パリ編[4]イベント前日、日本文化会館へ。準備のち散歩

丁稚ケイもお手伝いしたい?午前8時、モワザンのクロワッサンたち日本文化会館5階テラスからのセーヌと16区の眺めフランスのホットプレート。ふたは会館スタッフお手製70人分の材料を分ける1階では「かぶりもの展」午後4時、ル・ムーラン・ドゥ・ラ・ヴィエルジュのクロワッサン1.05ユーロ。リンゴタルトは永遠。3ユーロ。ミルフォイユもぎっちりザックザク。3.3ユーロ。ディジョンの四角という名前のサブレ、2.5ユーロ。ローランギャロスという名のサブレ、15枚入り5.76ユーロ。

注:1ユーロ≒100円

午前7時、台所にアシスタント2人。

中2の菓子作家ミキちゃんと丁稚ケイだった。前者は黙っていてもコーヒーを淹れてくれる気が利くマドモワゼルだった。

後者は頭がいつもぐっしょり、大汗かき。ミキちゃんの母リサさんいわく「パソコンと同じ。いっぱい詰まっているから熱くなるんですよ」。そうかぁ。ファスナー付き袋を無意味に引っ張り出すさまは、とてもそうは思えぬが。

午前9時、クロワッサンとシュケットと。

リサさん母娘がオーガニックのパン屋「モワザン」でクロワッサンにパン・オ・ショコラなどを買ってきてくれた。シュー皮にアラレ糖をまぶしただけのシュケット、じんわり甘くておいしい。落ちたアラレ糖も拾っていただく。

午前11時、セーヌ川沿いの日本文化会館へ。

ホテルのキッチンで仕込んだ食材を2つの袋に詰めて向かう。合計訪ねるのは1年半ぶりだな。いろんな意味でなつかしい場所なのだった。

前回は「ユズのおやつ」「地方のおやつ」をテーマに計4回、実演をした。ちょうど渡仏直前に新しい命を授かったことが分かっていた。身も心もゆらゆらして周囲に迷惑をかけた。思い出すと何とも言えない気分になる。

パリ留学時代の5年前、歩いて20分のカンブロンヌ通りに住んでいた。

図書館で勉強したり、新聞や雑誌を読んだり。窓から見えるセーヌ川と16区の街並みが大好きで、どこへ漂うのか見えぬ我が人生を思い、ボーッとしたものだった。いまでもあんまり、変わらないな。

帰りはグルネル通りを戻りながらお気に入りの店をひやかした。チーズ屋さん、パン屋さん…。あのころと変わらないな。頼まれもしないのに地図の調査員をやってしまう。

感傷に浸っている場合じゃない。準備準備!

会館スタッフ・カリンさんのはつらつ笑顔で立派なキッチンへ案内される。

明日は親子ワークショップ「ホットプレートで楽しくおやつ!」だった。まずはホットプレートを見せてもらった。ティファール社製だった。コンセントを差せば熱くなり、抜けば切れる。シンプルでいいな。少し傾いている。焼いた肉や野菜の汁けを切るためらしい。

ホットプレート、ふたはなし。へーえ。

「で、私たちはこんなふうに手作りしているんですよ」。おお、すごい。

アルミ箔の食材ボックスを使った手作りのふたを見せてくれた。熱くなっても大丈夫なように、ちゃんと取っ手つき。いいな。マネしよう。

仕込んだ食材を人数分に小分けする。ミキちゃんが小さなカップ70個に次々、注いでいく。リサさんが丁稚ケイを上手にあやしてくれる。ぐずったらおんぶして頑張る。

午後3時、とりあえず準備終了。1階では「かぶりもの展」が。

会館1階では「Les kaburimono(かぶりもの)」と題する展示コーナーがあった。自由にかぶっていいんだな。ミキちゃんも挑戦。街で出会ったら…うーん、目を合わせないようにするかも。

帰りはグルネル通りをセンチメンタル散歩。

バギーを押してこの道を歩くなんて。料理学校に通っていた5年前の白衣姿の私が見たら腰を抜かすだろう。人生何があるか分からない。

リサさん母娘に付き合ってもらった。まずは最愛サブレを売るパン屋「ポワラーヌ」へ。

ローラン・ギャロスという名の黙らせサブレ。

全仏オープン期間中の限定か、ポワラーヌでいつも見かけない大ぶりのサブレがあった。

いつもの菊型サブレと味は同じという。へーえ。ほぼ現物大のテニスボール型は菊型の3倍ぐらいの大きさだろうか。

シンプルでこれもまた愛らしい。ぱっくりかぶりつきたい。「じゃあローランギャロスを袋に100gぐらいね!」。試食を勧めてくれたマダムがにっこり。15枚入り5.76ユーロ。

「聖母の風車」のリンゴタルト。

ポワラーヌも古いが「ル・ムーラン・ドゥ・ラ・ヴィエルジュ」も老舗になる。

ナントカのひとつ覚えで繰り返し買ったリンゴタルトは一番小さいサイズが3ユーロ。2年の滞在中に3日に1個食べたとして、200個は食べた計算になるな…。

クロワッサン、ミルフォィユ、ザクザク、安くてうまい。現時点で最高スコア。

「聖母の風車」はパイ系も何気においしい。しかも安い。クロワッサン1.05ユーロ、しっかりザクザクの歯ごたえのミルフォイユは3.3ユーロですよ、あなた。って私のものかのように自慢するのだった。この質でこの値段、日本じゃありえない。すぐ近くのピエール・エルメだと倍のお値段だし。

「ディジョンの四角」という名のジャムサンド、2.5ユーロ。

キイチゴジャムが挟まっていて、サブレはホロホロした感じ。

ちょっとベタだけれどおいしくてクセになるのだった。丁稚ケイにもやってみよう。口に運ぶ。なぜかぐずり始めた。あれ、いらないの?じゃあ、あげない。抱っこしてソファに転がした。

あれ?ケイが流血?ちょっとひやり。

半ズボンの下に真っ赤でどろりとした物体が飛んでいる。

ま、まさか血便?焦って顔を近づける。あ…なんだ、キイチゴジャムだった。さっき口に運んだときにボトッと落としたらしい。落ちた場所が場所だけにあせったなあ、もう。そしてモッタイナイ…。

さて明日は第1ラウンド、頑張ってはじけるぞ。