卵黄に砂糖を混ぜてから、牛乳を入れますよねぇ」。ハワイ好きのサイコさんが言った。そうそう。
同量の水で溶いたコーンスターチ大さじ3分の1、バニラエクストラ大さじ1も。ダフィーは絶えずかき混ぜていた。
ほんの少しとろみがついた程度でOK。
「グレービーソースぐらいね」。ダファーが言った。
もっと煮詰めなくていいのかな。冷めたらある程度、かたまるにしてもゆるいような…余計な心配をする。
ごく薄く焼いたスポンジにアツアツのソースを流す。
シナモンをたっぷりふる。へえ、そんなに。食べる前にふらないと、沈んじゃいそうだけれど…。これも老婆心、か。
冷蔵庫で4、5時間以上、入れて冷やす。
「では、出来上がりをどうぞ」。
テレビの料理番組みたいに、前夜に作っておいてくれた完成品が現れた。
見た目がティラミスみたいだな。
シナモンはそれほど沈んでもいなかった。
とろーり、ミルクの味わい。
甘すぎず絶妙だった。しつこくなくってやさしい食感、想像以上にイケる。
ごめんなさい、ごちゃごちゃ心配をして。
ダファーが1階まで見送ってくれた。
丁稚ケイを見て言った。
「置いて帰っていいわよ」「ビューティフル!」「いい子ね」「うちにキープしたいわ!」。ベタぼめだった。あはは、いまが人生絶頂期に違いない。
戻ってケイ、時差ボケ。「クックッ」連発。
外に出せー。午後9時ごろから暴れ出した。
泣きながらドアをノックし靴を要求する。
靴をはいたまま眠りについたのは午前2時だった。ハァ、ビューティフルボーイは夢だったか…。