パリ、チョコレートの旅<1>

0:30デリー発、エールフランス225便。

乗るなりうつらうつら…眠ってしまった。

機内が明るくなったのに気付く。いまどこだろう。窓を開ける。緑が見えた。え、もう。雲の上じゃないんだ。ロシアのツンドラの上あたりか。

ねぼけまなこでフライトマップを見る。ええと、サンペテルブルグ…かな。いや違う、「ストラスブール」だった。え、もうフランス。もう着くやん。

フライト時間は9時間、日本発に比べて3時間ほど短い。時差も3時間半だから近く感じる。

機内食は、パンケーキにショコラ・ショー。

シナモンの効いたリンゴ入りパンケーキに洋ナシのコンポート添えだった。飲み物にマサラティー、ショコラ・ショー(ココア)があるのがデリー発パリ便らしいな。

イズニーの発酵バターがついていた。小躍りしそう。インドはもちろん、日本でもなかなか手に入らない。涙する。たっぷりつけてパンケーキを食べた。

6:05、パリ・シャルルドゴール空港着。

1時間余りで15区のキッチン付きホテルに着いた。

タクシーで早朝料金込み、64ユーロ。ひー、高い。

でも大きなスーツケース2個に、機内持ち込みキャリーケース1個を持っていては仕方ない。

今回は「チョコレートの旅」。

昨年9月に相方ユウさん、丁稚ケイと3泊して以来、10カ月ぶりになる。

旅の友は編集者メグミさん、いつもアシスタントを務めてくれるリサさん、ミキさん母娘だった。

メグミさんが東京から来るまで時間がある。少し眠ったらさっそく、街に出た。

10:00、パリ住人時代に暮らしていたアパートへ。

近くを通ると足が向く。あ、1階にあった野暮ったいカフェが、ちょっとだけおしゃれなバールに変わっていた。

「売家」の看板も、2つ。私が買って住んだ部屋、だれが住んでいるんだろう。

菓子店「ピエール・エルメ」でパン・オ・ショコラ、1.8ユーロ。

はあ、何だかホッとする。

エルメのパン・オ・ショコラはチョコレートがヘーゼルナッツ入りのジャンドゥーヤだった。サクサク、軽いな。

いつものようにパストゥール駅のベンチで座って食べる。

12:00、16区のチョコレート店「ボワシエ」へ。

歩いて行くつもりがモタモタしてしまった。メトロで行こう。チケット10枚で13.3ユーロ。

小・中学時代の同級生シノちゃんと待ち合わせた。彼女は今年からパリ近郊に住み始めた。

「久しぶり!」「いや、久しぶりどころじゃないね〜」。

20年、いや25年ぶりだろうか。まさかパリで再会できるなんて。

「ボワシエ」のサロンドテ(喫茶部)はランチもできるはずだったが、バカンス前のためかお休みだった。

愛らしい缶に入ったバラの花びらのチョコ、真珠のような粒チョコを買った。それぞれ8.5ユーロ、7ユーロ。

それじゃあ、どうしよう。同じ通りにあった「ル・パン・コティディアン」へ入ることにした。

東京にも進出したベルギー発祥の店で、子連れでも入りやすい。

とにかくサラダ、サラダー。

悩むなあ。葉っぱをわしゃわしゃ、おいしいチーズも食べたい。

温かいクロタン(ヤギのチーズ)のサラダにした。ああ、おいしい。スイカのジュースとあわせて24ユーロ。

感動の沸点が下がりまくっているような気が…まあいっか。

エッフェル塔を眺めながらセーヌを渡り、15区へ戻った。

スーパー・モノプリで買い物。

あ、棚すべてが商品で埋まっている。って、日本じゃ当たり前だろうけれど、インドじゃショーケースが空っぽのことも多いから感動する。

鼻血が出そう。トントン。首の後ろをたたいて自分を落ち着かせる。

まだ暴走するには早い。とりあえず大好きなものたちをそろえよう。偉大なるマンネリだが許してもらおう。

ラ・フェルミエールのヴァニラヨーグルト(2個2.75ユーロ)、エシレのクリーム(1.49ユーロ)、「ミネラルウォーター界のドンペリ」ことシャンテルドンの炭酸水(1.99ユーロ)、モノプリのエコバッグ(1ユーロ)×4個に、キイチゴ入りオレンジジュース(3.99ユーロ)。

えーん、やっぱり涙が出そう。

インドでは自由に歩けないから、思う存分、歩き回りたい。走りたい。

わて、パワーが余っとるんじゃー。エッフェルに向かって遠吠えする。

あとはインドじゃ手に入らない新鮮な野菜を安心してむしゃむしゃ食べたい。

あれ、チョコレート取材に来たはずじゃ…。