プレスクール4日目。変化の兆し。
朝ご飯にも手をつけず、ひっくり返って泣き叫ぶ。ハーッ。
園に着いたら泣き止んだ。ケロッとして女の子からビスケットをもらって食べている。
お、慣れてきたかな。
また蚊に刺された。ほっぺが赤い。「どうしたの?」「薬は塗った?」何人もの先生が心配してくれる。
水遊びも、少し。
初日は水さえ怖がったが、プールのそばに近づいている。
海パンになるのは拒んだが、おもちゃのアヒルを投げて凶暴ぶりを発揮していた。
きょうは大丈夫かな。クラス見学せず先生に任せよう。お昼に戻ろう。
12:30、きょうのベジ給食は…。
ダル・マカニ(豆とバターのスープカレー)、アル・バイガン(じゃがいもとナスのドライカレー)、ロティ(チャパティ、全粒粉のクレープ)、ご飯だった。
どれもこれもそつなく、やさしくおいしい。
豆のカレーはちょっとスパイシーでコクがあった。
じゃがいもとナスは揚げてあるからボリュームもある。
それにしても毎日「やさしい菜食カレー」。
子ども向けだから辛さは控えめ、日本人の舌にはちょうどいい。物足りなさもない。
まだ慣れないのか、ケイはほとんど手をつけようとしなかった。
先生に諭された。「母親がいるとダメなのよ。どうぞ出て行って」。
16:00、お迎えに。
ケイはお絵かきをして遊んでいた。リュックを背負い、部屋の中でも靴も履いたままだった。ありゃりゃ。
再会したら抗議するみたいに泣きじゃくった。抱っこしようとしても首を横に振って拒まれる。つらい。
サマーキャンプ最終日。
子どもたちが1カ月通った成果を披露する発表会の日だった。
「赤いパンツに白いシャツを着て来ること」。
3日前にメールが届いていた。
ケイが通ったのはたった4日だが、格好だけでも。
朝、車内では相変わらずひっくり返って叫んでいた。あぁ、今日もダメか…。
プレスクールに着けば落ち着きを取り戻した。ホッ。
11:30、学習発表会。
サリーを着た先生たちが参観に来た親たちを出迎えていた。
ちゃんと正装になるなんて素敵だな。
やってきた母親たちも華やかなサリーやパンジャビ・ドレスをまとっていた。じんとする。
私が小さいころを思い出す。授業参観にきもの姿で来るお母さんも多かった。
昭和30〜40年代の高度成長期が、いまのインドとだぶる。
次はちゃんと着物でも着て来よう…って、思うだけになりそうだが。
考えてみたら「学校行事」的なものに「親」として参加するのは初めてだった。
学習発表会、はじまりはじまり。
カーテンで仕切られた「楽屋」に子どもたちが控えていた。
サリーを着た先生が司会をする。「みなさん、きょうはようこそいらっしゃいました…」。
2〜3歳児クラスは動物劇とダンス、4〜5歳児クラスは「赤ずきんちゃん」の劇とダンスを披露した。
「赤ズボン、白シャツ」をちゃんと着ていた子は11人中、4人だった。
日本なら親が買うなり、借りるなりしてそろえるだろう。いいなぁ、ゆるくて。
新入りで無芸のケイは、ちょろちょろ歩いていただけだった。
それでも口紅をつけてもらい、ちょっとおめかししていた。
4〜5歳児クラスのダンスに乱入し、女の子の手を握ろうとして拒まれていた。あはは。
12:30、デイケア(保育園)へ。
ケイを抱っこして連れて行ったら、「もう大丈夫、帰ってください」と追い出された。
17:00、お迎えに。
前日の「ひっくり返り泣き叫び」が思い出される。大丈夫かな。入り口で待つよう言われ、出てくるのを待つ。
先生に連れられて、ケイがスロープを上がってきた。まだ私に気付かない。
「ケーイ!」。叫ぶ。先生も「あそこにママがいるよ」と促している。
「まま!」満面の笑顔。
うわー。ちょっとうるっとした。前日とは別人みたい。ニコニコだった。保育園、楽しかったんだな。先生にお礼を言う。
「ケイはランチも全部食べましたよ。走って遊んで、牛乳も飲んで…。エンジョイして、私たちもホッとしました」。
先生も少し、涙ぐんでいるように見えた。うれしかった。
車に乗る。さあ帰ろう。運転手のサンジーブさんも笑顔のケイを見て言った。「ケイは今日はハッピーだったんだね」。ふふ、分かりやすいよね。
6月は朝から保育園に入る。もう大丈夫だろう。
東京では一時保育でつないで綱渡りした。インドでいい園に巡り合えたこと、東京を挽回するようなスピードだった。奇跡に思える。
私にとっては「育休明け」。
ちょっと感慨深い。とうとう、やっと来た。私も成長しよう、ケイに負けないように。