パリ、チョコレートの旅<5>


6:00、ジョギング3回目。

アンヴァリッド廃兵院からエコール・ミリテールを抜け、エッフェル塔を走る。革命記念日の準備でバリケードがされていた。

インドとの時差は3時間半、ちょうどグルガオンでラン仲間たちが走り終えて朝食をとっているところだろうか。

谷川俊太郎の詩「朝のリレー」を思い出した。

この地球ではいつもどこかで、朝が始まっている…。

ひんやりした朝の空気よ、インドにも伝われー。

7:00、「モワザン」のバゲットで朝食。

住んでいたころの行きつけ店の開店と同時に滑り込む。なつかしい小麦と窯の香りがする。

エシレクリームとはちみつをたらして食べる。あぁ、幸せ。

9:00、シャンゼリゼのルノートル料理教室へ。

3回目のお菓子レッスンに申し込んでいた。お題は「キイチゴのエクレアとパッションフルーツのルリジューズ」。

まずミニクロワッサンとパン・オ・ショコラ、コーヒーが出た。何だかうれしい。「あなた、どうぞ食べなさい」「かばんはこっちに置いて」。もう何度も来ているらしいマダムが教えてくれる。

シュー生地を焼き、赤い実のフルーツ入りクリーム、パッションフルーツ入りクリーム、ヴァニラ風味のバタークリーム、砂糖衣(グラサージュ)を作る。

シェフが日本びいきで、私たちにも心配りしてくれる。うれしい。

シュー生地は日本だと薄力粉でつくるが中力粉でOKなこと、シュー生地がかたくなったり、焼く前に冷めてしまったら温めた牛乳を注げばいいこと・・・・。

「へー、やってみよう」がいっぱい詰まっている。ワクワクした。

さすが、老舗の教室。

やはり常連のパリジェンヌは「口金の大きさは何番?」などとマニアックな質問をしていた。フォンダンも手作りしたことがあると言っていた。すごい、製菓好きなんだな。

シェフそっちのけでマダムと製菓好きパリジェンヌが仕切る。

「あなた絞り出しなさい」「もっとやさしく混ぜて」。だれがシェフかー。

ルリジューズは「修道女」。

大小2つのシュー生地にクリームを詰め、砂糖衣をまとわせる。修道女の襟元に見立ててバタークリームを絞り出して、飾る。

シェフは伝統的なやり方、新しい飾り方、3パターンをお手本に絞った。「私はこれが一番好きだわ」。

マダムが伝統的なスタイルで絞り出す。はっきりしてはるわー。さすがフランス人。とにかく手も口も出すから忙しい。

失敗したって「セパグラーヴ(大変なことではない)」、めけずにどんどんやっていく。

「誰かやりたい?」というシェフの声が飛ぶ。

どんどん手を挙げて私も旅の友・ミキちゃんもやらせてもらおう。

今回の滞在でのレッスン3回目にして「フランス勘」が戻ったか。

なんだか心地いい。うきうきした。

たくさん詰めて持ち帰らせてくれた。

シェフに呼び止められた。「みんなにはナイショだよ」。ウインクしながら人差し指をたてる。何だろう。地下の倉庫に案内された。

こっそり、「ルノートル」のロゴ入りエプロンをくれたのだった。旅行中と言ったから、サービスしてくれたのかな。ありがとう、フィリップ。また来ます。単純やなー。

ひらがなで「ありがとう」と手書きしてくれた。

編集者メグミさんと街歩き。

大のお気に入りそうざい店「ジル・ヴェロ」で夜のピクニック用の買い出しをする。

旅の友リサさんが好きな「フロマージュ・デュ・テット」に牛の頭のテリーヌ、かんきつ類のサラダ・・・しめて50ユーロ。

なじみのパン店「ピシャール」へ。

入り口に大きな銅のジャム鍋があった。イチゴがくつくつ、甘い香りを放っている。作って瓶詰めして売るのだろうな。うわぁ、おっしゃれー。

午後8時、エッフェル塔近くの公園でピクニック。

午後10時まで明るいのだもの、存分に楽しもう。芝生にお惣菜を並べる。カンパーイ。

エッフェル塔に願いを込めよう。またパリに来られますように。