インドお引っ越し編(中)24時間遅れのデリー到着



7日7:30、成田空港第2ターミナルへ。

ホテル日航成田に前泊していた。バスに乗って10分、出発時刻の4時間前に着いた。いよいよインドへ行くんだな。こみあげる。

ファミリーカウンターでe-ticketを出す。

「到着遅れで出発が午後5時半になりまして…」。

スタッフが申し訳なさそうに言った。

ごじはーんっ。すっとんきょうな我が声が高い天井にこだました、ような。

たまったマイルでビジネスクラスにアップグレードしていた。

食事もキッズルームもあるサクララウンジが使える。

6時間遅れもまたよし、のんびりしよう。でも次の言葉は予想外だった。

「エコノミーでお願いできたら…」。

えーっ。機材変更でビジネスクラスの座席が減り、オーバーブッキングになったようだった。

ラウンジは使わせてくれるという。エコノミーならガラ空きと言う。でもなあ。

6時間も遅れたうえ、1歳10カ月の暴れん坊ケイと9時間過ごし、到着は日付を替わるころになる。

インド生活のスタートがこれじゃあ、先が思いやられる。やっぱり最初は肝心だ。

「明日ならビジネス、空いていますか?」

思い切って聞いてみた。大丈夫と言う。じゃあ、8日にしよう。

「7日に行く」。そう公言していたのに最後まで「イクイク詐欺」してしまったか。

浮いた1日、何して過ごそう。

空港も前日にやってきて、第1も第2も探検していた。思いをめぐらせる。

1人ならホテルで読書ざんまいするところだが、暴れん坊ケイが一緒だと無理だった。

あ、そうだ。アウトレットができたんだった。

4月19日にオープンしたばかりの酒々井プレミアム・アウトレットへ出かけよう。

空港からバスで15分だし、きっと子ども向け施設もあるだろう。

連休明けの平日、まだ余韻が残っていた。

ポップコーン店に「待ち時間2時間半」との札が立つ。フードコートはどこも長い列だった。

列のなかったチョコレート店「ピエール・マルコリーニ」でソフトクリームを頼んだ。420円。

一番、短かったピザ店で20分並び、クワトロフォルマッジ(4種のチーズ)を頼んだ。ケイがほおばる。ナンに見えるな…。

8日は11:30、定刻出発だった。

心からホッとする。今度こそ。サクララウンジで朝食をいただく。スープストックトーキョーのコーンスープ、メゾン・カイザーのクロワッサン…かみしめよう。

免税店で悩んだ末に炊飯器を買った。さあ急ごう。搭乗口に駆けつける。ほぼ最後の客になってしまった。え、早い。

「デリー便、いつも混んでいるんですが」。

客室乗務員も驚くガラ空きだった。ラッキー。和食と洋食、どちらも楽しもう。

「九州御膳」がテーマだった。きびなごの酢漬け、さつま揚げ…。

フレンチも凝っていた。牛フィレをかみしめる。しばしの別れじゃー。付け合わせの雑穀リゾットも上品で、どんぶり一杯食べたくなった。

デザートは「季節の苺とハイビスカスの香るジュレ ホワイトチョコレートのムース添え」。

「イチッ、イチッ」。赤い実に興奮したケイが叫びながらねだる。イチゴだけ2人分、食べてしまった。ちっ。

ケイはチャイルドシートで1時間半ほど、ぐっすり。

起きている間は1分たりとも席にいない。ずっと走り回っていた。すみっこにある電源やスイッチをいじりまくり、先頭から最後尾のギャレーまで、ぐーるぐる。

まるで「空飛ぶ保育園」。

手づくりの折り紙のコマをもらったり、ジュースのふたにアンパンマンを手書きしてくれたり…。保育士さん顔負けだわ。

ケイはいつのまにか客室乗務員や乗客の女性のひざの上に座っている。

こらっ、ちゃっかりしてるな。20年後なら犯罪だぞ。

17:00、インディラ・ガンディー国際空港着。

シートベルト着用サインがともる。

アナウンスが流れる。「到着地デリーの天候は晴れ、気温は摂氏41℃…」。

クールな声でカッカしそうな数字を告げていた。ひーっ。

空港を出たところで、ホテルに向かう機長さんが声をかけてくれた。

「元気な男の子がいるって、報告を聞いていましたよ」。

頭をなで、コックピットのシールをくれた。うわぁ、ハンサムな機長さん。お話できるなんて、役得役得。私のほうが喜んでどうする。シールはスーツケースに張ろう。

10数名の客室乗務員さんたちも一緒だった。「ケイくーん、ばいばーい」。並んだ全員が手を振ってくれた。ナニサマじゃー。

空いていたせいもあるけれど、本当によくしてもらった。史上最高のフライトだった。じんとした。

24時間、待ったかいがあった。インド生活、頑張れそう。エイエイオー。