2012年ラスト・フライト、福岡へ。
1歳半になった丁稚ケイのフライトは計40回に。乗せ過ぎやー。
クリスマスイブの朝、羽田から福岡へ。
母の見舞うために2カ月前、チケットを買っていた。
いつも空港で土産を選んだ。
東京スカイツリー柄の手ぬぐい、小川軒のレーズンウイッチ、資生堂パーラーのチーズケーキ…。
贈ったことのある品々を横目に通り過ぎた。あれもこれも、買ったな。思い出す。亡くなって1カ月たった。
炎のシューカツ合宿へ、ゴー。
雪の舞う久留米を姉の運転する車で出発した。丁稚ケイ、双子の甥っ子と5人旅になる。
めざすは福岡県立少年自然の家「玄海の家」だった。
玄界灘をのぞむ研修施設で、実費のみで泊まれる。
バスでやってきたスーツ姿の大学3年生22人と合流する。
筆記テストに履歴書の書き方、面接対策など午前9時から午前1時まで。てんこ盛りの2泊3日になる。
「謎の文章コーチ」あらわる。
私は9月の大分合宿に引き続き、謎の?いや、炎の文章コーチとして赤ペンを握る。
お楽しみは…おいしい給食。
献立表を横目で見ながらワクワクする。オレンジ色のお盆を持って列に並ぶ。
初日は豚汁にイワシのフライ、かぼちゃグラタンだった。
豚汁をすする。あ、ちゃんと、だしが効いている。
姉は言った。「シイタケ、でかっ」。箸で中指ほどある一片をつまみ上げた。
ちゃんと地元産を使っているんだな。えらい。
午前1時半、消灯。「空気冷えてます」。
布団にもぐりこむ。しっかり着込んでミノムシになろう。
それでもキーンと冷えた空気が顔をなでる。さむっ。
「でも食事がおいしいから許します」。
サックスの名人・モリベさんはにっこり笑った。本当に。
そう、人間、楽しみがひとつあれば生きていける。
カレー、なつかしい味。
2日目の昼は手製のチキンカレーだった。
レトロな色合いの皿、欲しくなる。
何より男子の盛りのよさにほれぼれした。なかでもウラノ君の皿はあふれそうだった。
「愛情盛りにしてください、って頼んだらこうなってしまって」。しっかり平らげていた。
筆記対策は午前1時まで。
暖房が切れるまで先輩の指導が続いた。
夜食にはカップラーメン40個を用意した。
しっかり食べていた。さすが。それでいてみんなスリムなのが悔しい。いや、心からうらやましい。
身だしなみ講座は男女別に。
「口もとで笑うのではなく、鼻の横の表情筋を鍛えましょう」。
メークのプロが1人ずつアドバイスする。脱・引きつり笑顔、私も学びたい。
男子のネクタイが13人、あっちこっちに曲がっている。何だかほほ笑ましい。
履歴書ピンポイント作戦、開始。
ソノダさんの履歴書に鳥肌がたった。
この字、いったいどうなっているんだろう。
思わず履歴書を天井に透かして見たほどだった。本当に手書きなんだろうか。
ワードのフォントに採用してほしい。読みやすくて規則正しい。でも温かみがある。
「ペン字の達人」として印象に残るに違いない。
しっかりアピールすべし。
返事ピカイチ君も。
少林寺拳法部主将コヤナギ君の返事にほれた。「ハイッ」。ひとことに背筋がピンとした。
凛として落ち着きがあって。そうほめると照れていた。
22人ともいいもの、持っているはず。絞ってしっかり伝えればきっと、大丈夫。
「じゃあみんな、ガンバロー!」。
真っ先にこぶしを突き上げる。おずおずと22の腕が伸びた。
ガンバロー三唱なんてしたこと、ないんだろうな。
って私が一番、張り切ってどうする。