岡山の桃づくり名人に会いに。
2児の母・サチコさんだった。赤磐(あかいわ)で両親と一緒にモモ、コメ、ナシなどを育てている。
赤磐市教委に勤めるマユミさんが7月、送ってくれた清水白桃の作り手だった。
そうそう、この色白べっぴん、岡山ならでは。
東京のスーパーで岡山産はなかなか見かけない。並んでいる「白桃」は当初、そうとは思えなかった。えっこれが白桃なんだ…。岡山のは他県産のより、うんと色白さんだな。
宅配便の運転手さんから箱を受け取る前から、ふわーっと甘い香りが立った。
手でつるっと皮がむけるぐらいがちょうどいい。食べる前に冷蔵庫に30分ほど入れてから、ナイフでそぎ落とすように切って、タネを残す。
ガラス皿に盛って、デザートフォークでひと刺し。ぷちっ。
ほどほどに硬さがあって、でもむっちりして。
独特の食感は生でしか味わえない。
桃づくり名人を訪ねたのは9月半ばを過ぎたころだった。
もう白桃は終わっていた。
「黄桃もつくっているんです」。サチコさんがふるまってくれた。甘い。
「よかったー」。ホッとしたような笑顔だった。「おいしかった、よそのと違ってた、と言われるのが喜びですから」。
朝5時にとりに行き、水をかけながらもぐ。
水はけのいい山で育てた方がおいしいという。「だから、えらくっても(しんどくても)山で作るんです」。
おいしい桃を見分けるコツは。
色は「ちょっと白くて、少しピンクがかっていて」、形は「左右対称」で。
サチコさんちでは糖度13度以下はジュース用に回すという。
そのまま食べる以外におすすめは。
シャーベットがいいという。
切って砂糖を足してさっと煮る。シロップごとファスナー付き袋に入れて凍らせる。ミキサーにかけてシャリシャリに。「もうそりゃあ、おいしいです」。
「でも私たちは、なかなかできませんけどね。手が回りませんから」。笑いながら言った。
土産物店の定番はゼリー。
物産館では岡山大学農場でとれた桃の入った「ぷりん」もあった。ババロアみたいでいいな。
赤磐ではモモ入り「ぴりうまソース」も。
以前は「焼き肉のたれ」があった。豚肉を漬けて焼いたら驚くほど柔らかくなった。また買いたかったが見当たらなかった。モデルチェンジしたのかな。
桃と言えば思い出す、「まんじゅうモモ」。
4年前の初夏だった。ドイツ・ミュンヘンの音楽家ルメさん宅に転がり込んだ。夜は冷たいガスパチョでもてなされ、夢のような朝を迎えた。
イチゴやレモンが実り、バラが咲くベランダで朝食を。
出された皿に、ざぶとんみたいな平らな桃がのっていた。「私たち、まんじゅうモモ、って呼んでいるんですよ」。ルメさんが笑った。へーえ、確かに。
フランスでの本名は「ペッシュ・プラット(平らなモモ)」だけれど、まんじゅうモモ、いいな、愛らしい。私もそう呼ぶようになった。
パリの市場で見かけるたび、ルメさんを思い出す。
手作りブランマンジェとあわせたい。
ブランマンジェは「白い食べ物」の意味だから、白桃にピッタリかも。
むっちりした桃の食感にはくずが似合う。ゼラチンは「つるるん」として、ちょっと物足らない。くずは「ぶるるんっ」。
もちろん缶詰のフルーツを添えても、何も添えなくても。
☆白桃ブランマンジェ(3人分)
牛乳150g、生クリーム30g、砂糖大さじ1(15g)、くず粉大さじ1(11g)白桃などフルーツ(缶詰でも)お好みで
くず粉は指で押して粒を細かくしておく。
1. 牛乳、生クリーム、砂糖、くず粉を小ボウルに入れる。お箸4本でよく混ぜる。
2. ボウルを湯せん(80〜90℃)にかける。泡立て器で1〜2分、だまにならないように混ぜる。とろみがついたらOK。泡立て器の跡が少し残る程度。湯せんから外す。こし器でこすと万全。
3. バットなどに流し入れる。粗熱がとれたら冷蔵庫へ。1時間以上、冷やす。
4. スプーンで1口大にすくい、グラスに果物と一緒に盛る。
☆メープルシュガーで作ったら
ほんのり生成り色に。大さじ1杯の魔法です。コクがうんと出ます。