カイルアの竜宮城へ。
「ハワイらしい青い海を満喫してほしい」。ハワイ在住1年半になるツカチャン夫婦に誘われた。
ずうずうしく2日後、1泊させてもらうことにした。
共通の友人ノリコさんが言っていた通り「竜宮城」だった。日本びいきのドイツ人が建てた家は日本というか、アジアというか。
崖に立つ不思議な家のベランダから、ラニカイの海が垣間見える。夢みたい。
テラスで夕食を。
ツカチャン手作りの味が並ぶ。「きゃー、どうしましょう」。旅の友サイコさんと叫ぶ。
鴨のローストにトマトのサラダ、ナスの揚げ浸し、玄米ご飯。
病みつきになったのが「白菜のサラダ」だった。白菜、大根、青シソ、セロリを千切りにして高菜を混ぜ「ポン酢で和えただけです」。
「高菜はしば漬けでもいい。白菜は必ず入れてください、面白みのために」。ツカサさんが言った。面白みのため、か。いいな。
デザートは「ダイヤモンド・ヘッド・グリル」で買ったという。あ、おいしい。
「オキナワ・スイートポテト・ハウピア(ハワイ語でココナッツ)スクエア」だった。ぷるんとしたココナッツに紫イモがやさしく香る。あっさりした台もおいしい。帰ったら作ってみよう。
翌朝6:00、天国のビーチをジョギング。
ツカチャンが1歳9か月の丁稚ケイを見てくれるという。涙が出るほどありがたい。寝ている間にそっと家を出る。
天国の海、という意味のラニカイ・ビーチを走ってからカイルア・ビーチ・パークをめざした。全米でもっとも美しい海に選ばれたこともあるという。
6:15、振り返ると朝日が。
ああ。息をのむ、ってこのことか。2つの島の向こう、何かが宿っているような。
空と海に抱かれよう。心からリラックスして涙ぐむ。ふと母を思い出した。
毎日ゴミを拾うという年配の女性たちにお礼を言ったり、ランナー同士あいさつしたり。
足あとが波打ち際の砂にしっとり残る。砂浜が走りやすいって初めて知った。
あっというまに14キロも走っていた。大切なご縁、どんなに感謝してもしたりないわ。
ジョギング後に「moke’s」でリリコイのパンケーキ。
地元の人でにぎわう店に連れて行ってもらった。
リリコイ(パッションフルーツ)風味のソースがかかったパンケーキだった。2枚で6.5ドル。ほの甘い酸味、ちょうどいいな。14キロ走ったごほうびに、ペロリ。
メニューには「ミッキーマウスパンケーキ」もあった。へえー、どんな顔を描いてくれるのかな。
ツカちゃんが頼んでくれた。出てきたのは…「面影ミッキー」だった。な、なるほどね。
「ラニカイ・ジュース」でラニカイ・スプラッシュ、Sサイズ4.15ドル。
天国の浜辺を激走した記念に、名前を冠したスムージーを注文した。
パイナップル、リンゴ、リリコイ(パッションフルーツ)、バナナにヨーグルト入りだった。
16:00、ホノルル国際空港へ。
ツカチャン夫婦の愛犬ディディに見送られる。
「タダさんとサイコさん、染之助・染太郎みたいでしたね」。
ツカチャンに言われた。あはは、そうかな。おめでとうございまーす。傘を回すマネをする。どっちがどっちなんだろう。どっちでもいっか。
見ると再訪できるという虹は見えそうで見えなかったけれど、きっとまた来よう。ホノルルマラソンもいいけれどカイルアの海をまた、走りたい。
18:15発の羽田行き、隣の席も埋まる満席。
9時間近くのフライト、遊び疲れたのかケイはほとんど眠っていた。11キロが9時間、ひざの上にずしり。どうせなら漬け物でも漬けたい。
ま、騒がれるよりはよほど気楽だな。よしとしよう。
23:40、羽田からモノレール経由、山手線で帰宅。
金曜日の深夜の電車は混雑していた。ほろ酔いのスーツ姿がにぎやかで、週末のウキウキ感が漂っていた。
竜宮城の夢から覚めて、東京に戻って来たんだな。でもこれも悪くない。
東京暮らしもあと少し(のはず)、いまの私には金曜日の終電だって縁遠くて、ちょっとぐっとくるから。